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おっさん、生まれ変わる。

汚く散らかった1Kの部屋で1人、男は眠る。そして夢を見た。

それは夢というより悪夢である。

女に押され床に手をつき、上から見下されながら言われた。

「あんたなんかと結婚するんじゃなかった」

涙ぐみ、ごみくずを見るような視線で嗚咽を漏らしながらこちらに向けて言い放たれる。

その瞬間、床下が抜けたみたいに下に落ちていく。

待ってくれ!待ってくれ!!どんどん彼女から離れていき、目の前が真っ暗になった。

「わあ!?」

これらの光景は、僕のトラウマであり、記憶から消えない言葉になっていた。

目が覚めた瞬間、胃に溜められたものが逆流し、嘔吐物となって外に出そうになるため、トイレに駆け込む。

この光景と言葉が頭によぎるたび、ストレスによる頭痛と吐き気に襲われる。

体調不良とトイレから解放され、バイトに向かう準備をし、家を出る。

いつからだろう、こうなってしまったのは。

両親は他界、嫁と離婚し、仕事とアパートを往復する日々。

貯金額を見て不安と焦燥感に襲われながら日々を過ごす。

休日も金を使いたくないという理由から家に引きこもり、携帯で動画を見て1日が終わる。

動画に出てくる奴らの暮らしを見て羨ましすぎて涙を流すこともある。

自分がこの人間社会において下位の存在であることを再認識する。

そんなことも認識したくないから惰眠を貪りながらも悪夢を見てしまうとは、本当にクソな人生だ。

こんな人生から早くドロップアウトしたい。自殺も考えたがそんな度胸もない。

転職も考えたけど、40代を超えてからの転職は難しく、書類選考は通らないし、面接は落とされる。

そんなこんなでお金が増えていかないため、副業として深夜のスーパーの食品陳列をやっている。

「切羽さんお疲れ様でーす。」

「先輩おっつーです。」

整えられた顔。髪型はセミロングで黒髪の中に白髪も混ざっている。

両耳にピアスも開いており、バイト用に渡されたポロシャツの上からでもわかる巨乳。

この娘の名前は「黒島切羽(20)」音楽の大学に通っており、自身でバンドも組んでいる。

夢は、メジャーデビューして武道館をファンで埋め尽くすことらしい。

ライブ会場のお金とチケットのお金を作るため、バイトしている。

夢に向かっている姿勢を見るたびに僕も元気をもらっている。

僕よりも後に入ってきて仕事のことなどを教えている間に話すようになり、いろいろ教えてもらった。

このバイトを始めて数ヶ月、慣れた手つきでお互いに談笑しながら行っていき、無事終了する。

終わった後、2人で切羽さんの家まで送ることが僕たちのルーティーンだ。

ルーティーンの最中、会話しながら帰り道を歩く。40代と20代であっても会話は成立する。

少しジェネレーションギャップを感じることはあるが。

その会話の中で一つの話題が持ち上がる。「もし過去に戻れたら何がしたいか」という話題だ。

「切羽さんは、どうしたい?」

「私は、宝くじの過去の当選番号がわかっているから、その日の何時何分にどこの場所で買われた宝くじかを調べてめっちゃ買って億万長者になります。それと〜、、、」彼女はその後も想像力を働かせ、たくさんの要望を口に出す。

「翔さんは、どうするんですか?」

「僕は、もう一度人生をやり直したいかな。今までの記憶を引き継いで」

「それいいですね!じゃあ、私は、転生して翔さんと同い年の女の子になって一緒に勉強したりしたいです!」

言った後、頬が少し赤くなったのが見えた。こんな僕にそんなことを言ってくれるなんて、、、なんてええ子や!!クールな外見から放たれた言葉に思わず、キュンとしてしまった。ギャップ萌えすぎる。

そんなこんなで切羽さんの家につき、解散となる。

1人で歩く夜道は、少し興奮した気持ちを冷めさすのにちょうどいい。あんな可愛くて若い子がこんな僕と話をしてくれるなんて人生も捨てたもんじゃないな。

「明日も頑張ろう!」

前を向いて生きていこうとモチベーションが上がり、家までスキップして帰った。

次の日、仕事の昼休憩で牛丼を食べて、公園のベンチで座って一休みをする。

昼の公園は、保育園の園児や高齢者など様々な人種が集まって面白い。

子どもの笑顔は癒される。そんな平和な風景を見てふと付き合って、結婚したばかりの自分を思い出す。

あの時は幸せだった。笑顔が絶えなかった。お互いがお互いを意識し、支え合って生きていたのに。

なんでこうなったんだろう。僕が怒らせたから?僕が彼女を彼女として見てなかったから?僕が君を好きでなくなったから?結婚して辛いと感じていたから?そんな思いが交錯し、少し気持ちが悪くなった。

口元を手で抑え、嗚咽を我慢していると小さな手が膝をさすっている。

「おじさん大丈夫?」三つ編みをした小さな女の子が近くにいた。

「ありがとう。少し気分が悪くなっただけだから。」

「よかった!」女の子は眩しい笑顔を見せて、その場から去っていった。

その年で男を介抱出来るなんて将来有望だな。

そんなことを考えていると時間が過ぎ、時計を見て、休憩時間が終わりそうであったため、その場から去ろうとすると、横断歩道前で手を振ってくれるのが見えた。女の子に手を振り返し、会社に戻ろうと歩いているとさっきの女の子が猫を追いかけ、道路に飛び出す。女の子の後ろでトラックがクラクションを鳴らしながら走ってくる。

