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AKATSUKI   作者: 銀夢 煉志
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33/36

Messenger 伝達者

半年ぶりじゃー(殴


それではどうぞ!

数日もすると一志いちとは徐々に赤月家での生活に慣れ始めてきた。ここに来るまでの記憶が定かじゃない一志にとって、人のぬくもりに触れるのはこれが初めてだったので最初はどう接していいかわからずにいた。赤月家の3人は、いい意味でそれを気にせずに彼に接した。そのため、一志がなじむのにそう時間はかからなかった。

「なーにしてるの?」一志が自室のベットに寝転がり、天井を見ていると優奈ゆなが入ってきた。今日の優奈は顔色もよく、体調がよさそうだ。

「えーと、今日は随分と体調がよさそうだな、いや、ですね」一志は同年代の異性と接するのが初めてなので、一応は丁寧に接するように心がける。そんな一志の心がけに気付かずに優奈は言葉を返す。

「そうなの!いっちゃんがきてから、元気がいい日が多いの。いっちゃんのおかげかな?」明るい笑顔でそう言われた一志は、少しだけ頬が赤くなるのを感じた。

「半分冗談で、半分ほんとだよ。それでね、朝食の後に一緒に散歩にいこうかなーって思ってるんだけどどう?」るんるんしている優奈の様子に一志は少し圧倒されて「ああ」と短く返事をした。

「じゃあ朝ご飯たべにいこ!」優奈に引っ張られながら半ば強引に一志は朝食を食べに行った。

居間に行くと、二人の分の食事はすでに用意されていた。青と赤のランチマットの上に、スープとパンが置いてある。ユリと優介に朝の挨拶をする。そして席について、いただきますをした。すると食べている途中に優介が言った。

「優奈。今日はちょっと病院に行きたいんだが。いいか?」すると優奈は一瞬困ったような顔をした。

「おっけー わかった」しかしすぐに返事をした。おそらく母親や父親に心配をかけたくないのだろう。そして一志のほうを向いて少し笑った。それを見て一志も頷き返す。

「それで、一志君はどうするかい?私たちと一緒に来ても構わないよ」優介にそう誘われて、結局一志も一緒に行くことにした。


支度を終えて、全員車に乗り込んだ。これで町へ行くのは二度目になる。



「それじゃあ、少し急ごうか」優介がエンジンのスロットルを全開にした途端、それに呼応するように一志は気を失った。



目が覚めると、あたりが暗かった。

「ああ、一志君。急ぎなさい」どうやら駐車場のみたいだ。ユリと優奈の姿はなく、先に行ったようだ。一志は優介と二人で薄暗い地下駐車場を歩く。そして、銀色の大きなエレベーターに乗り込み、地上を目指した。チーンという軽い音が到着を知らせ、ドアが開く。するとそこは、先ほどの人気のない駐車場と違い活気に満ちていた。車いすに座っている老人。そしてそれを介護する看護師。忙しそうにカルテをめくっている若い医師。待合席で、携帯電話をいじったり、雑誌を眺めたりしている患者。退院したての家族と連れ添う者。様々だ。一志はこんなにも大勢の人を一度に目にしたのは初めてだった。その喧騒が、緊張を掻き立てるようなものでもあり、不思議な安心感を与えるようなものでもあった。優介についていく間も、多くの人とすれ違う。その一人一人に対し、一志は緊張していた。そして、突き当たりの部屋へとたどり着いた。

「ここで待っていてくれ。しばらくしたら戻る。これが私の番号だ。何かあったらこれに連絡してくれ」そう言って優介はどこかへ行ってしまった。残された一志は、案内された部屋の中を見回してみる。大きな窓が一つあり、部屋の中を明るく照らしている。部屋の中にはいくつか棚があり、その中に本やらおもちゃやらが几帳面に並べられている。どうやら、子供用の待合室のようだ。とりあえず靴を脱いで、マットがひかれている上に腰かける。特にすることもなかったので、寝っ転がり、天井をボーっと眺めていた。

どれくらい時間が経ったのかは分からない、途中で眠っていたようだ。一志は目を開けた。窓から差し込む光が先ほどより弱くなっている気がする。起き上がってみると、目の前に一人の少女が正座をしてこちらをじーっと見ていた。いきなり現れた少女に一志は、びっくりして心臓がひっくり返りそうだった。

「あなたの寝相ってものすごくいいのね。なんだか軍人みたい」氷のような冷たさと、透明感がある声で表情一つ変えずに彼女は皮肉を言ってみせた。

「え…っと、あなたは?」一志は先ほどの衝撃でまだバクバクしている心臓を抑えながら何とか声を絞り出した。

「あなたに名乗るつもりはさらさらなかったけど、上からの命令だからしょうがないわ。私の名は藍璃あいり

「えっと、俺は―――」

「わざわざ名乗っていただかなくても、知ってるわ。守宮一志でしょう?」一志の自己紹介を遮り、藍璃は言った。

「…お前、一体何しに来たんだ」一志の目が警戒のため鋭さを増す。しかしそれには全く動じずに彼女は続ける。

「私はあなたに警告をしに来たの。いえ、正しくは伝言ね。今すぐ、赤月家と関係を断ちなさい。これ以上あなたに話すことはないわ」彼女の発言を聞いた瞬間、一志は驚きで目を見開いた。そして一瞬「拷問」という単語が脳裏をかすめたが、目をゆっくり閉じて冷静さを取り戻そうと努める。「お前の目的は、なんだ」地の底から響くようなドスが聞いた声で一志が聞く。一般人なら青ざめるほどだが、藍璃は無表情のまま答える。「そうね…上から口止めはされているけど、手は止められていないわ」そう言って彼女は優雅な動作で立ち上がり、棚のほうを物色し始めた。しばらくして、スケッチブックと鉛筆を見つけ出し、何かをかき始めた。数分後、出来上がった物を藍璃は一志に渡した。「私達・・は、あなたを赤月家から最小限の干渉力によって引き剝がさなければいけない。そう、最小限の干渉力で。後は、あなた次第だわ。…それじゃあ」そう言って彼女はスケッチブックと鉛筆を棚に戻して部屋から出て行った。「おいちょっと待…」一志の呼びとめは扉がしまるバタンという音によって掻き消された。再び一人になった一志はもらった画用紙に目を落とした。

そこには奇妙なデッサンがあった。紙をタテに見たとき、紙の中心に短い柱のようなものがあり、そのそばに点状のものが二つ。片方の影は正常なのだが、もう一つには影が二つつている。さらに短い柱の両サイドに長い柱が2本描いてある。そして、短い柱を中心に何かが弾けているようなのが描かれている。まったくもって意味が不明な絵だった。

しかし、一志はこの絵から何ともいい難いひどく切ない気持と、何かおどろおどろしいものを感じた。

そしてほんの少しの希望を。

あーあ短い短い

というわけで、ではまた!←

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