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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

骨の騎士、爆誕

作者: マクロ

 推敲すればするほどわけがわからなくなるからとりあえず投稿。

 誤字脱字、「こいう表現、構成がいいんじゃないか」等のアドバイス、「こういうところが気に食わない、おもしろくない」等の批評がありましたら、指摘していただけると喜びます。

 王立魔法学院死霊魔法科に通うダークエルフの少女、リリス・アージエールは上機嫌であった。一人前の死霊魔法使いへの第一歩ともいえる、筆頭騎士召喚の儀式に見事一度で成功したからだ。

 入学以来、落ちこぼれだの劣等生だの蝙蝠耳だのと見下され、この筆頭騎士召喚の儀式も失敗確実と目されてきた彼女にとってはとんでもない偉業なのだった。


 筆頭騎士召喚とは、普通魔法科の使い魔召喚や、物質魔法科のプライベートゴーレム・クリエイトと同じく、縁契約を結ぶ相棒のような存在を召喚する儀式である。


 使い魔というのは、魔法使いが魔法薬などを作る際に必要な素材などを見つけるために使役する小動物などのことを言い、プライベートゴーレムというのは、魔道具などを製作する際の助手として使用される高度な知能を持った等身大のゴーレムのことを言う。

 

 以上の二つとは、筆頭騎士の場合は主旨が異なる。


 死霊魔法使いはその用いる魔法の性質上、戦闘時に真価を発揮する一方で、本人の戦闘力は高くならない。ゆえに、いざ戦うというときになってなにも出来ずに殺されてしまうことが多々あるのだ。


 筆頭騎士とはそんな死霊魔法使いを護るための、いわば護衛なのである。



 

 リリスが召喚したのは骸骨人スケルトンであった。


 骸骨人を召喚する死霊魔法使いというのは珍しくなく、ゾンビやレイスのように、むしろ一般的な部類である。


 しかし今回、リリスが召喚した骸骨人にはおかしな点がいくつかあった。


 全長約百八十センチから百九十センチ。骸骨人としては大柄で、百四十半ばほどのリリスからすると見上げんばかりの巨体である。

 通常は陶磁器のように白いはずの身体には、紫色の血管のような模様が描かれており、なにやら禍々しい雰囲気を放っている。

 さらに使い魔やプライベートゴーレム、筆頭騎士というのは召喚し、縁を結んだのち、教育を施すまでは本能のまま行動するものであるが、リリスの召喚した紫骸骨人は縁を結ぶ前から忠誠を表して跪き、見学していた教師や同級生を驚かせたのだった。


 召喚の成功と、珍しい骸骨人を召喚し、いつも自分を見下していた奴らの鼻を明かしたことがあいまって、リリスの機嫌は鰻昇りとなったのである。


 ちなみに名前はアイゼンと名付けた。古い言葉で『鉄』という意味だ。自身の護衛にはぴったりである。




 …………………………



 リリスは王都近郊の森まで来ていた。今晩の夕食代捻出のためである。


 リリスはもともと倹約家で、さらに雀の涙程とは言え実家からの仕送りを受け、さらに授業が終わればほぼ毎日といっていいほど魔法ギルドで雑用の依頼を受けていたこともあってお金に困ることなど殆ど無かったのであるが、それがこのような状況になったのはやはり筆頭騎士召喚成功の影響なのであった。



 傍から見ると気持ち悪いほどの上機嫌だったリリスは、授業が終わると同時にアイゼンを伴って街へと繰り出し、己の筆頭騎士の装備を購入しようとしたのである。


 通常、己の筆頭騎士に持たせる武器やそれを用いた戦い方などは主人である死霊魔法使いが与え、教えるのであるが、武具屋に入った途端主人である自分をそそくさと追い越し、武具の物色を始めたアイゼンを見て、リリスは全て任せることにしたのだ。


 その結果購入したのがツヴァイヘンダーとタワーシールドであった。


 ツヴァイヘンダーは人間種が用いるような取り回し易くした軽めのものとは違い、獣人種や巨人種、鬼人種などといった生粋の戦闘種族が使う加重魔法が付与された本物の超重力武器だ。

 タワーシールドは下部に鈍く尖ったスパイクがついており、地面に突き刺して構えれば、岩厳大猪マスケルボアのチャージすら防ぎきるであろうことを予感させる。その重厚さと堅牢かを兼ね備えた大鉄盾はまさに砦壁と表すのが相応しい。

