トライアングル・センス~人口島に怪物が現れたなら~前編
参考にしたのはNetflixのパニック映画。ニューヨークで大学卒業パーティーをしていた主人公達。その夜ニューヨークに怪物が出現。他の住民が逃げる中、住民が逃げる中主人公たちは仲間の彼女を助けるために怪物のいるニューヨークに残るという話。
この映画のストーリーを変えて、舞台は日本の東京近海にある人口島:近未来島。怪物が出現し主人公たちは他の住民が残る中脱出を図る。
朝倉皆人・・・第3区高等学校に通う2年生。危機が迫ると警戒音が聞こえ、危機の原因を目撃すると赤く染まって見える。
天ヶ崎瑠璃・・・第一区高等学校に通う2年生。危険な人物は黒く、助けてくる人は赤く見える
音無奏・・・第3区高等学校に通う1年生。危機が迫ると警戒音が聞こえる
音無葉月・・・第3区高等学校の教師。奏の姉
巻風胡桃・・・第二学区の研究施設で働く研究員。葉月の親友
母さんが病院のベッドで横になりながら話しかけてくる
「皆人、あなたは勘がいいわ。その感覚を信じて自分の後悔しない選択をしてね」
「うん」
ブルルルル
携帯のバイブ音で目を覚ます。懐かしい夢を見た。あれは母さんが死ぬ一か月前の約束だ。俺の名前は朝倉皆人、現在15歳の高校2年生。ここは東京湾に浮かぶ人工島通称『近未来島』。ここでは莫大な資金の元様々な研究がなされている。また最先端教育の実地モデルとして学校もたくさんある。
父は事故・母は病気で早い時期に無くなり、今は愛媛に住む母方の祖父に見守られながら近未来島の学校に一人暮らししながら通っている。
身支度を済ませ学校へ向かう。俺が通う第3区高等学校は徒歩20分で着く。さあ、今日も頑張ろう。
授業を受け昼休み、食堂で友達と一緒に唐揚げ定食を食べていると周りが騒ぎ始める
「皆人、これ本物だと思う?」
「ん?どれ?」
友達がSNSに流れている動画を見せてくれる。それはライブ配信で巨大な怪物がドームの中から這い出てくる姿があり、その周りには軍と小型の怪物が戦っている。
「あ!」
動画をとっている主のもとに小さな怪物が襲い掛かりライブは停止した。
ピピピピピピ
『全生徒は今すぐ自分の教室に戻ってください。12:40分より緊急放送を行います』
放送に従い教室に戻り緊急放送を聞くとやはりあの動画のことで現在怪物を軍が撃退中。近未来島は第一種警戒態勢になったのですぐに家に帰り荷物をまとめシェルターに向かうこと。第一種警戒態勢とは近未来島内にて何らかの災害が起きた時住民たちが非難する警報。
本来ならシェルターに向かうところだが俺の感覚が早くこの島から脱出しろと警報を鳴らしている。この感覚だが自身に危機が生じたときに頭の中で鳴り響く不思議な感覚で、この感覚を信じることで山崩れや交通事故を防いだ実績がある。
今回もこの感覚を信じシェルターに向かわず、近未来島脱出を考える。近未来島を脱出するなら方法は
・電車(海中ケーブル)
・5つある橋
の2つ。外と行き来できる電車は第4区画にありおそらく込んでいると思うから却下。なので港と直接つながる5つの橋を渡るしかない。どの橋を渡るかだけどここは一番遠いけど交通量が多い第5区の橋に向かおう。多分近い橋には人が集まっててなかなか進めないかもしれないし。
移動は自転車で行くとしていくつか足りないものがあるからコンビニに行こう。コンビニへの道中、なんでシェルターが危険なのか考えてみる。最初に危険だと思ったのは怪物が現れた動画。その動画を見た後この町が危険だと感覚が反応した。動画はライブ配信でアーカイブが残っていないので記憶をたどってみると理由が分かった。怪物が金属のドームから出てきたからだ。シェルターも同様またはもっと丈夫かもしれないがあんな怪物を防げるような構造にはなっていない可能性が高い。だから早くこの近未来島から出た方がいいと感覚が言ってるのだと。
コンビニに着くと中は無人、定員も逃げ出したのだろう。近未来島のコンビニは会計は自動化されているので問題なく買い物はできる。必要な物をかごに入れていると
「ちょっといいかしら?」
