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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第二章 異世界出発編
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2-29 裸の付き合い1

「そう言えばレイラ、いやに無口だな。どうした?」


悠は風呂に向かう途中に、話の中盤から口を噤んでいたレイラに声を掛けた。


《ちょっと気になる事があってね・・・私の考え過ぎだとは思うんだけれど》


「・・・ドラゴンの事か?」


悠はレイラが一番気にしていそうな話題を取り上げて聞いてみた。


《・・・ユウに隠し事は出来ないわね。ええ、そうよ。もしかしたら、私達同様に『界渡り』したリュウ・・・いえ、ドラゴンかもしれないけれど、そんな存在が居ないとは断言出来ないわ。もしそうならほおってはおけない。私達の世界から蒔かれた種は私達が刈り取るべきだと思うの》


元々、龍の侵攻に反対して人間に与したレイラである。今いるこのアーヴェルカインに自分達の世界の者が迷惑を掛けているなら、それを排除するのに躊躇いは無かった。


「落ち着け、レイラ。まだ何も決まった訳じゃない」


胸元のペンダントを弄りながら悠はレイラを宥めた。これでレイラは中々直情的で、普段はお淑やかにしているのだが、いざという時には悠よりも過激な行動に出る事もあった。こっそり『豊穣ハーヴェスト』を切ろうとしていた事がその証拠になるかもしれない。


《・・・ふぅ、ごめんなさい。ちょっと熱くなっちゃったわ。大丈夫よ、もう》


いつも冷静な悠と実は直情的なレイラはやはりベストパートナーであるのかもしれない。


「気にするな。いつもレイラには助けられている。このくらいはな」


「せんせー!早くふろに入ろうぜ!」


「あ、まってよ~きょうすけ君~」


「京介、始、廊下は走ってはいかんぞ」


悠のその言葉に、京介が不満そうに口を尖らす。


「大人のせんせーたちはみんなそう言うんだけどさ、なんでろうかを走っちゃいけないんだ?」


子供特有の疑問ではあるが、この様な疑問を適当に流し続けると、子供はルールなんて大した物じゃ無いと軽視する結果に繋がる。大人として悠はしっかりと答えた。


「ここには他にも何人も一緒に生活しているだろう?もし誰かが急に曲がり角やドアから出て来たら怪我をさせてしまうかもしれん。相手の女の子に傷を負わせても京介は何も思わないか?」


「ん~~~・・・いやなきもちになると思う」


「だから皆で生活する場所にはルールがあるんだ。皆が気持ち良く過ごせる様にな」


悠は難しいレトリックを省いて分かりやすく伝わる様に京介を諭した。頭ごなしに言っても、納得も理解もしていなければ、結局は無駄になる。まずは何故そうなのかをしっかりと伝え、分かりやすい例を挙げ、子供の理解を得るべきだ。


「分かった!!ろうかは走らないよ、おれ!!」


「いい子だ。良く分かってくれた」


そう言って悠は京介の頭をがしがしと撫でた。


「京介、始、俺も間違わない完璧な人間じゃ無い。変に思ったり、言いたい事があったらちゃんと言ってくれ。俺も気を付ける」


「「はい!!」」


その様子を見聞きしていたレイラが面白そうに笑い声をあげた。


《フフフ、神崎竜将閣下が異世界でちゃんと先生をやってるなんて『蓬來』の皆が見たらどう思うかしらね?》


「雪人あたりは煩そうだな。あいつこそこの先何度ヘマして何人子供が出来るか分からんのだから、ここで子育ての練習でもしておけばいいんだ」


《今頃くしゃみでもしてるかもしれないわね?》








「・・・ふぇっくし!!・・・クソ、きっと悠の奴が俺の悪口を言ってやがるな。姿が見えんのにロクな事をせん奴だ・・・っくし!!」


情報竜将室で一人で書類を捌いていた雪人はもう一度くしゃみをしてから軽く頭を振った。


「それは邪推じゃないですか?真田先輩?」


たまたま雪人の決裁が必要な書類を持って来た真がそれをやんわりと窘めたが、雪人は目つきも悪く真を睨んだ。


「真、貴様はまだ悠の事が分かって無い。俺がどれだけあいつと一緒に居たと思っている?俺が今まで生きて来た中で、あれ以上に口の悪い人間はおらん。俺の様な温厚な人間まであいつに影響される始末だ。きっと異世界でもそうに違いない。保護した子供達に悪い影響が出ない事を祈るばかりだな。悠の小さいコピーみたいなのが一杯出来るかと思うと思わず神に祈りたくもなる。後でナナナ殿の所にでもお参りしてくるべきかもしれん」


よくもまあ口が回るものだと真は呆れたが、口には出さなかった。悠が居なくなって寂しい――本人は絶対に認めないだろうが――雪人の八つ当たり先になるのは御免被りたい真だった。


(悠さん、今頃上手くやってますかね・・・?)


真は悠の力は全く疑ってはいなかったが、異世界ともなれば勝手の違う事もあるだろうと心配し、慣れない子供の相手をしている悠を想像・・・しようとして出来なかった。どうしても悠が上官になって小さい軍隊を訓練している様な光景しか頭に浮かんで来ない。


「そのうち連絡も来ますよ。それまで我々は待ちましょう」


「フン、俺は待ってなどおらんがな・・・」


そう言う雪人の顔はやはりどこか寂しそうに見えたのだった。

何というツンデレ。今からでも女に性転換したいくらいですね、雪人。


早く話をさせてあげたいものです。

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