op.21 明日になれば
「あぁ〜終わったぁ…」
試験終了の合図。問題の解答をもらってすぐに立ち上がり、町へ向かう。
インドサンダル。
今、心の中はそれだけ。
この辺りは物価が安いし良い物が揃っているからきっと見つかるだろう。
芳君と圍ちゃん、それにおばちゃんにも買いたいな。人混みの中で考えを巡らす。
ふと雰囲気の良い雑貨屋が目に留まった。
こういうお店は良いんだよ、大概。なんとなく自信を持って店に入る。
アジアン雑貨の店で、可愛らしいインドサンダルも何足か並んでいる。
澄海の足のサイズは彩音のと変わらなかったので自分で履いてみる。
何足か試してぴったりのを見つけ、彩音は満足げに微笑む。
澄海のイメージに合うターコイズブルー、白、薄桃のビーズがキラキラと並び、上品な感じもする。
その店では圍へのネックレスと友季子へのバッグも買った。
後は芳だけなのだが趣味がよく分からない為、男性物の店で格好良いTシャツを買っておいた。
ホテルに帰って、部屋で芳の歌を歌う。
考えないようにしていたのだが今日のライブはどうだったのか、やはりとても気になる。明日は皆に会いたい――。
「芳くん、めぐちゃん、すごく良かったよ!」
ライブが終わりのんびりしている圍と芳の元に澄海がやって来た。
ライブには中学生全員と教師、時間がある大人達など好奇心旺盛な人々が集まり、なかなか賑わった。
「おーありがとー」
呑気な表情で軽く澄海にお礼を言いながら紙パックに入った紅茶を飲む圍。
「最前列にいたな」
澄海の熱狂ぶりが面白かったらしく、芳はぷっと思い出し笑いをする。
「友達も楽しかったって言ってたよ。二人ともデビューしなよっ」
さらっと楽しそうに言う澄海は本気なようで、圍と芳はぎょっとする。
「アンタさぁ、お気楽すぎ。そんな簡単なもんじゃないんだって」
苦笑する圍はもうすっかり澄海と打ち解けたようだ。
「でも、運もあるじゃない? 売り込みとかしちゃってー上手く行けば、どどんって!」
勢いに乗って人気者になるかも、と伝えたい澄海だがどうも言葉が足りない。
「あーはいはい。じゃ、めぐは帰宅します」
澄海に付き合うのが面倒になったのかそそくさと立ち去ろうとする。慌てて澄海は、
「あぁあ!めぐちゃん待って。訊きたいことがあったりなかったり…っ」
帰り支度を整えた圍を勢いよく押しながら連れ去っていった。
一人ぽつんと取り残された芳は、二人が仲良くなったことに安堵した。
「あのね〜質問があるんだけど……」
学校のすぐ側にある大きな切株の上に座り、澄海は話を切り出した。
「めぐちゃんて、好きな人いるの…かな?」
少し伏し目がちに圍を見る。
「なんだ、恋バナってやつなら興味ないから他の子としな」
「違う違う!えと…あぁもう……」
何やら葛藤しているらしい澄海を見て、仕方ないから見守ってやることにする。
「めぐちゃんさぁ…芳くんと付き合ってる?」
恐る恐る尋ねる。一瞬でぴんときた圍は、
「あっは。なんだ芳のこと好きなの。物好きだねー」
からかいのネタが出来たと喜ぶ圍と対照的にまだ不安の色を隠せない澄海。
「あ、悪い。芳は幼馴染みってだけだよ。芳は澄海のこといい子だって褒めてたし、脈有りかもな」
「えっ、本当?!澄海がいい子かぁー。すっごい嬉しいっ。めぐちゃん有り難うね」
さっきとはうってかわって元気になる。
「アンタ、本当素直だね。見習ってもいいかも」
じゃね、と去って行く圍の背中を見送りながらまだ音楽室にいる芳のことを思う。
脈あり…なのかな?それなら善は急げだよねー。
プラス思考過ぎる澄海は弾みをつけて立ち上がり、校舎へ駆けて行った。
いつの間にやらop.21。もう暫くお付き合い頂けると嬉しいです。アドバイスや感想など、何かありましたら教えてください☆