op.24 気付かない想い
家に着くと友季子との挨拶もそこそこに二階に上がる彩音。どっと疲れが出た。
ダルい体を無理矢理動かし、模試に持って行ったボストンバッグを開ける。中には参考書の他に、楽しげなお土産が詰まっている……。
「あぁ……もう」
何も考えたくなくてバッタリと布団に倒れこむ。友季子が敷いておいてくれたのだ。
澄海が芳に告白したということもショックだが、芳が彩音にどうでもいい風に接したことに何よりも衝撃を受けた。
彩音は信頼している友達にされたからこんなにも悲しいのだと思い込んでいる。まだ自分の気持ちには気付いていない――。
「たっ、ただいま! ママっ、芳くんが好きって!!」
バタバタと賑やかに家に飛込んでくる澄海。友季子はあらあら、と驚きながら嬉しそうに応える。
この家は古い。もう五十年以上ここに経っている。だからもちろん二階に居る彩音には筒抜けだ。
「あっ、彩音ちゃんは上?! 言ってくるよっ」
幸せそうな澄海の声。いや……聞きたくないっ。今会ったら、私は酷いことを言ってしまいそう……。
彩音がそんなことを考えながら布団の上で青くなっていることなど知らない澄海は軽やかな足取りを響かせて彩音の元へ向かう。
彩音ちゃんに早く言わなきゃ…っ。それで明日、他の友達にも言うんだ。
ガラッ
「彩音ちゃん、聞いてっ」
「やだ!!」
大きく鋭い彩音の声に、勢い良く戸を開けた手は固まり、体を怖張らせた。