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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第三章 異世界躍動編
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3-16 フェルゼニアス邸へ5

「自宅に風呂とは、流石貴族様だな、生き返るぜ」


「お、俺、こんなデッカイ風呂に入るのは初めてですよ、アニキ!!」


ビリーとベロウは今、フェルゼニアス邸の風呂に入っている。ローランが勧めてくれたのだが、これがまた思いの外広い風呂であった。


貴族であるベロウの家にも風呂はあるがここまで大きくは無く、ビリーはこれまでの人生でまともな風呂に入った経験すら殆ど無かったので、感動も大きかった。


もっとも、ベロウは『虚数拠点イマジナリースペース』で更に大きいの風呂に入っていたのでそこまで驚いてはいなかったが。


「いいもんですね、なんだかこう、からだがとろける様な、ほぐれる様な感じが・・・」


「冒険者が使うには贅沢だがな。体を拭いただけじゃこうはいかねぇな」


そこに悠が遅れて浴場に入って来た。


「ふむ、中々広い風呂だな」


「あ、ユウのアニ、キ・・・」


ビリーは先に風呂に入っている事を詫びようとしたが、悠の体を見て思わず口を噤んだ。自分やベロウとて古傷の一つや二つは体に残っていたが、悠の体はその比では無く、思わず圧倒されたのだ。


「我々も入らせて貰いますよ・・・と、ユウさん、これまた随分と凄い体をされていますね?」


「わぁ・・・」


悠が体を洗い始めると、更にローランとアルトもやって来た。普通、貴族は下々の者と一緒に風呂に入る様な事は皆無なのだが、ローランは今居る人間は特に信用出来る人間であると判断し、それを行動で伝える為にもこうして親子でやって来たのだった。


「これはローラン様、我々の様な身分の者と一緒に入浴されてよろしいのですか?」


「気にしないで下さい、裸での付き合いは信頼の証ですよ。貴族とは権威を着る者ではありますが、それを風呂にまで持ち込もうとは思っていません。どうぞ寛いで下さい」


「ユウさん、痛くないんですか?」


悠の隣で体を洗い始めるローランがそう言い、アルトは初めて見る戦う男の体に見惚れていた。


「若様、これは全て古傷ですから痛くはありません。自分もまだまだ未熟でありますゆえ」


その時、アルトが悠の胸元に垂れ下がるペンダントに目を引かれた。


「ユウさん、随分凝った意匠のペンダントをお持ちですね・・・こんな綺麗なの、僕・・・私も見た事がありません」


《あら、褒められたと思っていいのかしら?》


突然響いた第三者の声に、アルトもローランも思わず体を硬直させた。


「誰です!?」


「ぼ、僕達以外は誰も居ませんよ、父さま!!」


アルトは動揺して呼称が「僕」になっていたが、そんな事には気付かぬほどに2人とも動揺している。


「レイラ、突然話し出されてはお2人も驚かれよう。ちゃんと挨拶をしておけ」


《初めまして、ローラン、アルト。私はレイラよ。・・・「様」を付けた方がいいかしら?》


「・・・い、いえ・・・人間では無い相手に尊称を強要はしませんが・・・これは、また・・・」


「・・・・・・あ、は、初めまして!!」


今まで数々の事態を潜り抜けて来たローランをしても、ペンダントに話し掛けられた事は流石に初めてであり、その声は上擦っていて、アルトに至っては半ば意識が飛んでいた。


「レイラは意思のある魔道具でして、任意に結界を張る事が出来ます。自分のかけがえの無いパートナーであります」


《ふふ、改めて言われると照れるわね?》


そう言うレイラの声は少し嬉しそうだ。相棒が自分を大切に思っている事が伝わったからかもしれない。


「意匠といい、能力といい、知性といい、これはまたとんでもない物を持ってますね、ユウさん。ここまで流暢に話せる魔道具は見た事がありませんよ!」


「あわわ・・・」


その様子を見たローランは徐々に興奮して来たのか顔を紅潮させてレイラを褒め、アルトは女性的な口調のレイラの前で全裸である事を恥ずかしく思い、慌ててタオルで体を隠した。


「金銭には換えられぬ品物ゆえ、重宝しております。今まで何度レイラに救われたか分かりません」


「金銭には換えられぬ、ですか・・・譲って貰う訳にはいかないのでしょうね」


悠が承諾するなら可能な限りの金銭を支払ってでもレイラを譲って欲しいと思ったローランだったが、悠の言葉は一切の交渉の余地を感じさせなかったので諦めるしか無かった。


「申し訳ありませんが・・・」


「いえいえ、意思を持つという事は、レイラさんもまたユウさんを選んで望んで手元にあるという事でしょう。それを金銭で引き裂くのは如何にも野暮な事ですね。残念ですが諦めますよ」


「ご理解頂けて助かります、ローラン様」


その様子を後ろで見ていたビリーも目を丸くしていた。


「あ、アニキ達はビックリ箱みたいな人達ですね・・・あんな物まで持ってるなんて・・・」


「さて、俺はユウと一緒にされても困るんだがな」


(これで更にあの竜騎士とかいうのに変身出来るなんて事を知ったら、一体どうなるのか想像も出来ねぇな・・・)


自分としては単なる一般人という自覚のあるベロウは苦い顔でそうビリーに告げたのだった。

ローランは分別のある人間なので素直に諦めましたが・・・他の人間はどうでしょうかね?

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