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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第三章 異世界躍動編
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3-22 修練と成長3

「お早うございます。今日は朝から熱心でしたね、ユウさん」


朝の稽古を続けていた悠達はあれからしばらくした後、メイドに呼ばれて朝食をとる為に広間へとやって来ていた。そこには既に起きていたローランが席についており、悠達に笑みを送りながら待っていた。


「お早うございます、ローラン様。自分の日課ですので」


ベロウやアルトも口々に朝の挨拶を交わして席に着いた。


「アルト、ユウさんに従ってしっかり学べているか?」


「はい、父さま!ユウ先生は僕が今まで見た事が無いくらい凄い人でした!!」


アルトは興奮を隠し切れずにローランにユウの凄さを語った。ローランも師弟の関係が良好であると感じて何度も頷いてその話に聞き入った。


「そうかそうか、ユウさんにお前を預けたのは間違いでは無かった様だな」


「はい!」


そこにメイド達が朝食を運んで来た。


「さて、まずは朝食にしましょう。ユウさん達はこの後はすぐにギルドに?」


料理を並べている間に、ローランが悠達に問いかけて来た。


「ええ、まずはギルドにローラン様の意向をお伝えしなければなりませんから。今日にもギルド長がこちらに伺うと思います。ご予定はございますか?」


ベロウがローランに空いている時間を尋ねた。


「今日は元々帰って来る為の予備日でしたので、特に予定は入れておりません。先触れを出して頂ければいついらしても構いませんよ」


「畏まりました、ギルド長にはそうお伝えさせて頂きます」


悠もベロウも公私の区別はしっかりと付けて人目がある場所ではローランやアルトに尊称と敬語は欠かさない。そしてローランもそれを弁えて普段通り話していたが、やはり一抹の寂しさを感じるのだった。








「では父さま、行って参ります!」


「ああ、行って来なさい。ユウさん、どの程度の時間を予定していますか?」


「若様のご年齢からして、一日という訳にはいきません。精々昼過ぎには終わるでしょう。食事は自分達と召し上がって頂いても構いませんかな?」


悠のその言葉に、渡りに船といった表情でローランは答えた。


「それならついでにアルトに王都を見せてやって下さいませんかね?ギルド長に含む所はありませんが、事が事だけにすぐに帰るという訳にもいかないでしょう。私もアルトの相手をしてやれないと思います。ですので、夜までお世話をお願いしたいのですが・・・いかがでしょうか?」


「今日は街に居るつもりですので、自分は構いません」


その言葉にアルトが目を輝かせた。


「い、いいんですか、父さま!?」


「ああ、アルト。お前もそろそろ自分の目で色々見てもいい年頃だ。悠さん達にご迷惑をお掛けしないように。あと、無駄遣いは駄目だぞ?」


「はい!!」


アルトは公爵家の嫡男であり、時期当主でもある。当然、一人気ままにどこかに遊びに行く事など許されてはいなかったが、ローランはそんなアルトに広い世界を見せてやりたいと常々思っていた。その為、王都に連れて来たという面も今回の旅にはあったのだが、それが公爵家の命運を左右するほどの事態になるとは思ってもいなかった。


しかし、今アルトの傍らには悠とベロウが居る。ローランもこの2人が護衛として付いてくれるなら、アルトの身辺に危険が迫る事は無いと確信出来た。それに、貴族では無い人間と一緒の方が、アルトも羽を伸ばせるだろうという目論見もあったのだ。


「では、若様をお預かりします」


「頼みましたよ、ユウさん、バローさん」


そうして3人は朝の澄んだ空気の中、ギルドに向けて歩き出した。








「あはっ、今日は楽しみだな~」


「若様は王都は初めてですか?」


「いいえ、父さまと一緒になら少し出歩いた事があります・・・それと、ユウ先生、外で若様なんて呼んだら僕が貴族の子供だとバレてしまいます。アルトと呼んで下さい」


バレるも何も、運動する為の服とはいえ上質な物を纏い、共の人間を2人も連れていれば庶民で無い事は丸分かりであると思われるが、気分の問題なのだろうと悠は自分を納得させて口調を切り替えた。


「分かった、アルト。今日は夜までこの呼び方で通そう」


「はい!」


「やれやれ・・・」


その言葉に喜ぶアルトと呆れるベロウ。しかしベロウも口で言うほど呆れている訳でも無い。貴族の不自由さは痛いほど知っているのだ。年頃の子供ならワガママの一つも言いたい年齢だろう。


「どこか行きたい場所はあるか?アルト」


「武器屋さんに行きたいです!」


悠が訪ねると、即答が帰って来た。ローランに許しを得た時から、行きたい場所に目星をつけていたのだろう。


「アルトは武器が好きなのか?」


「武器が好きって言うよりは、物語の英雄達が持っているような、凄い武器には憧れます・・・いつか、僕も一振りでいいからそんな武器が欲しいんです」


アルトは外に自由に出られない分、本にその心を遊ばせていた。英雄達と肩を並べて戦う自分を想像し、そしてその手には素晴らしい意匠の剣があるのだった。


「そうか、では、その剣に見合うくらいに強くならなければな」


「頑張ります!!」


悠の発破にアルトは小気味良く答えた。


「でも、先生こそ凄い武器を持っていてもおかしくないのに、なんで持っていないんですか?」


悠の装備で精々見る所があるとすれば足に装備している龍鉄の靴と首に下げているレイラの媒体の首飾りくらいで、手甲はどこにでもあるような一般の品であり、鎧などは一切身に着けていない。


悠はそんなアルトの疑問にも真摯に答えた。


「アルト、剣とは、武器とはただ持つだけで強くなれるのか?伝説の剣を持った赤子は歴戦の勇士に勝るのか?」


「い、いえ!持っている人間も強くないと意味がありません」


アルトの答えに悠は頷いた。


「そもそも、武器とは手や足の延長なのだ。より遠くに、より攻撃力を高める為にある。どの様な得物でも扱える様に、俺は素手で戦っている。あとで実演して見せよう」


「はい、楽しみにしています!」


その悠の言葉に、アルトは納得して笑顔になった。


「話はそのくらいにして、まずは報告を済ませておこうぜ?」


話しながら歩いて来た3人はいつの間にかギルドに到着していたのだった。

アルトも年相応な部分が見えてきました。

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