 それほどの性能を誇る武具であるから、無論値段もそれなりにする。具体的にはリリスの貯金が吹き飛ぶ程度だった。


 そんなわけで明日食う物にも困るような状況になった結果、急遽金策に走ったのだ。


 護衛がついた今、討伐系の依頼でも完遂できるという自負はあったが、アイゼンの実力が未知数なために今回は見送った。


 

「んー……。これにしよっかな」



 結局受けたのは甘天草かんてんそうの採取依頼だった。


 甘天草をすりおろして煮詰めると少し青臭さが残るものの、甘みのある汁が得られる。これを用いて作られた菓子は安価で庶民に人気なのだ。ちなみにそのまま生で食べるとすごく苦い。



「それじゃあ私はこの辺りで甘天草を探すから、アイゼンは周りを見ててね」


「…………」



 アイゼンが重々しく頷いたのを確認してから、リリスはしゃがんで作業を始めた。今晩からの食事がかかっているからかいつになく集中し、空が赤みがかり始めたのに気づいた頃には甘天草を入れた革袋はいっぱいになっていた。


 これだけあれば質素な食事にはなるが二日は保つだろうと考え、暗くなる前に街へ戻ることにした。



 ことが起こったのは、それからすぐのことであった。



 …………………………



 ずどんという大気を震わせる音に驚いて見てみると、アイゼンが先ほど買ってやったばかりのタワーシールドを地面にめり込ませていた。


 いったいどれほどの力を込めて叩き付けたのか、タワーシールド下部に生えていたスパイクどころではなく、盾全体の四分の一程が地面に埋まっている。


 せっかく高い金をだして買てやったのに、なんてぞんざいに扱うのかと眉を顰めたところ、はるか前方からずしん、ずしんという地響きのような音が近付いてくるのを、ダークエルフの発達した聴覚がとらえた。



 何事かと思い、紫骸骨の影からひょいと頭を出して前を見てみると――


(デ、デミオルグ! それも三匹も!?)


 ――三体の巨大な豚面がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。


 デミオルグ。


 二メートル半ばにも達するであろう毛むくじゃらの巨躯を持つその豚頭の怪物は、単体でさえベテランの戦士三人と互角に戦うと言われている、第二級危険生物である。

 同じ豚頭でも、豚獣人オークとは違い、知恵も理性も社会性もない正真正銘の魔物なのだ。


 太い毛に覆われた体躯はその下の分厚い皮膚や脂肪のおかげでとてつもなく頑丈で、下手な斬撃では精々毛の数本を断ち切る程度である。

 全身に搭載された冗談のような量の筋肉は、ただの拳に破城槌にも劣らぬ程の威力を乗せる。


 おおよそ一流と呼ばれる戦士達が地の利を生かし、罠を張り巡らせてやっと確実に打倒できると言われるほどの存在であり、つい最近筆頭騎士を召喚したばかりの学生、それも魔法学校始まって以来の劣等生と評されたこともあるリリスでは瞬く間に蹂躙されるであろうことは目に見えて明らかであった。


 それが三体。


 常識に則って考えるならば、すぐさま踵を返して街へ逃げ帰るしか生き残る道はない。


 そうして生き残れる確率も極僅かだ。

 デミオルグがいくらその巨躯に見合った鈍足だからといって、そもそもの身体能力や脚の長さが違う。


 抜けそうになる腰をなんとか立たせ、 己の筆頭騎士に撤退を命じようとしたリリスが見たものは――


 ――膝をたわませ腰を落し、やや前傾姿勢をとって左腕を前へ突き出し、右手で柄尻を握ってツヴァイヘンダーのリカッソ部を肩に乗せ、全身から鬼気迫るような紫色の闘争心を漲らせた己の騎士であるアイゼンの姿だった。


「な、なんっ……そんな命令してないでしょ!なにやってんの!?逃げるわよ!」


 紫骸骨人は頭を振る。



「『イヤイヤ』じゃないの!無理なの!逃げるの!」


 もはや半泣きである。


 そんな主従のやりとりを目にしたデミオルグは、もはや逃げられぬとばかりに厭らしく笑みを浮かべて走り出した。


 地鳴りのような轟音に気付いたリリスは、ひいぃと恐慌を起こしながらも逃げ切ることは不可能と悟り、まるで大地から生えてきたかのように屹立するタワーシールドへ身を隠した。



