異世界 孤児院 侵略 結界
登場人物
シュン・・・主人公。帝国の孤児院出身
ガリア・・・孤児院院長
ルミア・・・元帝国第一王女
リリ・・・元第一王妃
マリア・・・魔国第一王女
ここはガルス帝国。俺の名前はシュン、17歳の冒険者だ。今日はある目的のために故郷の帝国に戻っている。向かう場所は物心ついてからずっと暮らしてきた孤児院。
「あ、兄ちゃん」
「本当だ」
孤児院の前で遊んでいた子供たちが群がってくる。
「みんな、3カ月ぶり。元気だった?」
体に張り付いてくる子供たちの対応をしながら孤児院に入る。
「あら、シュン帰ってきたの?お帰り」
「シュン君、お帰りなさい」
「ただいま、ガリアさん、リリさん」
出迎えてくれたのは院長のガリアと元王族のリリさん。ガルス帝国は5年前先王でるバルスが死去し、王位継承権1位の王弟であるダルイが王位を引き継いだ。バルスには妻が3人、子供が3人いて、彼が死ぬ5日前にダルイに王位を託すとともに妻・子供たちに以下の選択肢を与えた。
・(ダルイと相談して)ダルイの新しい后として王族に残る。
・準王族 (王位継承権を破棄した元王族。特殊な権限をいくつか持っている)になる
リリとその娘であるルミアは2つ目の選択肢を、それ以外の王妃と子供はダルイの妻・子供となり王位継承権を維持した。先王が史書した後リリとルミア・メイドであるシズクは援助していた孤児院に移り住み暮らしている。
「ルミアとシズクは?」
「買い物に行ってもらってるわ」
「そうなんだ。最近の物価どう?」
「3倍ぐらいに上がってるわね」
新王となったダルイだが魔族を毛嫌いしており隣国の魔国を敵視している。冠位後、魔国にあからさまな経済攻撃を始め、最近では魔国と戦争を行うため準備を始めているらしい。そのため帝都だけでなく周辺の街・村から税金や人材を集めており物価も上がっている。もちろん先王時代の側近がダルイを止めようとしていたが様々な理由で辺境に追い立てられ、ダルイのまわりには従順な貴族しか残らなかった。孤児院の運営費もすでに切られているが、先王であるバルスがリリ・ルミアが生きている間は苦労しない程度のお金(たとえダルイでも接収することはできない)を持っているのでどうにか生活できている。
「まだ部屋って空いてる?」
「ここはあなたの帰ってくる場所よ。もちろんいつでも泊まれるように維持しているわ」
「ありがとう。あ、食料置いていくね。あと仕事も一段落したから当分はいるね」
台所にアイテムボックスから肉や野菜などの食材を置くと2階の自分の部屋に上がる。目的を執行するための時間はまだあるから今日はゆっくりしよう。しばし休憩していると扉がコンコンと叩かれる。
「はい」
「私よ、ルミア」
「ぞうぞ」
扉から入ってきたのはリリさんの娘であるルミアと元王城のメイドであるシズク。顔色も悪くないし、元気にやっているみたいだ。
「久しぶりね、シュウ」
「二人とも久しぶり。元気みたいだね」
「ええ。今回は長くいるの?」
「うん、今回のクエストは大変だった。当分はゆっくりするよ。最近物騒だし」
その日は俺の持って来た食材を使って豪華な食事を作っておかえりなさい会を開いてくれた。翌日ベッドで目を覚ますと両脇に男の子と女の子が寝ていた。昨夜もぐりこんだみたい。2人を起こし一階におりるとルミア達が朝食の準備をしている。
「おはよう」
「おはよう。カイとレンも一緒なのね」
「昨夜ベッドにもぐりこんできたみたい」
孤児院の手伝いをしながら数日過ごしていたある深夜
「!来たみたい」
帝都の外に設置していた感知魔法に反応があった。さあ準備を始めよう。
帝都外の森の中
「マリア殿下、軍の配置終わりました」
「他の重要施設への軍の配備も終了です」
「帝都内部への侵入ルートも確保終了」
隠蔽魔法で姿を隠し多数の魔族が帝都の周りの森で待機しています。彼らは魔国ガオルンの軍で、度重なる帝国のいやがらせから先日の王族(王位継承権が低い)への暗殺未遂をきっかけに帝国を支配しようと進軍。この進軍は帝国の重要拠点のあるすべての街へ同時に進行するために隠れている。
今回の侵攻の総指揮官は魔国第一王女”殺戮の死神”マリア、その下に各将軍が配属されている。マリアは全軍の配置を確認すると背中の赤い翼を展開し隠蔽魔法を解除。
「目標はこれらの王族、彼らはのちに処刑するので生かして捕らえるように。無抵抗な者は殺すな。向かってくる者の生殺与奪については任せる。連絡は怠るな。では全員突撃」
帝国民が寝静まる深夜魔国の帝国への侵攻が始まる。
俺は孤児院の庭に出て魔力を練り始める。そして
ドカーン
