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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第四章 新天地探索編
203/1111

4-11 安息の地11

「ふう・・・冷たい酒が体に染み渡る様ですねぇ・・・」


「いやぁ、あのサウナとかいうの、気持ちいいですね!」


「大人で良かったと思う瞬間だな、ほんとに」


「うむ、美味い」


「部屋にはベットもあるし、結界があるから夜の見張りも必要無いし・・・私、ここに住みたくなっちゃいました」


今広間には大人だけが集まってささやかな酒盛りが始まっていた。と言ってもそう沢山の酒類がある訳では無く、軽く飲む程度であったが。


「旅程も順調ですし、明日の夕方にはローラン様の屋敷まで行けそうですよ」


「着いちまうのが残念な気持ちになるってのも本当に贅沢な悩みですねぇ」


「違い無い。私も出来ればもう一晩くらいはここに泊まって風呂とケイの食事を楽しみたいものです」


ローラン達はこの屋敷がいたく気に入ったらしい。ビリーとミリーなどはかなり本気で悠にここに住まわせて貰えないか頼もうかと思っていた。


「ユウに提供する土地から私の屋敷まではそう遠くも無いですし、私の治める街――フェルゼンにもギルド支部はありますから、冒険の拠点にも使えると思います。ギルド間の連絡は魔道具で可能ですし、コロッサスが何か用事を頼んで来てもすぐに対応出来ますよ」


「そうか・・・コロッサスに聞いてこちらの地方での緊急の依頼があればそれを片づけてもいいな」


「依頼も片付いて金も貰えて一石二鳥だな」


「出ているかもしれませんよ、依頼が。かなり魔物モンスターの移動があるみたいでしたからね。こういう時はよくギルドに特殊依頼が出るんです。一定の地域で複数の冒険者に討伐をさせる依頼がね」


「特殊通常依頼というヤツか・・・」


ミーノスのギルドでエリーに説明を受けた依頼の形態の一つだ。魔物の大発生や災害時などに出される依頼であるので、この先もこの様な状況なら依頼として出されている可能性は十分にある。


「もし出ていなくても私がフェルゼンに着いたら最低でも調査隊は出して貰おうと思います。このままでは商人や旅人が行き来出来なくて困ってしまう事態になりそうですからね」


「単なる移動なら一過性の事ですが、大幅な縄張りの変更となると討伐に加えて原因も調査が要ります」


「ええ、領内の安全の管理は領主たる私の領分です。疎かにはしませんよ」


ローランの領地は広範な農地を領内に持つ豊かな土地であり、その農作物はフェルゼンのみならず、多くのミーノス国民の腹を満たしている。その為、もしも領地に何かある様なら、王国全体に害が及ぶ可能性が高いのだ。


「そろそろ寝る事にしましょうか。・・・そういえばアルトはどこに寝ているんでしょう?」


「子供達に誘われて大部屋へ行った様だ。個室も用意があるが、打ち解けるには一緒に居る方がいいかもしれんな」


「そうですね、子供は一緒に居れば仲良くなるモンです。俺達もそうでしたから」


「ビリーとミリーは空いている部屋なら好きに使ってくれて構わん。ローランは一応の用心として俺の隣の部屋で寝てくれるか?」


「分かったよ。本当は私も大部屋で皆と親交を深めたい気もするけどね」


「一応年頃の女も居るんだからそういうワケにゃいかねぇな」


「年長組はもう少し回復したら個室に移るらしい。一人になりたい事もあるだろうからな」


そう締め括って、大人達も床に着く為に各自部屋へと帰って行った。








一方、大部屋の子供達はというと、アルトの剣を見て皆盛り上がっていた。


「うお! カッケー!!」


「ユウ先生とバロー先生に買って頂いたんだよ。今度みんなのも作って貰うって言ってたから、楽しみにしてるといいよ」


「わー・・・キレイ・・・」


「アルト君はもう悠先生の指導を受けているのよね? どう、悠先生は厳しい?」


年少組は、男の子達は剣自体に感動しているが、女性陣は鞘の装飾の方が気になる様だ。そして年長組は悠の稽古の内容を気にしていた。


「そうですね・・・驚かされる事ばかりです。悠先生がゆっくり攻撃してくるのを避けられなかったり、変わった突きの練習をさせられたりで・・・でも凄く丁寧に教えてくれますよ」


「先生のご指導かぁ・・・う~~~、ワクワクするな!!」


「神奈は楽しみにしていたものね」


「僕は運動は苦手なので付いて行けるかどうか不安です・・・」


「一番の力持ちじゃないの、智樹は」


「でも私達が少しでも強くならないと、悠さんが安心して外に行けないもの。私もそんなに運動は得意じゃないけど頑張らないと」


「この前みたいな事がまた無いとも限らないしね。次までにはもっと上手く出来る様になりたいわ」


『黒狼騒動』での立ち回りで、子供達は子供達なりに色々考える事があったのだ。最終的には上手く収まったとはいえ、次の機会があるのならもっと上手くやりたいと思っていたのだった。危機を甘く見ないという点では悠の思惑通りといった所だろう。


「私も・・・やりたいけど、まだ無理。残念・・・」


「ちゃんと食べる様になったんだからすぐに良くなるわよ。それに、激しい運動を禁じられているのは私や神奈、智樹も同じだしね」


「あっ! そ、そうだった・・・」


「忘れてたんですか、神奈さん・・・」


「・・・・・・・・・うん」


先ほどのはしゃぎっぷりが嘘の様に神奈はしょんぼりと沈み込んだ。それだけ悠との稽古を楽しみにしていたのだ。


「悠先生に言えば見学くらいはさせてくれますよ、カンナさん。ちょっと朝は早いですけど」


「そうか! よし、あたしは寝る! おやすみっ!!」


「めいもねる!! おやすみーっ!!」


アルトの慰める言葉に即座に反応した神奈と明は自分のベットに飛び込んですぐに眠り始めた。


「現金な事ね・・・さ、私達ももう寝ましょう。明日には街に着くんですからね」


「「「はーい!!」」」


(何だか楽しいな・・・兄弟がいたらこんな感じなのかな・・・?)


共に返事をしながら、アルトは楽しい気持ちのまま眠りに着いた。今日はいい夢が見られそうな、そんな一日だった。

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