2-30 裸の付き合い2
脱衣所についた三人は早速服を脱いだ。着替えは各部屋に数枚は用意されていたが、子供達のサイズを測って作った訳では無いのでジャストフィットという訳にもいかないのはしょうがない所だろう。やはり恵に早目に服を作って貰う必要がありそうだ。
「うお!せんせーの体すっげーー!!」
「うわぁ・・・せんせい、いたくない?」
悠の体を見た男の子達はその傷だらけの体に圧倒されていた。京介は純粋に鍛えられた筋肉に感嘆の声を上げ、始は悠の古傷を心配している。反応もそれぞれ個人差があるのだなと悠は面白く思った。
「お前達も鍛えればこうなるさ。しっかり飯を食ってよく動けばな。それと始、これはもう塞がっているから大丈夫だ。ちょっと怖いか?」
始は素直にコクンと頷いた。
「男が傷を負うのは恥じゃない。むしろ、傷を負わない様にと誰かを見捨てて逃げるのが恥だ。親から貰った命は大切にしなければならないが、他の誰かもまた、その人の親にとっては大切にしたい宝物だ。無理をしてはいかんが、助けられる時は助けてやれ。その傷はきっとお前達の誇り・・・勲章になる」
始は悠の言葉の全ては理解出来なかったが、言いたい事だけは心で伝わった気がしたのでまたコクンと頷いた。
「まぁ、もし怪我をしても俺が治してやる。小さい事に拘らず、したい事をしたらいい。二人は何かしたい事はあるのか?」
悠がそう尋ねると、まず京介が元気良く答えた。
「おれ、サッカーの選手になりたい!!だから、いつもいっぱい走ってるんだ!!」
京介の父親は現日本代表にも選ばれている、エースストライカーだ。魔法の様にボールを操る父親の姿に幼い京介が憧れるのは当然の結果とも言えた。
「俺の世界には無いスポーツだな。今度見せてくれるか?」
「いいぜ!あ、でもほんとは11人でやるスポーツなんだよな~。ボールも無いし・・・」
悠が見てくれるという事で張り切った京介だったが、この世界にはボールも無ければゴールも無く、当然グラウンド無いしも選手も居ない。
「せんせー、まちでボールをさがして来てくれよ!このくらいのまるいので、よくはずむのがほしいんだ!」
そう言って京介が自分の手でサッカーボールのサイズを伝えた。
「分かった、いい子にしていたら探してみよう。見つかるといいな」
「うん、ありがとうせんせー!!」
もう触れないと思っていたボールに触れるかもしれないと思うだけで、京介のテンションは一気に振り切っていた。
「せ、せんせい、ぼ、ぼくはしょくぶつの本がほしい・・・」
始も勇気を振り絞って自分の希望を伝えた。
「ぼく、外で本を見ながらこれはなんていう花なのかな?ってしらべるのがすきなの・・・ダメ?」
内向的かと思いきや、以外にアクティブな始であった。『地球』に居た時は、親に誕生日に買って貰った図鑑を持って、よく外を駆けずり回っていたのだ。余りに集中し過ぎて、気が付いた時には全く知らない場所で日暮を迎えてしまい、警察に保護された経験すらあった。
「分かった、植物の本だな。この世界の文明レベルで本があるのかは分からんが、街に行ったら探しておこう」
「あ、ありがとうせんせい!!」
始も普段の大人しさからは想像出来ないほどに京介と一緒にはしゃぎ回っている。抑圧された環境からの解放感も手伝って子供らしく振る舞える様になっていた。
「俺にも一つ、好きな花があってな。それを思い出したよ」
「え?せ、せんせいもお花すきなの?何ていうお花?」
「銀木犀だ。といっても世界が違うと通じないか?」
その言葉に始は目を輝かせた。
「ううん、知ってるよ!ぼくのうちの近くにもはえてるもん!あまいにおいのするお花!せんせいの所にもあるんだね!」
「ああ、この世界にもあるといいな?」
「うん!ぼく、外に出られるようになったらさがしてみる!!」
「その時は俺にも教えてくれ。・・・さ、まずは風呂だ。ちゃんと入らないといかんぞ」
「「はーーい!!」」
そうして少年二人は満足そうに風呂へと入っていった。
「・・・カンザキさん、俺は酒が・・・」
「ベロウ、いや兵士。貴様、俺を小間使いにしようと思っているのか?」
「な、なんで格下げ・・・じ、冗談ですよ冗談・・・うう」
ベロウもこっそり自分の希望を伝えてみたがあっさり却下されるのだった。
男湯編でした。ベロウの好感度が下がりました。
次回は女湯編。