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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第三章 異世界躍動編
160/1111

3-34 目的1

「『影刃シャドーエッジミロか・・・またとんでもないのが出て来たもんだな」


コロッサスが腕を組み、椅子にその身を深く沈めて低く唸った。『影刃ミロ』の名はコロッサスをして軽い物では無かったのだ。が、不意に人の悪い笑みを浮かべるとベロウに向かって語り掛けた。


「だがユウとバローに注意が向いたのはありがたい。2人が居る間は、まず2人から狙われるだろうからな」


「ありがたくねぇよ! 全く、とんだ災難だ! あいつ等を早く何とかしねぇとユウはともかく俺はおちおち寝れもしねぇぜ」


「だがもしお前達がミロとその一味を倒したとなれば、ランクアップに多額の報酬は確実だぜ? なぁ、サロメ?」


憤慨するベロウをなだめながらコロッサスは隣に控えるサロメに尋ねた。サロメも耳に髪をかけながら肯定の返答をした。


「各国要人の暗殺の主犯であるミロの一味を排する事が出来たなら、ランクアップは当然の措置ですね。それにミロには多額の賞金がかかっています。金貨1000枚か白金貨で100枚という、破格の賞金が」


「金と命は比べられねぇと思うぜ? あの世に金は持っていけないからな」


名誉や報酬にベロウは釣られなかった。腐っても貴族であるし、以前より金銭に対する執着心も薄れてきていた。


「それでも期待感があるのは確かだ。俺の知る限り、ミロが仕事をしくじった話は聞いたためしが無いし、ましてや標的でも無い相手に宣戦布告なんて初耳もいい所だ。相当こだわってると見ていいと思うが?」


そんなコロッサスの慰めにも似た言葉にもベロウは首を横に振った。


「勘違いしちゃあ困るぜ、ギルド長。ミロの標的はあくまでもユウで、俺はどう考えてもオマケだよ」


「パーティーは一蓮托生さ。それに右腕のキリギスはお前さんに言ったんだろう? ま、出来ればミロは生きて捕まえて欲しいがな。捕まえてた『黒狼こくろう』の頭領、夕方頃に何者かに殺られちまったらしい。恐らくミロかその手の者の仕業だろう」


コロッサスのセリフに、ベロウの目が細められた。


「警備は一体どうなってんだよ・・・」


「1時間毎に見回りしていたらしいが、牢のベットに寝たままピクリともしなかったんで、不審に思った看守が中に入って調べたら既に死んでいたらしい。首を掻っ切られてたらしいが、侵入経路その他は不明だ。ま、責任者は更迭で済むかどうかはフェルゼニアス卿のご意志次第かな?」


コロッサスと悠達の情報交換を見守っていたローランがその言葉に口を開いた。


「どうせ警備に期待しても大した成果が無いのは分かっていましたよ。私は苦言だけを呈して、後は警備の人間が勝手にすればいいでしょう。私としてはもっと実りある行動をしたいのでね」


そう言ってローランは警備の問題をばっさりと切り捨てた。確かに今はそんな悠長な事をしている場合では無い。


「出来ればユウとバローに指名依頼として出したい所だけれど、ユウ達は長期の依頼は受けられない。さて、どうしようか・・・」


「すまんな、ローラン」


「なぁに、アルトを助けてくれた事でお釣りが来るさ。普通ならそこでお終いだっただろうからね」


2人のやり取りを見ていたコロッサスが焦った様に悠を戒めた。


「お、おい、ユウ!! 貴族の、それも公爵様を名前で呼び捨てるなんて一体何を――」


「ああ、ギルド長には言っていなかったね? ユウとバローはこの家に居る限りは身分を排した私の友人なんだ。目を瞑ってくれないかな?」


「ふ、フェルゼニアス卿がそう仰るのなら・・・相変わらずおかしな奴等だな、お前等」


若干恨みがましく言うコロッサスだったが、悠はそ知らぬ顔をしているし、ベロウも軽く肩を竦めただけだった。


「・・・なぁ、ユウ、バロー。お前等の事情ってヤツを、そろそろ言ってくれてもいいんじゃねぇのか? 幸い、このメンバーなら差し支えないと思うんだがな?」


コロッサスが真剣な表情で悠にそう言った。今ここに居るのはユウとベロウの他に、ローラン、アルト、コロッサス、サロメの4人のみである。これまでの経緯を見るに、皆ぞれなりに信頼が置ける人間であると言っていいだろう。


