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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第三章 異世界躍動編
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3-53 餓狼死すべし1

蒼凪がたどたどしく自分が話した内容を皆をに伝えると、子供達はその場に飛び上がって喜びを露わにした。


「やった! せんせーにじまんしようぜ、はじめ!!」


「う、うん! せんせい、ほめてくれるかな?」


「もちろんよ! おみやげももらえるかもね!」


「わ~、わたしあまいのがいいな~」


「めいはおにいちゃんとあそびにいきたい!!」


そんな子供達を見て、年長組は苦笑気味だ。


「やれやれ、子供は逞しいね」


「神奈、オバサンみたいな事言ってるわよ? ・・・ま、私もそう思うけど」


「ふふ、元気があっていいじゃない」


「僕はあのバリケードをどかす事を考えると気が滅入りますけどね・・・」


「お、お手伝いしますから・・・」


和やかなムードの中、樹里亜が全員に向かって促した。


「皆、無事な方のドアから玄関まで行きましょう。火は出ないように気を付けたけど、ドアの近くは崩落の危険があるわ」


「そうね。樹里亜と小雪ちゃん、蒼凪ちゃん以外の皆はまずバリケードをずらしましょう。撤去するのは後で悠さんに手伝って貰えばいいと思うわ」


樹里亜と小雪は結界の維持で消耗していて、蒼凪はそもそもまだ重労働が出来ないので、恵はそれ以外の皆に声を掛けると自らも樹里亜を椅子に座らせて率先して作業を開始した。


「良かった・・・元の位置まで戻すのは流石にもう厳しかったので・・・」


恵の言葉に智樹はホッと胸を撫で下ろした。度重なる能力スキルの行使で既に限界が近いのだ。


「さぁ、皆、行くわよ!」


恵の音頭で子供達はバリケードをずらし、樹里亜は再び恵に肩を借り、撤去で精根尽き果てた智樹に代わって神奈が蒼凪を背負って玄関へと移動したのだった。








もう少しで玄関という所で外で眩い光が起こったかと思うと、屋敷全体を震動が襲った。


「きゃ!?」


「わわっ!?」


「え? じ、地震?」


「ううん・・・違う、わ」


不安な声を上げる一同の言葉をを蒼凪が否定した。


「今聞いて・・・みた。外に居た・・・人達を・・・りゅうほう? っていうので・・・退治したみたい」


「そ、そうなの・・・じゃあもう外は安全なのかしら?」


「悠先生が居れば・・・どこでも、安全」


樹里亜の確認するセリフに蒼凪は何故か得意気に答えた。いつの間にか悠への信頼が更に上乗せされていたのだった。


「行きましょう。悠先生に全員の元気な顔を見せてあげないとね」


「ああ! 私だけ武勇譚が無いのが寂しいけどな~・・・」


「仕方ないでしょ。神奈は近接戦闘しか出来ないんだから。逆に言えば神奈が出る様な事態になっていたらもう敗色濃厚よ? いわば最後の切り札だったんだし」


樹里亜の慰めとも思えるセリフで意気消沈しかけていた神奈はあっさり元気を取り戻した。


「そっか!! いや~照れるな~。 切り札!!! いい響きだナ~♪」


(神奈が単純で助かったわ・・・)


樹里亜の言った事は半分は本当だが、半分は盛っている。神奈の能力は消耗が激しく、多数の相手が残っている状況では足止めが精々だっただろう。それでも樹里亜が神奈を最後の頼みにしていたのは嘘では無いのだから、機嫌が直るならそれでいいかと思ったのだった。








「ゴホッ!! ゲホッ!!! ぐ、く、クソが・・・このまま・・・終わると思うなよ・・・!」


今の振動で崩れた広間の前の崩落個所の瓦礫から這い出たガーランの口から、この世の全てを呪う様な声が漏れた・・・








少し時間を戻して屋敷へと急行する悠が蒼凪と話した後の場面である。


「バロー、子供達が襲われた。恐らく相手は『黒狼こくろう』だろう」


「何っ!? 何で分かるんだ!? あ、いや、それよりガキ共は無事なのか?」


何とも悪い縁のある相手だとベロウは忌々しく思いながらも悠に問い掛けた。


「蒼凪が『心通話(テレパシー』が使える様になったらしい。それで状況を把握出来た。結界が切れている間に12人中に入られたらしいが、一応全滅させたらしい」


「・・・へっ、やるじゃねぇか、ガキ共もよ」


安心した風に顔が緩みかけたベロウは慌てて表情を整えて憎まれ口を叩いた。が、レイラにはお見通しだったらしい。


《素直に無事で良かったって言いなさいよ。ニヤけてるわよ、顔が》


「そっ、ばっ、ち、ちがっ!?」


急に言語中枢に混乱をきたしたベロウが自分の口元を抑えながら反論したが、レイラも悠も取り合わなかった。


「俺達の予想した数が合っているなら、まだ外に20人近く居るはずだ。現地に付いたら俺が一気に殲滅する」


「・・・おうよ」


憮然とした表情でベロウはそっぽを向いて答えた。








「なんだ、ありゃ?」


締め出された『黒狼こくろう』のメンバーは上空の騎士らしき人物を見て思わずそう呟いた。その騎士は何故か手に一人の男をぶら下げているのだ。


そしてそれが男達の意識が途切れる前に放った最後の一言になった。上空の騎士らしき人物が手を天に掲げると、そこから眩い光が幾条も迸り、男達に向かって光の雨として降り注いだのだ。




チュドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!




恐らく男達はその爆発の中で何かしらの悲鳴を上げていたが、それは本人の耳にすら届かなかった。箱の中に閉じ込められてその箱を無茶苦茶に振り回した様な上下左右の衝撃の中で、男達は全員意識を失ったのだった。

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