Door 扉
前回の更新から気づいたら二週間弱…
結構頑張って書いてるつもりなんですけどねー
では、どうぞ!
ポリバケツをバットで殴っているような音がするトンネルの中へと優奈の身体が運び込まれる。そしてその中をゆっくりと通過する。騒音に交じる静かな機械音に耳を傾けながら優奈はその時間をやり過ごしていた。やがて機械の観測部分が脚に差し掛かったところで機械室の無機質な白い天井が見えてきた。そして折り返すようにもう一度トンネルの中を通り検査を終えた事を告げるブザーが鳴った。看護師が優奈の身体に装着されている機具を取り外していく。お疲れさまでしたという声を聞きながら、特別診察室へ戻る。母のユリは別件で出払っており、部屋には一人だ。殺風景な部屋の窓から見える街並みが唯一時間を潰す方法であった。遠くに広がる網目の様な街並みを眺めていると、突然ドアのほうからノックの音が聞こえた。優奈はあわててそちらに向かいドアを開けてみた。しかし人影はなく、真っ白な廊下だけが続いていた。
するとその白い廊下に同調するように一枚の画用紙が落ちていた。優奈はそれを拾い上げた。その画用紙には綺麗なデッサンが描かれていた。抽象画とも風景画ともつかない何とも表現しがたい絵だった。優奈はその絵をまじまじと眺める。不思議と引き込まれるような絵だ。濃淡の差が微細な部分まで行きとどいている。終わりと始まりを告げる―――あえて言葉にするならこんな風だと優奈は思った。
ふいに誰かに肩を掴まれた。その驚きで一気に現実の世界に引き戻される。見上げると心配そうな顔で担当の若い医師が彼女の顔をのぞいていた。大丈夫かい、という彼の問いかけに優奈は少しうつむき加減に「はい」と答えた。その医師は彼女の持っている画用紙に少し気を向けたが、聞く必要性を感じなかったのか、それには触れなかった。優奈はなぜかそれにひどく安心した。優奈は手元の画用紙を丁寧に折りたたみ洋服のポケットにしまい先を歩く医師の後を追いかけて行った。
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「優奈、お疲れ様。しばらく休んでいてくれ」優奈が診察室を出るのと入れ替わりに、優介が白衣姿で部屋に入っていく。優奈は病院の廊下にある椅子に座った。分厚い扉のお陰で、部屋の中の喋り声は聞こえなく何所かで機械が作動しているような音が聞こえるだけだ。おそらく院内の空気清浄を行っているものだろう、特に優奈のいる場所の。またもや取り残された優奈はただぼんやりと病院の白い壁を見つめていた。ポケットに入ってるデッサンのことはすっかり忘れていた。しばらくするといくつかの紙束を手に持って優介が出てきた。
「お待たせ。今回は随分任せて悪かったね。さぁ行こうか」二人は手をつないで歩いていった。特別隔離階が故にほとんど人がいない廊下を歩く二人の姿を院内に設置されている防犯カメラが見つめていた。
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「…優奈と優介さん遅いですね」一志がボソッとつぶやいた。その声を聞き取ったユリが微笑みを返す。「今日は定期検査じゃないから、しょうがないんじゃないかな?」それを聞いた一志はまた何もない時間を潰すために軽く目を閉じ、壁にもたれかかった。ナースステーションの一角にいる少年を、通る人は少しいぶかしげに見る。一志はどんなに騒がしいところでも一瞬で身体を休めるために睡眠をすることが可能だ。例外はほとんどない。実際ひっきりなしに鳴っているコール音の中で彼は睡眠している。その傍らユリは行ったり来たりでかなり忙しそうだ。
しばらくすると一志は息苦しさを覚えて目が覚めた。目を開けてみると優奈に鼻をつままれた状態だった。一志の驚いた顔を見て優奈は元気そうな笑い声を上げた。それにつられて優介とユリも微笑む。一志はどうかというと、狐に包まれたような顔できょとんとしていた。時計を見ると7時を回っていた。ナースステーションにはどうやら一時的な休息が訪れたようだった。そのタイミングを見計らい、ユリはすでに普段着に着替えている。
「じゃあ今日は何かうまいものでも食べに行こー!」という元気な、悪く言うと職場に気を使ってない声でユリが言う。そのあとに優奈が「おー!」と、天に向けてガッツポーズをする。周りの看護師と微妙な温度差で、気まずい空気が流れる。それを察したのか、優介は3人を連れて、夕食へと向かった。
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夜―――
院内は静寂に包まれていた。物音ひとつなく、死後の世界のような感覚を思わせる。
エレベーターが作動していた。チーンという到着音とともにドアが開く。そこには日中の様な生気はなく闇だけが広がっている。影は闇に踏み出した。姿は映し出されないが、カツカツという靴音だけが長い廊下に反響する。その影は、修理中と書かれた大きな自動ドアの前で立ち止まった。ドアのそばには、パスコードとIDカードをかざしてロックを解除するための機械が設置されている。影は何の躊躇もなくそのドアをこじ開けようとした。するとそのドアはすんなりと開いた。影はするりとそのドアの向こう側に入っていく。そしてスロープを上り、別の自動ドアをくぐる。すると空気が変わった。はっきりと体感できる変化だ。影はそのまま歩き続ける。暗闇の中その影はまるで道がわかるように立ち止まることなく歩き続ける。しばらくすると、中から明かりがもれている引き戸式のドアが見えてきた。影はその前で軽く目をつむり、立ち止まる。
そして、とってに手をかける。それをスライドさせる。ドアの向こうの部屋の明かりが暗闇の廊下に漏れる。
その人物は光の向こうへと消えて行った。
自分でも中盤何かいてるかがわからなくなってきます。
たわいな部分を描くのがめっちゃ苦手です…
次は、早く来ます