私の名前は天ヶ崎瑠璃、近未来島第1区高等学校に通っているわ。今日は買い物をするために第3学区に来ていたんだけどいきなり第一種警戒態勢が発令して周囲が騒がしくなったの。なぜ警報が発令したか調べてみるとどうやら第一区で巨大な怪物が現れたみたい。いくつかきな臭い情報も流れていたけどまさか本当だったなんて。いくつか写真も出回っていたけど怪物はビルほどの大きさと人ぐらいの大きさの子供もいるみたい。これはシェルターに避難していたらつぶされるのでは?危機的状況では自分の判断を信じることが我が家の家訓。なのですぐにこの近未来島から脱出するために考えを巡らせる。やっぱり移動手段がいるわね。それにいろんなものが足りないわ、近くのコンビニに行きましょう。
コンビニに入り、色々さがしていると学生服を着た男の子が目に映る。その瞬間、体に電流が走る。これって母さんが言っていた第六感ね。私たち天ヶ崎家は古くから続く名家で様々な企業を経営している世間でいう大富豪。この地位を維持し続けているのは各自の才能・努力も大いに含まれているけどもう一つ明確な理由があるの。それは直系の人間には危機に瀕した時、その危機を回避できる人間に出会うことができるという特殊な力。この時体に今みたいな電流が走るんだって。この時に出会った人間は生涯の友・又は伴侶になるらしいわ。
話しかけてきたのは天ヶ崎瑠璃さん、第1区高等学校に通う高校2年生。第1区ってことはお嬢様じゃん。で、天ヶ崎さんが話しかけてきた理由だけど
「話しかけた理由だけど、私近未来島から脱出したいの。協力してくれない?」
「何故俺なの?大人に頼めばいいじゃん?」
「第六感よ」
「え?」
「だから第六感。あなたとなら逃げれるって私の感覚が言ってるの。危ない時はこの感覚を信じてるのよ、わたし」
「アハハ、それは大切だ。いいよ、俺も脱出しようと思っていたから」
「信じてくれるの?」
「ああ、俺も感覚は大事にしてるから」
「皆人先輩、ここにいた」
「奏と音無先生」
天ヶ崎と今後の予定を建てようとすると同じ学校の後輩音無奏と出会う。その後ろには奏の姉であり第3区高等学校の教師である音無葉月先生もいる。奏とは一緒に図書委員として活動しており仲良くなった。
「先輩、隣の人誰ですか?」
奏が普段より低い声で天ヶ崎を見る。
「彼女は天ヶ崎瑠璃さん、俺達はこれからシェルターに行かず近未来島を脱出しようと思ってるんだ」
「え?皆人先輩もですか?私たちもです。それで先輩も誘おうと連絡したんですよ」
携帯を確認してみると電話・ラインにメッセージが来ていた。
「ごめんごめん、全然気づかなかった。天ヶ崎もいるけどいい?」
「いいよね?お姉ちゃん?」
「いいですよ。こっちもあと一人増えるので」
先生たちは俺と連絡を取り俺と友達を拾って脱出する予定だったようだ。自転車で進むより自動車の方が速いからこっちも願ったり叶ったりだ。コンビニで買い物を済ませた後、音無先生の車に乗せてもらう。音無先生の車は5人乗りのワゴンタイプで奏は助手席に、俺と天ヶ崎は後部座席に乗る。
「一度自宅に戻って服や医薬品など必要な物をリュックに詰めようと考えてるんだけど皆人君も一度自宅に寄る?」
「お願いします。俺も詰め終わったら玄関で待ってます」
「名前は瑠璃って呼んでもらっていいですよ。私も皆人君、奏ちゃん、葉月さんって呼びます」
瑠璃は奏たちについていくので、俺だけ自宅マンションの前でおろしてもらう。自宅に戻ると私服に着替え急いでリュックに衣服など必要な物を入れていく。移動手段として車が使えるのでもう一つバッグに日持ちする食料やインスタント食品・未開封のペットボトル飲料を詰め込みマンションの玄関に行く。
他のマンションの住人たちがシェルターに向かっている中、近未来島の地図を広げる。そしてSNSをチェックしながら現在の怪物の発見地域を色付けしていく。現在第1区と2区の境界まで進んでいるらしい。軍も警察も止められてないみたい。
プルル
いろいろ調べていると携帯に連絡が入る。相手はじいちゃんだ。
「もしもし、じいちゃん?」
「皆人、大丈夫か?近未来島に警報が出たって聞いたけど?」
「うん。今勘に従って近未来島から出ようと思ってるところ」
「そうか。脱出したら帰ってくるのか?」
「うん」
「気をつけてくるんだぞ」
電話を切ってまた情報を集めていると葉月さんの車が目の前で止まり
「お待たせ、先輩」
後部座席の扉が開き奏と瑠璃が出迎えてくれる。奏も俺と同じく私服に着替えている。荷物を座席の後ろに置き乗り込む。
