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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第四章 新天地探索編
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4-6 安息の地6

「ふぅ・・・これで一通り全員との顔合わせと自己紹介は済んだね。いい子達ばかりじゃないか、ユウ」


「ああ、皆真っ直ぐないい子だ。・・・少々真っ直ぐ過ぎるきらいはあるが・・・」


先ほどの蒼凪との一幕を思い出して悠はそう思った。まだ若いのだから気が変わる事もあるだろうが・・・


「僕は疲れました・・・今日の父さま変なんですもん・・・」


「ん? ああ、あれは演技だよ」


「え!?」


アルトが驚いてローランを見ると、ローランは微笑を浮かべてアルトに真意を語った。


「如何にも貴族当主として接すると子供達も緊張するだろう? だから私も少し羽目を外してみたのさ。仲良くなる時はまず相手に歩み寄らなければね?」


「そうだったんですか・・・僕すっかり騙されちゃいましたよ。父さまが悠先生に娘はやらんとかソーナさんが妹だとか本気で言ってるのかと・・・」


「あ、それは本気だよ? 例えユウでも娘はあげないし、ソーナは私の魂の妹だから。・・・お兄様、いい響きだと思わないかね?」


「結局本気なんじゃないですか!!!」


まだまだ世間知らずなアルトではローランの真意など上手く汲み取れるはずも無く、演技なのか本気なのかは分からずじまいなのだった。


「で、ユウ、あの子達にはどんな才能があるんだい?」


「分かっている範囲では京介は火属性、始は土属性、朱音は水属性、神楽は風属性にそれぞれ適正があり、小雪は反射魔術、樹里亜は硬質系結界術で、神奈は『敏捷上昇』、智樹は『筋力上昇』『物理半減』の能力スキル持ちだ。蒼凪、明、恵の3人は『能力鑑定アプライザル』を受けていないので現時点では不明だな」


「殆どが魔術的才能だね。なるほど、魔法の教官を欲しがる訳だ。コロッサスは何と?」


悠に魔法を扱う技術は無い。魔法的な事なら幅広く出来る悠だが、魔法そのものはアーヴェルカイン独自の技術体系に属する物の為、習っていない悠では教え様が無いのだ。


「俺達に魔法を教える人間を探すのは難しいとの事だ。事情が事情であるし、子供達の潜在能力は非常に高い。かなり希少な能力を持つ者も居るので迂闊な人材は派遣出来んらしい」


「そうだね・・・ミーノスの冒険者ではそこまでの力量に耐える冒険者も信用出来る者も居ないだろうね」


「一応サロメが魔法に詳しいらしいので、彼女の手が空いた時に習う予定だが・・・現状、ギルドは猫の手でも借りたい様な状況だ。いつになるかは分からんな」


ミーノス冒険者ギルドは『黒狼騒動』の後始末として、大量の依頼を少なくなった冒険者で捌いているが、何しろ高ランクの者が殆ど居ないので、中間から上のランクの依頼が滞っていた。出発する前に悠とベロウはその中でも緊急度の高い依頼を幾つかこなして来ており、拠点を設置したらまたすぐにでもギルドへ戻らなければならないのだ。


「ならばミリーに聞いてみたらどうだろう? 彼女もⅤ(フィフス)の冒険者になったし、勤勉な彼女なら多少は魔術の手ほどきも出来るかもしれないよ。何より口が堅いしね」


「ミリーか・・・そうだな、一度聞いてみるか」


ビリーとミリーにはまだ簡単な事情説明しかしていないので、まずは詳しく事情を話す必要があるだろう。2人であればそうそう他に情報を漏らす事もあるまい。


「その為にもまず全員が『能力鑑定』を受けておくべきだと思うね。それについては?」


「・・・コロッサスは『能力鑑定』出来る人材には心当たりがあるらしい。ただ、少々訳ありですぐには回答出来ないと言っていた。それについては待つしか無いだろうな」


「へぇ・・・コロッサスが言い渋る様な事情かい? まぁ、『能力鑑定』は国で保護するレベルの能力だからね。ノースハイアほど厳重で無いにしても、穏やかな暮らしを望む人間は言いたがらない気持ちも分かるよ」


悠が『能力鑑定』について尋ねた時、コロッサスは珍しく言葉に詰まった様子だった。知ってはいるけれどもそう簡単には漏らせないといった所だろうか。


「私としては子供達の才能も気になるんだけれど・・・ユウ、君はどうなんだろう?」


「何?」


その言葉は悠の想定外の言葉であった。悠は自分の能力は十全に把握しているし、それは相棒のレイラであっても同じ事だ。子供達と召喚のプロセスも異なる為、自分に新たに能力が目覚めた実感も無い。だが、界の移動自体が人の能力覚醒を促す物なら悠にも何らかの才能が目覚めていても不思議では無い。


「君は強い。恐らく私では計り知れないほどに。けれど能力は戦闘だけに特化した物とは限らないからね。上手く使えば君の助けになる才能が見つかるかもしれないよ?」


「そうか・・・そうだな、俺も頼んでみよう。レイラ、何か気付いた事はあるか?」


《私には気付いた事は無いわ。『蓬莱ほうらい』とこの世界でのユウに変化は感じないけれど・・・私には才能を見抜く能力は無いから正直分からないわね》


レイラは身体の異常は分かっても事才能などという漠然とした情報を読み取る力は無い。それゆえ、悠を調べても分かってる情報しか取り出せないのだった。


《でも一度その『能力鑑定』とやらを見ればどういう技術なのか理解出来るかもしれないわ。物質体マテリアル精神体メンタル星幽体アストラルのどれかに刻まれている情報を読み取る能力であるなら私にも再現は可能なはずよ》