 普通の骸骨人とは体色が異なり、自立意識を持つような行動をとっていたとしても、自分が召喚したのはあくまで骸骨人。多少戦闘訓練を受けたものならばたいていの場合勝利を収めることができるような低級の魔物である。

 大層な武器を持っていたとしても、骸骨人ではデミオルグには(それも三体!)勝てないのは自明の理なのだ。


 それでもなんとか逃げる隙を見つけようとタワーシールドの端から頭を出し、迫りくる――いや、もうすでに目と鼻の先にまで接近しているであろう――脅威を見ようとしたリリスが目にした光景は、にわかに信じがたいものであった。



 …………………………



 デミオルグが走る。


 三体のデミオルグが矢尻のような陣形(デミオルグに陣形という概念はないだろうが)をとって獲物に迫る。


 間合いが狭まる。


 すでに彼我の距離は十メートルを切った。



 デミオルグは笑う。


 骸骨人のようなちっぽけな存在が己に対して健気にも立ち向かおうとしている様を見て。



 あと一歩。


 あと一歩で自分の腕が獲物に届く。


 一撃でもって目の前の骨を砕き、それからゆっくりと奥に隠れている人間の雌を犯して犯して犯し尽くして、そして食らおう。

 甲高く心地よい悲鳴を聞きながら、柔らかい乳房を食み、新鮮な内臓を心ゆくまで啜ろう。



 そんなふうに、この後に待つ快楽の宴のことばかりに気をとられていたデミオルグは、それゆえに訳もわからないまま命を落とすことになったのだった。



 …………………………



 十メートル


 八メートル


 五メートル


 そして――



 先頭を走るデミオルグが間合いに踏み込んだその刹那、アイゼンが動いた。


 目にも止まらぬ速さで振り下ろされたツヴァイヘンダーの威力は、それ自体の重量、遠心力、そして己の主から漏れ出る上質かつ大量の魔力を喰らって極限まで強化された骸骨人としては規格外なその膂力によって何倍にも膨れ上がった。


 超重量武器による一撃とは思えない程の速度は破壊力へと変換され、その剣先が先頭のデミオルグを縦一文字に断ち割る。

 ツヴァイヘンダーの勢いは止まらず、そのまま地面に激突し、地竜の咆哮もかくやという爆音を響かせた。


 自らのすぐ前を走っていた同胞が二つに別れたのを見、さらに生存本能の奥底を揺さぶるような轟音に耳朶を打たれた後続二体のデミオルグは一瞬その動きを止める。


 その一瞬が致命。


 渾身の初撃が大地を割ったと同時、身体を半回転させ後続のデミオルグに背を向けるようなその一動作でツヴァイヘンダーを構え直したアイゼンは、ほぼ一周分の遠心力を存分に乗せた横薙ぎの二撃目でもう一体のデミオルグを上下に切断し、残る一体の胴を半ばまで断った。



 主要器官が密集する胴体を斬られたならば普通は致命傷だ。


 しかし、デミオルグは普通ではなかった。

 デミオルグを第二級危険生物たらしめるのは、並外れた防御力や悪夢のような攻撃力ではなく、即死しない限り何度でも再生し立ち上がる、その驚異的な生命力なのだ。


 すでに再生は始まっており、ツヴァイヘンダーはデミオルグの身体に埋まってしまった。

 

 デミオルグは地獄のような苦しみに苛まれながらも勝利を確信し笑みを浮かべる。



 が、そんなことは承知しているとばかりにアイゼンはツヴァイヘンダーを即座に手放し、懐へ一足で踏み込んだ。


 アイゼンの動きにまるで反応できず、醜い笑みを浮かべたままのデミオルグの顔面――否、口腔内へと鋭く尖った指先を一点に束ねた、ランスの如き貫手が叩き込まれる。

 引き絞られた矢のような勢いで繰り出された貫手がデミオルグの口を破り、歯を砕き、舌を切り裂き、脳を貫いた。


 脳を破壊されて息絶えぬ生物などいない。


 それはデミオルグも例外ではなかった。

 



 


 たった数度の瞬きの間に三体の危険生物を肉塊に変えた己の筆頭騎士の所業を目の当たりにしたリリスは



(あ、川に寄って下着を洗わないと)



 と、現実逃避を始めるのであった。





 結局一体なにが書きたかったのか。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 地の文章は上手ですね。 [一言] 文章力は羨ましいほどなので是非ストーリー練られたものが読みたいです。
2014/09/19 19:01 退会済み
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