オルゴールから流れる音色で思い出す。キラキラ輝く君の記憶は色褪せない
オルゴールが音色を奏でる。
僕の頭の中に沢山の彼女の記憶が流れこむ。
僕には大切な人がいる。
彼女の目はクリクリと大きく、少し茶色い瞳。
笑った時の左だけに現れるエクボが可愛さを倍増させた。
彼女には欠点というものはなく全てが魅力的だった。
そんな僕には、彼女が光って見えた。
キラキラ輝く宝石のように美しかった。
高校生になると彼女は、もっと光を放つ。
何度も彼女に気持ちを伝えたいと思った。
でも、幼馴染の関係を壊したくはなかったから言えなかった。
「あなたといると落ち着くの。あなたって昔から私の傍にいて私の味方でいてくれるからね」
その彼女の言葉は、僕を混乱させた。
僕は、こんなに彼女が好きなのに、彼女にとって僕は、何なのだろう?
それから僕達は大人になった。
彼女はメイクを覚え、もっと美しく輝きを増した。
二人でお酒を飲んでいた時、二人とも酔っ払っていたのもあり、自分の気持ちを言葉にしてしまった。
「疲れた。あなただけが私を見てたら何も隠さなくていいのに」
「それなら僕だけを見てよ。君が僕だけを見てれば僕達二人だけの世界になるよ」
「二人だけの世界? 私があなただけを見れば、あなたは私だけを見てくれるの?」
「僕は、昔から君だけしか見てないよ」
「私も」
僕は彼女に、ちゃんと伝えたくて別の日に告白をした。
「僕は君が大好きだ。これからもずっと僕の傍で笑っていてほしい」
「なんだかプロポーズみたいね」
「プロポーズ? そうだよ! 結婚してください」
「はい! 喜んで。交際ゼロ日婚だね」
プロポーズは、彼女が嬉しそうにクスクスと笑う僕達らしいモノだった。
それなのに彼女は僕の傍には、いてくれなかった。
彼女は結婚式を挙げる前に、交通事故で亡くなった。
僕の心は空っぽになった。
彼女のいない世界は色を失った。
どれだけ泣いたか分からない。
全てを忘れたかった。
だから僕は忘れることを選んだ。
彼女を思い出すのは、彼女がくれたオルゴールが音色を奏でる刻だけ。
幸せだった僕達の思い出を思い出すだけ。
その時だけは彼女が僕の目の前に現れる。
そしてオルゴールが音色を奏でなくなると、僕は彼女の全てを忘れる。
「あれ? 僕は何故オルゴールと日記帳を持っているんだ? 早く片付けて引っ越しをしなければ」
僕は、片付けをする度に気がつくと、このオルゴールと日記帳を手に持っている。
だからなのか、日記帳とオルゴールは捨てられない。
「いつか、このオルゴールの音色を聴いてみたいな」
お読みいただき、誠にありがとうございます。
楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。




