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AKATSUKI   作者: 銀夢 煉志
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Go out 外出

時間も遅い…

はじめるぞいっ!

部屋から出たところ廊下は何ら変わりがなかったが、一階に下りてみるとその違いは歴然としていた。暖炉が付いていても全く空気が籠った感じがしない。無煙薪むえんまきを使っているみたいだが、通常ならそれでも少しは焦げるにおいがしたり、空気が籠る。しかし今は全くそんなことはない。一志いちとは度肝を抜かれた。技術力にはもちろんだが、なにより娘の為にここまで完璧に設備を整える親の〝愛情〟に驚いた。「ねぇー 久々に優奈ゆなも部屋から出たことだし、どっかいきましょうよ!」ユリがはしゃいでる様子でそういった。その言葉に優奈も目をルンルンとしだした。遺伝の正確さには何度も驚かされる。もう今日で何度目か…そんなことを考えながら指折り思いだしていると、出かけることが決まったようだ。

一志(いちと君、これから出かけることになったよ。君は乗物酔いとかはダイジョブかい?」一志は車に乗ったことがなかったのでとりあえずハイとだけ答えておく。それを聞いた優介は安心したように笑った。その時点でまだ一志にはその意味がわからなかった。





―――そして、出発してからその意味を理解する。





大型ジープで走っていく道はものすごく蛇行しているうえに、地面が舗装されてない山道だった。開始十数分の時点で一志はリタイアしそうになる。しかもなかなか山道を抜けない。

「歩いてくれば、抜け道とかがいっぱいあるんだけどね。車だとどうもかなり遠回りをしなくちゃいけないんだよ。いざという時はヘリを使う」運転しながら、一志のほうを向いて話をする優介。あくまでも前ではなく一志のほうである。ここが重要なポイントだ。華麗なハンドルさばきを見る前に一志は気を失ってしまった。






 起きてみるとそこは駐車場の中だった。まだ少し頭がグワングワンとする。3人の覗き込む顔が見えた。何とか起き上がり、車外に降りる。二台分のスペースを占領して駐車しているジープ。その大きさに驚きおののく。話を聞いたところそれは、車内の空気清浄装置らしい。空気が停滞しがちな車内では、高速かつ高性能の装置が必要だということで、造ったということだ。そんなことはさておき、一志たちが来たのは大型ショッピングモールだ。当然人も多いので、優奈はしっかりとマスクで対策をしている。このマスクも普通のマスクではないようだ。ここに来た目的はどうやら、食品やら、日用品やらを買いだめするためらしい。もっとも大きな理由は一志の衣服類だ。今は、優介の服で何とか賄っているがそれでは代えが間に合わなくなる可能性があるらしい。何でもこの辺りは雨季が突然訪れる事あり、普段は乾燥している分雨が降るとその凄まじさは半端ではない。止んだと思ったらすぐに振り出すという厄介な天候だ。そのほかにも必要なものをたくさん買い物をしたため一志も持たされる羽目になった。優介とユリで大きいカートが2つと、一志がぎりぎり抱えられるかどうかの大荷物が一つ。もちろん優奈は何も持っていない。それはをなんとか、ジープのトランク(正確に言うと装置の後ろのスペース)に押し込む。車内は駐車場の排気臭い空気と違い、澄んでいた。まるで空気のきれいさが目視できるほどに。車内のデジタル時計を見ると13:27で点滅していた。

「お腹すいたでしょ。ちゃんとお昼ご飯はつくってきたのよ」えっへんという風に、ユリがタッパーから人数分のトーストを出す。優介は食べながら運転を始めた。次の目的地は水族園だそうだ。どうも優奈が見たいと言ったらしい。



そして車を走らせること小一時間、水族館についた。人が多そうな時間帯だが、まばらだった。ほぼ貸し切り状態で楽しめると優奈はガッツポーズを握っていた。

「あ、そうだ!優奈さ、いっちゃんと二人で行ってきなよ。あたしは優介さんと一緒に二人が出てくるまで待ってるから」

「おい、それはさすがに・・・」優介がいい終わらないうちに、ユリは二人に入場料+αの代金を渡した後、風のごとく近くに喫茶店を探しに消えた。


半ば強制的に押しつけられた一志はぽかんとする。その一志を優奈がひっぱて行く。二人分のチケットを買いゲートを通る。

「じゃあ、いっちゃん。いこっか!」幸せ全開の笑顔で言われ少し一志は照れた。そうして二人は薄暗い水族館内を歩きだした。順路に従い歩く。一志は初めての水族館だったが、何にどうリアクションしてよいかわからず途中で優奈に「もしかして、退屈?」と聞かれてしまった。それに対して優奈はブースが変わるごとにテンションを上げていった。深海生物ブースではウミケムシの高速くねくねをみてきゃーきゃーさわいだり、最後のペンギンショーでは観客の中で一番盛り上がっていた。もしかしたら、ペンギンたちよりもほかの観客の視線を集めていたかもしれない。もちろん男女問わずに、彼女の発するオーラに惹かれていた。さらには最後の売店でのくじ引きで大きなイカの人形を当ててしまう。目がくりくりした可愛い人形だ。

 そんなこともあり、出口を出た時は一志はへとへとになっていた。体力的には問題ないが、精神面というか別方向で疲れた一志であった。その隣を元気いっぱいにイカを背負った美少女がてとてとついていく。がっくりと肩をうなだれる少年と、イカを背負った少女。さながら一枚の絵であった。その後、二人が迎えに来てくれて一志たちは車に乗り込んだ。車が発車する前に優介が準備運動をしていたのを見て、一志は内心冷や汗を流した。彼のストレッチが終わると発車しだした。それと同時に一志は目をつむる。






しかし車は予想に反してまっすぐな道を走り続けた。一志はほっとした。














そのほっともつかの間。何かアラーム音がしたかと思うと車の速度が上がった。表情が凍りついた一志が優介を見る。笑顔で一志のほうを見ながらそれにこたえる優介。その後タイミング良くナビが無感情な声で言った。

「間もなく山道に入ります」

その瞬間一志は自動的に気を失った。

時間も遅い……

次回に続くっ!

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