The Past Memory 過去の記憶
ええと、久々の投稿で一気に二話とうこうするぜ、フゥーハッハッハッハッみたいなこと言ってたんですが、さすがにそんなに暇じゃありません。
ご了承ください(´・ω・`)
ちなみに今回の話は、結構前の《偶然? 必然?》の続編となります。
読み返さなくてもダイジョブなんですが、読み返した方が面白かったりしたりするかもです。
ではでは、本編どうぞっ!!!!
―――朦朧としていた意識が、次第に鮮明になっていく。
最初に感じたのは、激しい頭痛と全身にわたる痛みだった。
次に、体の冷えによる手足のジンジンする感じが押し寄せる。
一志は壁に寄りかかるようにして座っていた。
疼く全身の痛みを我慢しながら状態をおこしてみる。
頬をなでる生温い風、今にも雨が降り出しそうな鉛色の空―――
今居るのが、薄汚れている路地だと彼は気付いた。
ときとおり人が通るが、彼らは一志を見ると逃げるように立ち去っていく。
どうやら、流されてきてからここに何とか辿り着いたようだ。
しかしどうやってここまで来たかは、記憶が定かではない。
息を吸うと、肺のあたりが痛く喉の奥でゴロゴロと痰が音を鳴らす。
全身に痛みが走る、
筋肉、関節の一つ一つが石のように動かない。
思考が止まっていく。
意識が、また遠ざかっていく、幾度も体験したこの感覚。
世界が歪む―――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
身体が持ち上げられる感覚がする。
うっすらと目を開けてみる―――
視界に飛び込んできたのは白いコートのようなもの。
「生きろ」
そう声をかけられ、彼はその男に背負われた。
雨脚は次第に強くなっていった。
冷たい雨が一志と男を濡らしていく―――
世界が回り始めた。
――――――――――――――――――――――――――――
「あ、あのそれが全く何も思い出せないんだ」
それを聞いた優介は黙ってキッチンに行って、温かい紅茶を運んできた。
そして彼はそれを一口含む。
「君もどうだい?落ちつけるよ」
アンティークなティーカップに入っている液体から、うっすらと果実の香りが漂う。
一志はちょっぴりだけそれを飲んでみた。
「あち」
声に出してあわててカップを戻す一志。
「猫舌かい、一志君?私も昔はそうだったよ、熱いものはダメダメだった」
笑うと両頬にえくぼができるのが特徴のある笑みだ。
「…そうかい、何も思い出せないか。無理もない。ほぼ昏睡状態だったからね。さすがの私も焦ったよ。ユリュスティーナも一緒に看病してね」
一志は頭を下げた。
「ありがとうございました。…迷惑をかけました。ユリュスティーナって…?」
「いやいや、私は君を助けたいがためにしたんだ。気にすることはない。それで、ユリュスティーナは私の妻だよ。本名はユリュスティーナ・リーリャ。みんなからはユリって呼ばれているよ。彼女も私も医者でね。この近くの診察を中心としているのさ」
「そうそう、あたしは優ちゃんと自分たちの病院を持つのが夢なの。ね?」
ユリが階段を降りてきた。シンクにコップを置き優介の隣に腰かけた。
優介から一志の紹介を受けるユリ。
「なるほどね。わかったわ!よろしくね、いっちゃん!」
ユリはまるで少女のような笑顔でそう言った。
「い、いっちゃん…?」
初めてつけられたあだ名に戸惑う一志を見て面白かったのか、ユリは微笑んだ。
「一志君って可愛いのね。これからはあたしたち家族の一員だから、お互い親しみ深い名前で呼ぶのよ。わかった?いっちゃん」
語尾に音符マークがつきそうなテンションで話すユリ。
「は、はぁ…」
その剣幕におされぎみになる一志はとりあえず返事をした。
「まぁ、ユリはいつもこんな感じだから最初は慣れないと思うが次第に慣れるよ。私は彼女のこんなところに惚れ込んだんだ」
真顔でそういう優介。
「もぉ~、優ちゃんったらぁ~」
目の前で仲がいい夫婦の様子を見て一志は純粋に、うらやましいと思った。
「さぁ一志君、もう少し休んでなさい。本当はもっと寝ていなきゃいけない身体なんだから」
その言葉に一志は二人に軽く会釈をしてベットに戻った。
窓から外を見ると、雨がやんでいた。
真っ黒な雲の隙間から、月が垣間見た。
銀色の月光を見ながら一志は、静かに眠った。
新キャラっつーか随分前にでてきて名前だけ明かしてなかった人ですね。
結構この‘ユリュスティーナ・リーリャ’って気にいってるんです。
略して‘ユリ’ってなるとこも気にいってます。
ちなみに今回の話が過去編の折り返し地点になります。
なので、過去編後半戦の始まりです!
それでは、また近いうちに出てきたいです…
それでは!