「危ない!!」全力疾走で女の子のもとに駆け出し、女の子の背中を押した。女の子は轢かれずに済んだが、僕は轢かれた。

少しづつ体温がなくなってくるのがわかる、ジーンとした痛みが徐々に強くなっていくが、時が経つにつれ痛みを感じなくなってくる。これが死ぬっていうことなのか。

「大、、、夫ですか!?」「だ、、、丈、、で、か」聴覚も働かなくなってきた。

視界もぼやけ、自然に目が閉じた。もう一度開けようと思っても開けることができない。

そんな力も残ってない。最後に女性の悲鳴みたいなものを聞いて俺の感覚が全て消えたのがわかった。

わかった途端、僕は、真っ白な空間にいた。

そして僕自身の体もない。青く燃え盛った球体みたいになっている。いわば魂の状態だ。

こんな状態であるが、振り返ってみれば碌な人生じゃなかったな。もっと努力しとけばよかった。もっと金稼ぎたかった。やりたいことを貫いとけばよかった。欲しいものも買っとけばよかった。女性経験が嫁さんだけってやばいかな?もっと遊んどけばよかった。もし生まれ変われるのなら高スペック男子に生まれ変わりますように。なんだったら異世界転生でもいいから、勇者とか俺つえ〜系主人公にさせてください!それとハーレム系の気質も追加で!!もう一回こんなゴミクズな人生にならないようにタイムリープしてみてもいいかもな。

そんなこんなで振り返ってみるといろんな後悔と欲望が溢れ出てきた。溢れ出すのと同時に僕の体(球体)が萎んでいく。そして消えてしまった。


「、、、くん!」「、、、うくん!!」「望月翔くん!起きてください!」

「は、はい!!!」

気がつくと僕は、中学3年生の教室にいた。そして呼ばれて立っていた。

川谷千鶴(28)学校の聖母。校内の生徒、先生から絶大な人気を誇る。身長150センチ台であるがボン・キュ・ボンなその体からは年相応の色気が出ている。しかし先生の優しさや清楚さからその体のいやらしさは感じず、聖母と感じることが多いため、学校の聖母と呼ばれている。

「川谷先生!懐かしい!!元気ですか?ていうかなんでここにいるんですか?」

先生は不思議そうな顔で僕をみる。

「翔くん何寝ぼけてるんですか?ここは学校ですよ。大丈夫ですか?」先生は、僕の頭を撫でながら心配してくれた。

他の生徒からの視線が痛い。とりあえず座ろう。「すいません!取り乱しました。」

授業終了のチャイムがなった。

僕は急いで、トイレに向かい、鏡で自身の姿を確認する。

「中学生の僕だ。」

中学生の僕は、太っており、身長165㎝に対して78キロというデブ。しかし運動はできていたので動けるデブということで周りからいじられていた。

小学校からの友達もいたためボッチということはないが友人は少ない方だ。

髪型も変わっていない。どうなっているんだ。なぜ僕が中学生に!?しかも学校の雰囲気も周りの同級生もそのまんまじゃん。僕は、死んだんだよね。

頭の中がこんがらがっていたが、とりあえず帰宅することにした。

学校から家までの道中も変わっていない。周りの景色を見ながら帰っていると家に到着。

「ただいま」と恐る恐る玄関の扉を開けると「おかえり」と優しい声が聞こえた。

母親の声だ。声の聞こえた方に歩いていくとキッチンには母親が立っており、リビングでは、父さんが座っている。久々の光景を目の前にした僕は、思わず声に出してしまった。

「生きてる。」その言葉と同時に涙が溢れた。

その場で僕は泣き崩れてしまった。母は、「大丈夫?」と言って抱きしめてくれた。

その母の温もりを感じ、さらに涙が出てしまった。

久々の手料理、誰かがいる食卓。長きにわたる一人暮らしでは感じることができなくなっていた感覚と味。

一口一口大事に食べた。

その後は自室に行き、今回のことについて考える。

なぜ自分が中学生になって生きているのか。

思い返してみれば一つの仮説が思いつく。

あの白い部屋で僕が消える前に最後に願ったこと「もう一回こんなゴミクズな人生にならないようにタイムリープしてみてもいいかもな。」あの時のことが現実で起こったということか。

では、なぜ中学生なのか、それがいまいちわからない。

もし人生をやり直すなら最初から、それこそ赤ちゃんの頃じゃないのかと思っていたがそうじゃなかったということか。もしかして僕があんな人生になったターニングポイントが中学生の時だったのかなんてことも考えた。でももしそれが本当だったら。僕が僕自身を苦しめたあの人生が中学生の時がきっかけになっていたら、僕は本気で取り組まなければならない。

そうだ、魂の時の後悔と欲望を全部叶えるんだ。

神様からもらったこのチャンス、絶対に掴んでやる。今までの僕じゃない。僕はこの日をもって変わるんだ。

望月翔という人間の人生をリセットする。僕は僕の思いのままに生きてやる!

さあ、新しい人生の開幕だ。


初めまして。

Sir0(しろ)です。

初めて作品を書いてみました。

至らないところもあると思いますが、ご了承ください。

素人作品なのでどうか優しい目でご覧ください。

評価が良ければ、続きを書いていきたいです。

よろしくお願いします。

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