「じゃあ友達の胡桃を迎えに行くわね」
葉月さんの友達の胡桃さんは3区と4区の境界間際に家があるので向かう。
「先輩は第5区の大橋を目指してたんですよね?どうしてですか?第2・3区の端の方が近いですよね?」
「第5区の方が橋が大きいから渋滞しないと思ったんだ。それにもし怪物の侵攻を止められなかったら第2・3区の橋もすぐに封鎖されるんじゃないかと思って。これ見て」
さっきまとめた地図を見せる。瑠璃ものぞいて来たので二人に説明する。
「これはSNSで調べた怪物の大まかな発見範囲。今は第1区と2区の境界まで来ているみたい」
「軍も警察も止めれなかったの?」
「そうみたい」
「第2区に到達してるみたいよ」
瑠璃が携帯の画面を見せてくれ、その画面には第2区の端の工場の鉄柵を切り裂いている怪物の姿が。これは急いだほうがいいかも。
胡桃さんを迎えに行く道中先ほどより交差する軍や警察車両の数が多くなっていく。
「警察や軍の車両が多くなってきたね」
「はい。それだけ大変なのかもしれません」
「胡桃がいたわ」
先の道路の前にキャリーバッグを引いた女性が立ってこっちに手を振っている。この女性が胡桃さん。胡桃さんはキャリーバッグを後部座席の後ろに入れると助手席に座る。
「迎えに来てくれてありがとう、葉月。久しぶり、奏ちゃん」
「胡桃さん、お久しぶりです」
「で、この子たちは?」
「男の子が朝倉快人君、女の子が天ヶ崎瑠璃ちゃんよ。一緒に避難することにしたの」
「初めまして、巻風胡桃よ。第2区で感覚の研究をしているの。今日は非番だったころにこの事件。急いで葉月に連絡を取ったってわけ。で、葉月、これからどうするの?」
「第5区の橋を渡って脱出する予定よ。皆人君が作った地図を見てると他の橋は渡れなさそうだから」
「地図?」
「これです」
俺が地図を胡桃さんに渡すと、胡桃さんはジッと地図を見ると驚いた顔をこっちに向ける。
「えっと快人君って呼んでいい?」
「はい」
「これ快人君が作ったの?」
「最初は俺だけで、瑠璃たちと合流してからは3人でSNS関連を見て作ってます」
「すごくいい地図ね。確かにこれなら第5区を目指したほうがいいわね」
葉月さんの車は近未来島の全域をつなぐ高速道路に乗り込み第5区の方へ向かう。高速道路だが第1・2区に向かう路線は通行禁止で軍・警察専用になっており、第4・5区へ向かう路線はほどほどの込み具合で進んでいる。
「渋滞じゃなくてよかったですね」
「これなら1時間ぐらいで大橋まで着くね」
高速道路を走っていると
「お姉ちゃん!この高速道路の方から嫌な臭いがする」
「わかったわ。皆、一般道へ降りるわね」
奏の指示で葉月さんが高速を降りて、河川敷を走る。
「葉月、二人には知らせてないのね?」
「ええ。でも教えといたほうがいいわね」
「奏ちゃんにはね、特殊な第六感があるの。危機的場所に近づいたら嫌な臭いがするっていうのがね」
「学校でもね、奏が嫌な臭いがするっていったから近未来島から脱出しようと思ったのよ。突然言われても混乱すると思うけど、私たちはこの感覚を信じてるの」
「わかります。俺も似たような感覚を持ってますから」
「実は私もです」
「「「え?」」」
今度は奏たち三人が驚く番。瑠璃の発言には俺もおどろいているけど。
「どういう能力なの?いつから使えるの?家族全員持ってるの?」
胡桃さんが助手席から乗り出し興味津々に聞いてくる。え?さっきとテンションが違う。
「胡桃!おちついて」
「あ!ごめん、二人とも。実は私の研究テーマがあなた達の様な特殊な第六感なの。小さい頃から奏の力については目にしていて何か解明できないかと思って考え出したのが私の始まりなのよ」
「いいですよ。専門家に相談したかったんですけど信じてもらえないと思っていたので。俺の能力ですけど小さい頃から使えて家族では俺だけ。俺の命が危険空間に近づいたら警戒音が聞こえて、その危険な原因が視界に入ると赤く光ります。で、さっきから川が赤く染まってるんで離れたほうがいいです」
「わかったわ。もっとここから離れながら進むわね」
俺の話を信じてくれた葉月さんは河川敷から更に離れる。
「私の力ですが一族の直系で子供のころから使えます。内容ですが」
