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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第二章 異世界出発編
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2-34 ハート・ブロークン3

神奈と樹里亜の服装が整った所で、今度は智樹の診察の番になる。が、智樹は中々服を脱ごうとしなかった。そして悠を手招きすると、やっと悠にだけ聞こえる声で囁いた。


「す、すいません先生・・・男の情けと思って、3分、3分だけ時間をくれませんか・・・」


真っ赤というより茹でダコの様な有様で智樹は悠に懇願した。智樹が下半身を居心地悪そうにしているのを見た悠は事情を察し、智樹の肩をポンと叩いた。


「・・・仕方無い。若いとはそういうものだ」


事情を察せられてもまるで慰めにはならない時もあるのだった。


悠は智樹が先にトイレを済ませておきたいのだという事にして、しばし智樹の智樹が落ち着くまで時間を稼いでやるのだった。




「では、二人は毛布を被っていてくれ。智樹、君は全裸だ」


「・・・火傷だから覚悟はしてました。今、脱ぎます」


時間を貰った智樹は何とか気持ちと『体の一部』を落ち着かせて、悠の指示通り服をテイヤッと全て脱ぎ去った。その身体は線が細く胸板も薄く、色の白さと相まって中性的で、一部の男性からも好まれそうだった。悠にその嗜好は無いが。


智樹の体の60~70%に達しようかという火傷は『再生リジェネレーション』の甲斐あって、元の白さを取り戻している――今は恥ずかしさで少々赤いが。新陳代謝と共に、跡すら分からなくなるだろう。


それでも頭からつま先までしっかりと悠は目視し、後半は背中からもチェックして火傷以外の傷も無いかを調べ、最後にレイラによる診察を行う。


《・・・・・・トモキも起きるのは明後日ね。激しい運動は同じく10日後。あと、良く水分を取る事。以上》


「ありがとうございました・・・」


若干声が上ずっているが、男同士なのでまだ緊張は前の二人より少なかった。早速いそいそと服を身につけていく。


ちなみに何故かトモキも悠に触れられている間にどんどん心拍数が上がっていったが、きっと緊張の為に違いない。それ以外ありえない・・・はずだ。









智樹の服が整った所で、悠は3人に万一の時の話を始めた。


「3人共、ちょっと聞いてくれ。今日の治療の事だが・・・」


そう言って悠はちらりと蒼凪の方を見た。


「年少組には言っていないが、今日の治療は危険を伴う。万が一、俺は帰って来れなくなるかもしれん」


その言葉に先ほどまでの気だるげな表情が3人とも吹き飛んだ。


「え?え?」


「そ、そんな・・・」


「ど、どういう事ですか!?」


混乱する3人に悠はいつも通りの冷静な口調で語りかける。


「落ち着け。本当に万が一だ。俺は精神体メンタルで蒼凪の心の中に入って、直接蒼凪の心を癒すつもりだ。だが、もし治療中に蒼凪の心が崩壊し、その崩壊に巻き込まれたら、俺の精神も引きずられて二度と目覚めない。だから、もしそうなった時、他の子供達を助けてやれるのは年長組のお前達しか居ない」


悠の説明を、3人は食い入るように見つめている。


「もしそうなったら、ベロウに聞いてどこかこの国以外の場所に逃げろ。そして助け合って生きていくんだ。俺は邪魔になるからここにおいて行け。それだけだ」


悠の説明は本当にそれだけだった。3人はしばらく呆然としていたが、神奈がベットから起き上がって悠に飛び込んで来た。


「い、嫌です先生!!そんな危険な事は止めて下さい!!!」


「それでは蒼凪を見捨てる事になる。それは出来ん」


「じゃ、じゃあもう蒼凪の事は――」


「神奈ッ!!!」


神奈が言おうとしたセリフを悠が一喝して止めた。


ビクッとした神奈が泣きそうな目で悠を見ている。


「それ以上言ってはいけない。その言葉はお前の魂を腐らせる。・・・神奈、楽に生きては駄目だ。人には辛くても乗り越えなければならない事がある。その乗り越えた先の、最高の結果を目指せ。俺はそうして生きて来た。お前達にも最高の人生を歩んで欲しいと思っている。だから、諦めるな。俺が最初にお前達に教えてやれる事だ」


悠は神奈の涙を指で掬い上げた。


「泣いてもいいし、悲しんでもいい。俺を憎んでもいい。それでも諦めずに前へ行け」


悠の指先に表情とは裏腹の限りない優しさを感じた神奈は小さく頷いた。


「分かりました・・・でも、あたし待ってますから!!先生が帰って来るのを待ってますからね!!!」


神奈は無理やり笑顔を作って悠に宣言した。


「ああ、すぐに帰る。皆を鍛える約束もあるのだからな。俺は約束を破るのは嫌いだ。それに、俺にも策がある。無駄に命を散らす様な真似はせんさ」


「先生、策とは?」


樹里亜がそう尋ねた時、大部屋の扉が大きくノックされた。


「あれが、俺の策だ」


悠がそう言うと、外から元気な声が掛けられる。




「ゆうおにいちゃん、めい、きたよ!!!」




それは頼れる援軍の到着だったのだ。

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