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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第十章 二種族抗争編
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10-132 謎は謎を呼び……7

「交渉相手を気絶させるな」


身体がペコの物なので軽く額を突いて注意を促した悠にファティマはペロリと舌を出して謝った。


「ゴメンゴメン。でも、もうこれは交渉なんてものじゃないよ。ハクレイさんは勇んで出て来たのはいいけど、ちょっと交渉慣れして無さ過ぎるね。幾らでも情報を喋ってくれそうだからつい……」


「ハクレイ殿は今回が初めてです。以前は姉君がお出ででしたから」


《《本来、人虫族インセクト、弱くない。最も種類、多く、色んな力、持つ》》


ミトラルは造物主らしく、人虫族の特性について語り出した。


《《硬質な肌、暗視、熱探知、火炎放射、糸繰り……どれも、とても役立つ。人間、画一的。その分、才能ギフト能力スキル、取得率、高い》》


「待て。……ミトラル、お前、才能や能力が何なのか知っているのか?」


《《知っている。この世界、生物、私、担当。獣人以外も、私、作った》》


どこか誇らしげなミトラルに、悠とファティマは顔を見合わせた。欲しかった情報はすぐ側にあったのだ。


「ならば、才能とは何だ?」


《《魂に秘められた、大いなる可能性。この世界、創造せし、神々の恩寵。ただ、その数値の設定、ラドクリフの裁量。人間、魔力マナ、身体能力、あまり高くない。でも、偶発的、特殊能力、多彩。発生率、一番。エルフ、魔力拡張、属性親和率、高い。ドワーフ、身体能力、技術力、振ってる。その分、発生率、低い》》


「……この私の力も、その有り難くない恩寵か……」


「ま、待て!! 貴様がドワーフの創造主だと言うのか!」?


《《雛型はあった。一からの創造、違う》》


ファティマが苦々しく呟き憎き相手がドワーフの神にも等しいと知ったラグドールが驚愕するが、才能や能力の割り振りまでをラドクリフが担当していた訳ではないのだろう。これはあくまで確率の話である。人間は能力的に他の種族に劣るが、才能や能力の発生率が一番高く、他の種族は生まれつき優遇されている能力がある分、発生率が抑えられているのだ。ラドクリフが行ったのは、その変数の入力であった。


そこで悠は本題を切り出した。


「ならば、生まれつき才能を持たない者が新たに才能を得る事は可能か?」


《《可能。ただし、命の保障、無い》》


ミトラルの答えは簡潔だが、聞き逃せないものであった。


「その方法は?」


《《ユウ、もう、知ってる。『異邦人マレビト』、皆、取得する》》


召喚された子供達はみな何らかの才能や能力をもっておりミトラルの言葉を裏付けたが、悠が知りたいのはこの世界の中で新たな力を得る方法であった。


「『異邦人』の事例は除外してくれ。例えば、ドワーフが新たに才能を得る方法はあるか?」


《《ある。創造クリエイト系の才能保持者、殺す。確率で、才能か能力、得られる》》


「創造系……」


その響きは悠の記憶を刺激し、信憑性定かならぬ噂を思い出させた。


「『迷宮創造ダンジョンクリエイト』、『魔物創造モンスタークリエイト』……ダンジョンの踏破者が才能や能力に目覚める事があると聞いた事があるが……」


《《創造系、普通の人間、得られない。魔物モンスターだけ。困難、乗り越えた者、恩寵得る。魂、活性化させる。それが、手段。でも、ドワーフ、発現率、低い。危険、釣り合わない》》


おそらく誰も正確には知らないであろう情報をミトラルは淡々と答えた。この場に居る者達なら機密は守られると考えたのか特に執着がないのかは分からないが、他の誰に聞くよりも正確な情報であろう。


やはり才能や能力は魂に根差す力であり、その発現には先天性と後天性があって、後天的にその力を得るには非常に困難を伴うと判断するのが正しいようだ。


「他に方法はあるか? 危険を伴わず、誰かに望んだ才能を与えるような……」


《《私、知る限り、無い。一方的な、力、授与、神々の領域》》


ミトラルが断言した直後、悠の頭の中だけで言葉が続けられた。


(《《けど、危険、伴うなら、可能性、ある》》)


ある程度まで深く話す事で追求心を満足させる狙いがあったのか、それとも悠は一蓮托生と思っているのか、ミトラルは更に深い真実を悠にだけ語った。『心通話テレパシー』に慣れている悠はそれに驚く事なく問い返す。


(「それは」?)