「あ、ちょっとまって」
瑠璃が自分の事を話そうとすると葉月さんが止める。道路の先におばあさんが倒れており、女の人がおばあさんを、男の人がこちらに止まってほしいと合図を出している。葉月さんが止まるためにスピードを落とそうとすると
「葉月さん、そのまま走ってください!」
「え?」
「信じてください」
瑠璃が焦ってそのまま行くように伝える。葉月さんは瑠璃の様子の変化に驚いていたが、瑠璃の指示に従いおばあさんたちの横を通り過ぎる。
「一体どういう事?」
「私の第六感です。自分に危害を加える人物は黒、助けてくれる人は赤く見えるんです。さっきの男・女の人は真っ黒でした」
「信じていいと思います。さっきちらっとおばあさんが見えましたけど背中にナイフが刺さっていました。車の中にも胸にナイフが刺さったおじいさんがいました」
「あの一瞬で見えたの?」
「動体視力はいいんだ」
「ちっ。まさか無視するなんて」
「次を待ちましょう。まだ時間はあるわ」
瑠璃の感覚通り、この男女はおじいさん・おばあさんの車に乗り込みにい下ていた。しかしおじいさんの抵抗にあい、二人とも殺害。その時車が故障してあの場所で他の車が来ないか待っていた。止まってくれるようにおばあさんの死体を看病しているように偽装した。
河川敷から離れ一般道で大橋に向かっていると遠くに高速道路のトンネルが見える。
「あれ?」
「どうしたの?皆人君?」
「あのトンネルが赤く見える」
「まだ警戒音は聞こえるんだっけ?」
「だいぶ小さくなったけど聞こえる。でも高速道路と川どっちが原因かはわからない」
多分あのトンネルが奏の危険臭の原因のはずだけどどうなるんだ?
ドーン
突然大きな爆発音が聞こえる。後ろを向くと煙が空へと昇っている。
ガシャ―ン
ドカーン
今度は高速道路の方で爆発音が聞こえる。一体どういう事?
~高速道路のとある男~
俺は今近未来島から脱出するために最寄りの第4区の橋を目指している。高速道路に乗りトンネルを通る。このトンネルを抜ければもうすぐだ。しかし突然トンネル内の電気が落ちて真っ暗になり慌てて急ブレーキを踏む。
ドーン
バフ
いきなり車全体に衝撃を受けエアバッグが発動。うう、額から血を流し頭がクラクラする。扉を開け外に出るとそこら中に止まってる車のライトから地獄が映し出される。俺の車を含め大半の車がトンネルの壁や玉突き事故で大破、人もたくさん倒れている。
もう車は使えないので携帯の光を頼りにトンネルを進んでいく。でもなんでトンネル内のライトが消えたんだ?高速道路の電源は直接発電所から引いてきているから停電にはならないはずなんだが。
「え?」
トンネルの出口に向かったのだが、そこには壁しかなかった。そういえばこのトンネルの扉は電気制御だった。
「さっきの爆発は第2区の発電施設で起きたみたい」
胡桃さんがパソコンを触りながら教えてくれる。
「第2区の発電施設は信号機や料金所・高速道路の管理関係の電力を全てになっていたから、これから道路は無法地帯になるわよ。なるべく見通しの良い道を走ったほうがいいわよ、葉月?」
「わかったわ」
「発電施設って怪物が原因ですか?」
「そうみたいね。ほら」
胡桃さんのパソコン画面には発電施設を襲う怪物たちの姿が移ってる。
「この画像って」
「ちょっと周辺の監視カメラをハッキングしたの。怪物はすでに第2区の中央まで来てるみたい。それに警報が第2種まで引き上がったみたい。シェルターが封鎖されて、通信制限がかかって外部との連絡が取れなくなってるわね」
携帯を確認してみると電波が遮断されてる。この状態だと近未来島内のローカルネットワークしか使えない。あれ?でも
「なんで胡桃さんのパソコンは電波が遮断されていないんですか?」
そう、胡桃さんのパソコンは普通に電波が通ってる。
「私のは特別製でね。衛星電波から電波を拾ってるから大丈夫なのよ」
一般道を通り目的の第5区の大橋にたどり着く。軍や警察が大橋の前で検問所を設けている。
「そこまで混んではないみたいね」
「これならすぐに通れそう」
検問所に近づくと警官が近付いてきて
「市民カード提示してくれませんか?」
葉月さんが全員分を市民カードを見せる。
「ありがとうございます。通っていただいて大丈夫ですよ」
そして俺達は近未来島から抜け出した。