「私も是非聞きたいですね。友人に隠し事は無しでしょう?」


ローランも微笑みながら悠に話しを促した。その横ではアルトが盛んに首を縦に振っている。


「・・・では、ここで話した事は今の所は自分の心に留めておいて貰う。少々、理解に苦しむ話になると思うのでな・・・」


悠は一人一人の目を見て、口外しない意思を確認してから、これまでの経緯を簡潔に話し始めた・・・。








「・・・なんとまぁ・・・」


「・・・俄かには信じ難い話です。何か証拠はありませんか?」


コロッサスとサロメは猜疑的な視線で悠を見ていた。急に異世界から子供達と世界を救う為に神に依頼されて来たと言っても素直に頷けるはずが無い。


「証拠か・・・召喚に使われていた魔道具か、これだな・・・」


「? そのペンダントがどうしたって言うんだ? 確かに凝った装飾だとは思うが・・・」


《あまりレディをジロジロと不躾に見る者では無いわよ、コロッサス?》


「うおおっ!?」


悠のペンダントを見ていたコロッサスが突然話し掛けられて思わず仰け反った。


「ローランやアルトにも改めて紹介しよう。これはレイラという名の、リュウの媒体だ。俺の相棒で、彼女自体も様々な能力を持っている。レイラ、着装――」


《変身、でしょ?》


「・・・分かった。・・・変、身っ!」


変身というのは譲れないらしいレイラに悠もすぐに折れた。要は相手に伝わればいいのだ。


悠が目の前にペンダントをかざしてキーワードを呟くと、悠の体を赤い靄が覆い、次の瞬間には赤い竜を模した鎧を身に纏った騎士が出現していた。


コロッサスとサロメのみならず、ローランも目を丸くしてその様子を呆然と見守っていが、ただ一人、アルトだけは目をキラキラさせながら悠の事を見ていた。・・・子供にとっては万国共通の琴線に触れる何かがあるのかもしれない。


「これが俺達の世界の『竜騎士』だ。この世界にも似た様な存在がいるらしいが、同種かどうかは分からん。そして、俺達の世界ではドラゴンは敵対的な竜がそう呼ばれる。だから、レイラの事は竜と認識してくれ」


その悠の言葉にも大人3人は返す言葉も無い。ベロウにしても悠のこの世界に来た背景を詳しく知っている訳では無かったので黙ってそれを見ていたが、アルトがトテトテと近寄って来て悠を見上げて言った。


「ユウ先生! この鎧、凄く格好いいです!」


「そうか、ありがとう。レイラ、褒められているぞ?」


《まぁ、当然と言えば当然なんですけど、アルトは素直に言ってくれているのが分かるから嬉しいわ。ありがとう、アルト》


悠はアルトの頭を撫でながら2人で和んでいたが、しばらくしてハッとしたコロッサスがそれに割り込んだ。


「ちょ、ちょっと待て! 今どこからその鎧を出しやがった!?」


「出したというよりは、レイラ自身がこの鎧になったと言った方が自然だな」


悠がアルトの頭をポンと叩き、コロッサスの方に歩いていった。


「ギルド長なら多少は分かるんじゃないのか? 今の俺の力量が」


コロッサスは悠が近づいて来るにつれてプレッシャーが大きくなるのを感じていた。ドラゴンと同じ? とんでもない!! これに比べたらドラゴンなぞ、大きなトカゲに過ぎないと思えたのだ。


「・・・最初からその姿だったなら・・・訓練場で俺は死んでただろうよ」


額から脂汗を流しながらコロッサスは悠から目を離さずに答えた。


「俺の全盛期どころじゃねえ。間違い無く、世界クラスの強者だ。一度だけドワーフの王を見た事があるが、今の悠ほどの強さは感じなかった。それでも、俺が敵う相手じゃ無かったが・・・ミロなんぞ、その姿――竜騎士で戦えば一発でケリがつくだろうよ」


「残念だが、信頼の置けない人間にこの姿を見せる訳にはいかん。今はまだ、な」


「なんでだ?」


「この姿でノースハイアの王を拷問したからな。あと、アライアットの兵士にも痛い目に遭ってもらった」


またも悠の爆弾発言に3人は言葉を失った。ベロウもどちらもその場に居たので気まずそうに顔を背けた。


「俺は竜騎士の姿で世界の悪を正し、人の姿で情報を集めようと思っている。そしてこの世界を多少は住み易い世界にして、その後子供達を連れて帰るつもりだ」


香織の事や召喚器をカザエルに渡した謎の女など、いくつか気に掛かる事はあるが、理解しやすい目標としてはその2つが悠の目標だ。


「今、この世界は酷い状態だ。誰も他の種族と分かり合おうとしていないどころか、それに加えて同種でも争っている。人々の心は荒み、悪徳が横行する。このままでは先は長くないというのが俺を送った神の見解だ。世界が滅びるのも遠い事では無いぞ?」


誰もその言葉に反論出来なかった。心ある人間は皆、多かれ少なかれこの世界の現状を憂いていたのだ。

結局、今日まで更新出来ませんでした。残念!

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