(《《予め、自分に眠る力、知る。その上で、創造系能力者、殺す。自覚ある、状態、願う、発現率増大。複合的手段》》)


自分の秘められた力を自覚し、その上で創造系能力者を殺し、力の発現を願う。それが望みの力を手に入れる方法だとミトラルは述べたが、そこには越えるべきハードルが2つ存在すると悠は気付いていた。


(「どうやってそれを知る? それに、自分が望む力が眠っている訳ではあるまい?」)


(《《魂、見透かす、能力、ある。『神秘眼ディープアイズ』、魂の奥、見える。目にまつわる、力、多数。その種類、強弱、膨大》》)


一旦言葉を切り、ミトラルが続けた。


(《《力、本質、知らなければ、手に入れても、分からない。教示者、嘘、バレない》》)


(「なるほどな……」)


理解し辛い口調であったが、悠はミトラルが言わんとする所を理解した。


才能や能力を見透かす『神秘眼』という能力があり、それを持った者がシルバリオに限定的に情報を与え、シルバリオはそれを信じて迷宮を踏破し力を得たとする。自分の血脈に力を与え、守られる力だとでも言えば、その教示者の信頼度によってはシルバリオは行動を起こすだろう。続くゴルドランが英雄的な力を備えていたとすれば、シルバリオは満足して疑いはすまい。


その教示者が誰なのかは歴史の闇に埋もれて探しようもないが、シルバリオが迷宮を踏破したというのならその記録は残っているはずである。むしろ、シルバリオに発現させたい力が眠っていたからこそ近付いた可能性も――。


「どうしたんだい、ユウ。急に黙っちゃってさ?」


ファティマの言葉に、悠は思考の海から上がり、頷いてみせた。


「いや、多少考え事をしていただけだ。それより、そろそろハクレイ殿を起こしてやるべきだな」


「……ああ、そういえば交渉中だったね」


悠の様子に微妙に違和感を抱いたファティマだったが、それを感じさせない表情でハクレイの下に向かった。ファティマにだけは後で事情を話し、推理の足しにして貰わねばなるまい。ミトラルに聞きたい事もまだ幾つも残されていた。


それに、ハクレイにもまだ用が残っているのだ。


目を覚ましたハクレイは先ほどまでの活力を失っていたが、悠の申し出を聞くと身を乗り出した。


「ほ、本当に私の集落に来てくれるのですか!?」


「はい。ミトラルが自分から離れないというのなら、自分が伺います。人虫族の地位向上に力をお貸しするのもやぶさかではありません」


「あ、ありがとう御座います! ありがとう御座います!!」


悠の言葉にハクレイは飛び跳ねんばかりに喜びを露わにし、悠の手を握って盛んに礼を述べたが、悠の言葉には続きがあった。


「ですが、条件を一つ呑んで頂きたい。それを守って頂けるのなら、ドワーフとエルフの争いが終わったら自分はそちらに伺います」


「条件、ですか? ……あの、お金などでは無いのですよ、ね?」


悠が金銭に執着しない人物だとさっきの一幕で理解していたハクレイが尋ねると、悠は頷いて条件を述べた。


悠の要求にハクレイは難しい表情を作ったが、結局はミトラルを迎えられる方が重要だと判断し、迷った後、首を縦に振るのだった。

ミトラルのお陰で謎にグッと踏み込めました。もう少しで核心に迫れそうです。

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