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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第三章 異世界躍動編
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3-46 間隙1

カロンの家を辞した悠達は街で食料品を買い集め、更にいくつかの品を手に入れた。


「これで金は大分使っちまったな、ユウ」


「なに、これからは稼ぐ手段もあるのだ。そう焦る事もないだろう」


「だな。んじゃ、ギルドにでも寄って依頼を探してから帰ろうぜ」


そう言って2人がギルドに向かい、中に入ると内部の喧騒がピタリと止んだ。そして声を潜める様にして再びギルド内に囁き合う声が起こった。


「おい、あれが・・・?」


「ああ、ギルド長と互角にやりあったユウとバローだぜ・・・」


「噂じゃ、『影刃衆』を蹴散らして、あのミロを半殺しにしたとか・・・」


「バカ! 目を合わせたら殺されるぞっ!!」


・・・噂は噂らしく、すっかり尾ひれまで付いて広まっているらしい。特にギルド長云々の辺りではベロウも苦い顔になった。


「俺は一撃でやられたっての。全く、適当な噂を流すんじゃねぇよ」


「有象無象に寄って来られなくていいではないか、バロー」


「あんまり怖がられちゃいい女も寄って来ねぇんだよ!」


そこに悠達に気付いたビリーとミリーがやって来た。


「おはようございます! ユウのアニキ、バローのアニキ!!」


「おはようございます。ユウ兄さんにバロー兄さん」


2人は悠達の前で丁寧にお辞儀をしながら朝の挨拶をした、


「ああ、おはよう、2人共」


「よっ」


悠は律儀に、ベロウは適当に挨拶を返し、悠はおもむろに懐に手を入れた。


周囲の悠とビリー達の関係を知らない冒険者は、悠が懐から出した得物でビリー達を半殺しにするのではないかと固唾を飲んで見守ったが、悠の懐から出て来たのは収納に収まった5本の投げナイフだった。


「ミリー、よければ使え。使い心地は昨日試した。実戦でも十分に使えるはずだ」


「えっ!? そ、そんな、いいんですか?」


突然の贈り物にミリーは慌てたが、悠は静かに剣帯を突き出したままだ。


「いいんだよ、貰っておけ。ビリー、お前もだ」


ベロウもビリーに向かってカリスから買った剣をひょいっと投げつけた。


「うわっ!? お、おおお・・・こ、これ、高かったんじゃないんですか?」


剣を一瞥して、ビリーはその剣が自分のくたびれた剣よりも良い品だと気付いたようだった。


「大した事ねぇよ。そのおかげで拾えた縁の方がいい買い物だったからな。だろ、ユウ?」


「ああ、構わんから使ってくれ。この投げナイフは『影刃衆』を幾人も屠った業物だぞ」


その悠の言葉でまたギルド内が騒然となった。


「おい、聞いたか!? やっぱり噂は本当だったんだ!!」


「スゲェ・・・ちょ、ちょっと俺握手して貰おうかな・・・」


「・・・アンタら、さっきと態度変わり過ぎなんじゃないの?」


何を喋っても話題を提供してしまいそうな状況に、悠は黙った。


「・・・ありがとうございます。一生大事にしますから!!」


「ありがとうございます!! ・・・うっ、お、俺、人にこんなに優しくして貰ったの初めてです・・・」


2人はまるで叙勲を受ける騎士の様に畏まってそれぞれ受け取った武器を掲げて礼を言った。大仰に過ぎると悠もベロウも思ったが、2人の顔は大真面目で、更に目には涙まで浮かんでいるのを見て、したいようにさせてやろうと決めた。


2人の装備には新品の物など無い。武器も防具も損傷の激しい物や引退する冒険者から譲られた物ばかりであり、それを自分達で直しては騙し騙し使っていたのだ。それに2人は孤児院出身であるので、ずっと昔から自分だけの新品などとは無縁だった。それを考えれば2人の感動も決して大げさとは言えなかった。


「冒険者としては2人の方がずっと先輩なのだ。今後俺達も冒険に出るだろう。その時には多少手ほどきをしてくれると助かる」


悠は2人の気を紛らわせようとそう言ったのだが、2人の目には眩しいくらいの光が宿っていて悠に喜び勇んで言い切った。


「俺達に出来る事でしたら!!」


「何でもやります!! 是非お供させて下さい!!」


「・・・おい、ユウ。こんな所で子分を作ってどうするんだよ」


ベロウの半眼のセリフで悠も流石に言葉に迷ったが、結局は流れに乗る事にした。


「・・・よろしくな、2人共」


「「はいっ!!!」」


2人揃って満面の笑みでそう答えたのを見たベロウも、軽く手を上げてそれに応えるしか道は残っていないのだった。

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