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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第三章 異世界躍動編
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3-14 フェルゼニアス邸へ3

前に話した時よりも随分と打ち解けて、4人はフェルゼニアス家に辿り着いた。


流石は公爵家だけあって、門番もしっかり2名配置されているようだ。ベロウが代表して門番に近寄り、ローランへの取次ぎを申し出た。


「お仕事お疲れ様です。私は冒険者のバローと申す者ですが、フェルゼニアス卿はいらっしゃいますでしょうか?今晩、家を訪ねる様におっしゃられましたので伺った次第でございますが・・・」


「ふむ・・・何か身分を証明する物は持っているか?冒険者であるなら、全員冒険者証を提示するように」


その言葉に、各人が懐から冒険者証を取り出して門番に順番に渡した。


「・・・不審な点は無いな。今から公爵様にお取り次ぐから、お前達はここで待つ様に」


「はい、畏まりました」


ベロウは口調も礼儀もしっかりと守って恭しく頭を下げた。


「前も思いましたけど、バローのアニキは随分礼儀を心得てますね?まるで本物の貴族様みたいですよ」


「俺だってこの年まで兵士をやってたんだ。お偉いさんと話す機会だって結構あるんだぜ?」


「なるほど、流石はアニキだ!!」


あっさり騙されるビリーを見ていると微妙に心配になるベロウだった。


「そうすると、ユウのアニキはどこで言葉遣いを習ったんでしょう?」


「俺も軍に居た事がある。というか、小さい頃から軍で鍛えて来たから普段からこういう物言いなのだ。堅苦しくて済まんな」


「いえいえ!凄く自然に使いこなしてるんで、ちょっと気になっただけですから!なるほど、軍ってのは中々厳しい所なんですね・・・」


悠の場合は嘘でも無いのだが、やはりあっさり納得するビリーを見ていると少し心配になった。なにしろ、今ここに居るのも騙された結果でもあるのだから。今は2人への尊敬フィルターも相まって余計に視野が狭くなっているようだ。


「アニキ達、今度俺達にちょっと稽古を付けてやっちゃくれませんか?俺達ももっと強くなって、アニキ達みたいになりたいんです!」


「私からもお願いします。私達は我流で鍛えて来たせいか、最近壁にぶつかってしまって・・・正式な武術を習って来たお2人に色々教えて頂きたいんです・・・ダメ、でしょうか?」


悪気は無かったが騙してしまった手前、悠とベロウには断る事は出来なかった。また、それでなくてもカルマがプラスの人間は少ないので、より善行を積んで貰うのは悠の目的にも適う。それゆえ、悠はその願いを受け入れた。


「ああ、分かった。ビリーは剣を使うのならバローに聞くといい。ミリー、君の得物はその腰の短剣ダガーか?」


「あ、はい!私は簡単な魔法と短剣、後は投げナイフなんかを使います」


ビリーは承諾を貰えた事に浮かれ、ミリーは若干緊張しながら悠に答えた。最初の馬車の中とは随分態度が変わっている。


「そうか。魔法は俺には教えられないが、体術、短剣術、投擲術なら教えてやれるだろう。明日辺りにギルドにくれば教えてやれるが、それでいいか?」


「い、いいんですか?」


ミリーが恐縮しているのは、悠が先ほど冒険者に慣れるために依頼をこなしたいと聞いていた為だ。


「構わん。買い物する分の金はある。今回はそれで済ませて、次回から金策をする事にしよう。それでいいな、バロー?」


「ユウがそう言うんなら、俺は構わんぜ?」


これは悠とベロウの2人に対する罪滅ぼしの様なものだ。それが分かったからこそベロウもその言葉に特に何も言わずに賛成したのだった。




「お待たせ致しました。ご案内する前に、武器を預けて貰えますか?そちらの方は『冒険鞄エクスパンション・バッグ』もお預け下さいますよう」


やって来たのは門番と執事だ。大きめの籠を持っているのは、そこに装備類を入れてもらう為だろう。


「分かった、管理を頼む」


そう言って各々が武器と荷物を執事に預けた。


「ではご案内します、どうぞこちらへ」


そう言って荷物の入った籠を門番に預けて執事は屋敷へと歩いていき、4人もそれに従ったのだった。








「皆、良く来てくれましたね?」


「厚かましくも参上致しました。お邪魔致します、フェルゼニアス卿」


「家の中でくらいは名で呼んでくれて構わないよ、バロー?」


「では、ローラン様と呼ばせて頂きますね」


やって来た4人を労ったローランにバローが代表して挨拶を交わし、ローランもそれに気さくに応じた。大貴族であるのに礼儀にはうるさくない方らしい。それでもその物腰は洗練されたものだったが。


「ほ、本日はお、おま、お招きに預かりまして・・・あの、誠に・・・」


「ビリー、私は貴方にも感謝しているのですよ?もう少し肩の力を抜いて下さい」


「もう、兄さんったら・・・」


ビリーも挨拶を述べようとしたが、いかにも慣れていないのが丸分かりで、そんなビリーを見てミリーは溜息をついた。


「今日は食べ易い物を用意しましたよ。給仕する最低限の人間以外は居ないから、是非寛いで貰いたいですね。ささ、掛けて下さい」


「はい、誠にありがとうございます。それにしてもこの度は災難でしたね?」


「全くです、フェルゼニアス家が断絶する所でしたよ。ウチの執事の一人も恥ずかしながらこの件に一枚噛んでいたようでしてね。すぐにしょっ引かれて行きました。結構裏では大きな動きがありそうです。首謀者は別にいるでしょうから・・・正直、私の命を狙う相手なんて、心当たりがあり過ぎて見当も付きませんしね」


ベロウは早速依頼の件に切り込む為に話を盗賊の話に切り替えていった。


「ギルドも今は戦々恐々としておりました。私達もギルド長からローラン様に伝言を言付かりましてね。明日にでもギルド長がこちらに謝罪と賠償に参るそうですが、大丈夫でしょうか?」


「冒険者が今回の事件を引き起こしたとなれば、ギルド長のコロッサスさんも出て来ない訳にはいきませんか・・・分かりました、明日会う旨を伝えて貰えますかね?」


「畏まりました。私達も冒険者の端くれとなりましたので、今回の件に関しては謝罪させて頂きます」


律儀なベロウの言葉にローランは鷹揚に手を振った。


「今回の件を荒立てるつもりはありませんよ。その問題の冒険者集団・・・確か、『黒狼こくろう』と言いましたか?その集団が幅を利かせていたのも、前のギルド長の責任が大きいですからね。責任を追及するならそちらに言わせて貰います。ましてや命の恩人たる貴方達に恨み言など言ってはあまりに狭量というものです」


「ありがとうございます、ギルド長もそのお言葉を聞けば多少は心が静まる事でしょう」


色好い返事が返って来た所で、部屋に新たな人物が入室して来た。


「こんばんは、皆さま。遅れて申し訳ありません」


そう言ってローランの息子であるアルトが笑顔で皆に挨拶をした。


出来た人ですね、ローラン。でも何故オーラが赤いのでしょうか?


それが分かるのはもう少し先になります。

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