リュウはそれらに干渉する事に特化した種族であるので、解析出来れば技術の再現は不可能では無い。ただ、その解析に掛かる時間には個人差があり、真の相棒であるガドラスが解析に特化している。レイラではその解析速度は半分といった所である。


「凄いね、持っていない才能を開発出来るなんて・・・『能力鑑定』が後天的に使える様になったっていう話は聞いた事が無いよ」


《私は竜だもの。人間の尺度で言われても困るわ、ローラン》


「そうだったね。レイラと話しているとついついそれを忘れてしまうよ」


「父さま、僕も『能力鑑定』を受けられるなら受けたいんですけど、いいですか?」


談笑するローラン達にアルトが口を挟んだ。年頃の男の子として、アルトも自分の才能が気になったのだ。


「・・・アルト、一つ聞いていいかい?」


「な、何でしょうか?」


ローランは先ほどまでの柔らかい雰囲気から一変し、真剣な光をその目に浮かべていた。


「もしアルトに望む道の才能が無くてもアルトはそれを続けられるのかい?」


「え?」


「ユウや『異邦人マレビト』の子達は生き抜く為に『能力鑑定』は必要だと私も思う。でもアルト、貴族や裕福な家に生まれた人間は幼い内に『能力鑑定』を受けてそれ以外の努力を怠る者が非常に多いんだよ。自慢気に自分の才能をひけらかす割に、それ以外の事は全く出来ない人間がね」


「・・・」


厳しい口調で話すローランにアルトは言葉を返す事が出来ずに黙り込んだ。


「例えば・・・ユウ、君の世界には『能力鑑定』は無いんだろう? それでも君がそこまで努力出来たのは何故だろう?」


「自分の真に成したい事を成す為であれば才能などあろうと無かろうと関係無い。ただひたすらに努力を積むのみだ。事実、俺などより才能豊かな人間など腐るほど居ただろう。俺は・・・諦めなかっただけだ」


「ご覧、アルト。人の可能性には限りなど無いんだ。私がアルトにユウから学んで欲しい事はそれなんだよ。人より勉強が出来なくてもいい。剣や魔法が上手く使えなくたっていい。ただ、自分のやりたい事を才能の有無のせいにして諦める様な事だけはして欲しくは無いんだ。・・・私の言っている事が分かるかい?」


「はい・・・分かります」


ローランの諭す言葉にアルトは神妙に頷いた。アルトはもっと単純に才能と言う物を捉えていたのだが、ローランの思いを聞いて考え方を改めたのだ。


そんなアルトを見て、ローランはふっと表情を緩めた。


「厳しい事を言ったけど、私はアルトの事を信じているよ。他にやりたい事もあっただろうに、アルトが次期当主として努力して来た事は私が誰よりも知っているさ。・・・だけどアルト、どうしても他の道に進みたいのなら、次期当主だとかそんな事はどうだっていいんだ。私がまたミレニアと頑張って子供を作るさ。私の父上は典型的な貴族で、私はそれに反発してこんな風になったけれど、アルトには自分の人生を生きて欲しいと思う。・・・今更済まない。これまでにそう言ってやれなくて」


「父さま・・・」


ローランの真意に触れ、アルトは言葉に詰まって俯いた。ローランから強要された訳では無かったが、やはりアルトにも自由に憧れる心があったのだ。その殻が取り払われた様な気持ちがアルトから言葉を奪っていた。


「アルト、やりたい事があるなら全てやってみればいい。それは若い内にしか出来ない事だ。ローランの言う通り、人の可能性に限りなど無い。大いに遊び、大いに学べ。俺達はその手助けくらいはしてやれるだろう」


「悠先生・・・」


《いいじゃない、世界最強の剣士で貴族の当主でも。それくらい欲張りな方が子供には丁度いいわ》


「レイラさん・・・うっく・・・」


皆の言葉にアルトは遂に瞳に溜めていた涙をこぼした。アルトが思っている以上に、彼の周囲には頼りになる大人が居てくれたという感動だったかもしれない。


「ふふ、いいね、そうなったら是非アルトの自伝には「父さまは素晴らしい人でした」とでも書いておいて欲しい物です。私の悪業も多少はマシになるかもしれません」


「残念だがローラン、お前の物語はお前だけの物だ。これからこの世界で成す事を考えれば、お前も歴史の表舞台から降りる事など出来んぞ? アルトに期待する前に自分でやるべきだな」


「おっと、これは手厳しい。私は愛する家族と幸せに暮らせればそれ以上の望みは無いんですがね? これも宮仕えの悲しさかな?」


《韜晦してても時代は待ってくれないわよ? ・・・フフフ》


「その様ですね。精々私の安息の地を守る為に努力しますか。・・・ハハハッ!」


「プッ・・・アハハハハ!!」


「・・・フッ」


馬車の中に朗らかな笑い声が響いた。

ちょっと文章の誤りを発見したので携帯で編集しましたが・・・凄く面倒臭いやり方だったので次回からはちゃんとPCが使える状況で編集します;;

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