近くの城塞の破壊と同時に孤児院の周りに結界を張る。この結界は特殊なアイテムと共に大量の魔力を消費することで、俺以外の内外へのあらゆる侵入・魔法を無効化する。更に内部からは結界外の風景・音は聞こえない。俺には見えるけどね。結界の外では魔族たちが帝都内に侵入し家の中に押入り国民を外に出している。時折気を失っている人もいる。探知魔法内には帝都の四方から魔族たちが侵入し一気に支配下に置いている。
もちろん城塞に近い孤児院にも侵入しようとしているが俺の結界で全く入れない。幾度かの攻撃で破壊できないと判断した魔族たちは何人か監視役を残し別の場所に向かっていく。
魔族侵入から数時間後、魔力感知により魔族は場内王の間まで侵入し孤児院以外の占領を終了させた。孤児院の面々も全員起き事情を説明しこの結界内で背渇してもらう。ただこのまま結界内で居続けてもいずれ食料が尽きる・・・なんてことはなく孤児院内に別の国に繋がっているゲート(時空間魔法で繋げた門)を用意しているので問題なし。
「マリア殿下、こちらです」
こちらに向け魔族の集団がやってくる。中心にいるのは一際魔力が高く、装備も豪勢な女性だ。彼女が今回の指揮官かな。というか彼女は・・。となると出たほうがいいな。
彼女たちがある程度近づいたタイミングで結界から出る。するとすごいスピードで両脇から襲ってくる魔族軍の獣人二人。俺は二人の攻撃を弾き首を手でつかむと地面に思いっきりたたきつける。
その様子を見て他の魔族は警戒したまま動かない。その中指揮官の女性は近づいてくる。おれは地面でじたばたしている2人の獣人を魔族軍に投げ指揮官の女性の方歩いていく。
「久しぶり、ルコア。いや魔族軍の司令官殿っていった方がいいかな?」
「まさかこの国にいたなんてね、シュン。本当の私の名前はマリア、魔国の第一王女よ」
彼女とは冒険者として各地を巡っている時に一時期一緒にもう一人加えて3人で組んでいた。その時の名前がルコア。魔族とは気づいていたけどまさか魔国の姫だとわね。
「そうなんだ。なら魔国第1王女マリア殿、この孤児院の扱いについては帝国の制圧がすべて終わった後に話し合いましょう。それまでは誰も侵入は許さないから」
彼女達に伝えたいことを伝えると背中を向けて孤児院に戻ろうとする。すると先ほどまでおびえて警戒していた魔族軍が襲い掛かってこようと動き出す。その瞬間
「動くな」
瞬時に魔力で黒と白の蔓を生み出し拘束する。。その拘束を解くとそのまま孤児院に戻る。これで牽制は十分だろう。
それから1カ月後、帝国及びその領土は魔国の属国として取り込まれほとんどの王族と貴族は処刑され、新しく統治された。そんなある日結界を張っている孤児院に向けてマリア含め数名が近付いてくる。孤児院だがあの遭遇から数人の監視員を置くだけで放置。時折マリアとキリハ(一緒に冒険者活動をしていた)が来て結界内に入れいろいろ話をしていた。俺達の方もたまに子供達をゲートで外に連れ出しながら問題なく過ごしていた。
彼女達が来たので結界外に出る。そこにはマリアとキリハとよく見る護衛の魔族の他に異常な魔力反応をもつ妙齢の男性と女性がいた。目が合うとその二人から異様な魔力が発せられる。俺も対抗するように魔力を発し近づいていく。魔力の放出はすぐにやみ、男性が手を出し握手を求める。
「初めまして我が名はゼン・グリフ・ウィリス。魔国ウィルスの国王だ。よろしく、シュン君」
「よろしくお願いします、シュンです」
「初めまして、シュン君。私はミューズ。グリフ・ウィリス。ゼンの妻でマリアの母よ。よろしくね」
二人と握手をした後、ゼン・ミューズ・マリア・キリハを孤児院に向かい入れる。
テーブルを挟み魔国側にはゼン・ミューズ・マリア・キリハ、孤児院側には俺・ガリア・ルミア・リリ。さあ、今後の孤児院の未来を話し合おう。
「孤児院側の要求はひとつ
・権利について魔国側の孤児院と同様(敗戦国として無理な要求をしない
・孤児院にいるメンバーに関して声明の保証及び正当な理由ならどんな身分の相手でも反撃の許可
です。この要求を受けてくれるなら魔国側の要求もおかしくなければ受け入れ結界も解除します」
「魔国側はその要求を受け入れよう。こちらからはシュン君君が敵対しないなら問題はない」
「わかりました。家族が理不尽に傷つけなければ敵対はしません」
「魔国側にも馬鹿な者もいる。だから一目見て我ら王族が守護しているとわかるようにマリアとキリハを住ませてあげてほしい」
「わかりました」
こうして孤児院は無事魔国側の一員として迎えられた。
これからの展開をパッと思いつくのが
・元帝国民の反発・魔国民の差別による孤児院の襲撃
・ルミア、シズク、マリア、キリハとシュンの恋模様
・シュンの強さの秘密
などなど