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神様になる前にもう一つ世界を救って下さい  作者: Gyanbitt
第十章 二種族抗争編
1022/1111

幕間1

「ザガリアス様は一体どういうおつもりなのだ!?」


「人族を、しかもあの長耳共の邪悪な企みに手を貸す人族をグラン・ガランに入れるなど冗談ではないぞ!!」


「エンジュ様に合力されるならまだしも、人族の肩を持つとは……!」


密かに集まったドワーフの若者達は今日の出来事への不満を憚る事なく吐き出していた。


彼らの殆どはまだ100歳を超えた程度の若いドワーフである。エルフに対する彼らの恨みは既にゴルドラン殺害に対するものが第一ではなく、彼ら自身が被った貧困や離別、屈辱によるものであった。


ドワーフは年長者が目下の者を生かす為にその身を戦火に捧げてきたが、その結果、男は家庭を顧みる余裕が残されておらず、子供らは母親と共に残されてしまう事が多かった。そんな生活がドワーフを変質させていったとしても、それは彼らを責めるべきではないのかもしれない。


だが、その鬱屈した感情に王族でありながらドワーフの倫理に縛られないエンジュが方向性を与えた結果、若さゆえの激情は「勝つ為ならば何をしても良い」という、身勝手で利己的な思考形態を産むに至ったのである。


彼らにとって『機導兵マキナ』がどんな意図で提供されているかなどどうでもいい事であった。ただ自分達に勝利をもたらし、エルフを蹂躙出来るのなら考慮に値しないのである。叶うなら、出来る限り自分の手で高位のエルフを殺し、自らの恨みを晴らしつつ栄達に繋げたいのだ。


悠が何を求めてこの場にやって来たのかを知る者はザガリアスとドルガンだけだが、栄達を望む者達にとって悠の首は見逃す事の出来ない大魚だ。ザガリアスさえ止めなければ今頃悠の天幕は奇襲を受けていただろう。……もし実行すればその結果自分達の人生がこのアガレス平原で終わるとは想像だにしていないのだが……。


「……おい、今からでも遅くは無かろう、奴の寝所を襲ってはどうだ?」


「馬鹿、お前が考え付くような事はもうみんなやっているに決まっているだろう」


「奴の天幕の周囲は『天鎧衆てんがいしゅう』が守りを固めてるんだよ! 畜生、あいつらザガリアス様以外の命令では動きやがらん!!」


『天鎧衆』とは他国の親衛隊とほぼ同義の部隊であり、ザガリアス直属の戦闘部隊である。当然の事ながらドワーフの精鋭が集められており、忠誠心も非常に高く、一度ザガリアスに悠の警護を任されたならたとえ死ぬと分かっていてもその場から動きはしないのである。


「クソッ、せっかく手柄がすぐそばにあるってのに!!」


残念ながら彼らが束になってかかっても『天鎧衆』を突破するのは不可能だ。そもそも命令違反を犯し同士討ちなどやれば、ザガリアスは絶対に彼らを許しはすまい。


しかし、僅かに残していた理性も功名心に逸る彼らの前では風前の灯火という他になく、ほんの些細な一言で掻き消える事となった。


「……さっき聞いたんだけどよ、どうもザガリアス様はあの人族と一緒にグラン・ガランに戻るらしいぞ?」


「それは確かか!?」


「ああ、明朝使う為にリザードを何匹か用意しろって命令があったんだとよ。ザガリアス様のネビュラも含まれてたっていうから間違いないぜ」


「じゃあ、明日からザガリアス様はしばらく居ないんだな?」


「「「……」」」


ザガリアスの不在。それは今の彼らにとって朗報であった。ザガリアスは頼れる指揮官であり勇者だが少々厳格過ぎ、彼らの欲求をあまり満たしてくれないのである。その点エンジュはもっとざっくばらんで若者達からの人気が高いのだ。


煩い上役が居なくなると知った彼らはザガリアスが予想すらしていなかった方向へと向かい始める。


「……なあ、ちょっと俺に考えがあるんだが……」


若きドワーフ達の暴走が始まろうとしていた……。

若も苦労しますなぁ……。


幕間2はもうちょっと後に挿入します。

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