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アマテン短編集  作者: アマテン
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VRMMO 精霊弓使い

・このゲームには1次職、2次職、3次職のジョブ設定がある。さらに習得条件が厳しく珍しいジョブをユニーク、さらにその上をシークレットジョブと呼ばれている。発売から1年、様々なジョブが発見されたが弓系のジョブのユニークは一部解放されていなかった。その第一候補としてゲーム内主にエルフやフェアリーなどが就いている[精霊弓使い]が挙げられている。この物語は開始当初から探していた精霊弓使いのシークレット職に就いたプレイヤーの話である。




 樹海エリア『グローウスの暗き原林』に大量の風が吹き荒れ木々が倒されていく。その中心には黒いオーラを発している緑の服を着た女性が空に浮かびながら周囲に暴風を巻き起こしている。このモンスターは『闇に染まりし風の大精霊』。出現条件はこのエリアに出てくる『暗き風の精霊』のみを連続で100体倒すこと。

ただあまり『闇に染まりし風の大精霊』を倒すプレイヤーは少ない。理由としては2つ。一つ目は出現させる難易度だ。このエリアには様々なモンスターの他に2種類の精霊のモンスター『いたずら好きな風の精霊』と『暗き風の精霊』が現れる。出現率は『いたずら好きな風の精霊』の方が9:1ぐらいの割合で高く、アクティブモンスターである『いたずら好きな風の精霊』はこちらを見つけたら攻撃してくるかつ『暗き風の精霊』の戦闘中よく乱入してくるので厄介だ。

2つ目は似たようなモンスターと落とす素材だ。名前は『吹き荒れる風の大精霊』、出現条件は『いたずら好きな風の精霊』を100体倒すこと。こちらの条件は出現率の高さや連続で倒す必要のないことから非常に発生しやすい。さらにそれぞれのモンスターが落とす素材だが『吹き荒れる風の大精霊』は風耐性や風のスキルの威力を上げる素材を落とし、『闇に染まりし風の大精霊』は風耐性と闇耐性が上がる素材を落とす。しかし『吹き荒れる風の大精霊』よりは風耐性の値が半分ぐらい低い。


暴れまわる『闇に染まりし風の大精霊』の頭上からたくさんの岩が突然振り落とされる。『闇に染まりし風の大精霊』は岩が当たる前に風ですべて吹き飛ばすが、今度は先ほど落ちてきた岩より10倍はでかい大岩が落ちてくる。『闇に染まりし風の大精霊』は詠唱を始め強力な風を生み出しどうにか吹き飛ばす。しかし突然の大技を使ったので動きが鈍る。そこへ


「⦅シャープネスショット⦆」


木の上から放たれた一本の矢が『闇に染まりし風の大精霊』の胸の部分に直撃し『闇に染まりし風の大精霊』は消滅した。



「ふう、やっと終わった」


僕の名前は一矢、読み方はかずやね。このゲーム『オリジン・ファンタズマ・オンライン』略して『OFO』には発売当初から始めている一種の古参かな。職業はメインが2次職〖マジックアーチャー〗、サブも同じく2次職『忍者』、どちらも職業レベルはMaxだから3次職になれるんだけど、どうしても『精霊弓使い』になりたいから上げてないんだ。

そんな僕が何でこのエリアにいるかというとさっきの『闇に染まりし風の大精霊』をたおすため。最後の攻撃は我ながらうまくいったんだ。まず『闇に染まりし風の大精霊』は遠距離攻撃をはじくスキルがあるからそれを突破しなくてはならない。個のスキルの弱点は石や岩などの土属性のアイテムは弾かれないということ。だから頭上から大量の岩をバラ撒いた。ただ『闇に染まりし風の大精霊』が迎撃してくるのはお見通し、僕の目的は別にある。さらに頭上にクナイを投げて〖忍者〗のスキル⦅変化⦆を解除する。このスキルはアイテムの見た目を別のアイテムに変えるスキルで今回僕は大岩をクナイに変化さしていた。ただしこのスキルも万能ではなく元のアイテムの重量はそのまま、名前も大岩のままだ。

しかし今回は突然大岩が現れるインパクトが欲しかった。その大岩を見た『闇に染まりし風の大精霊』は予想通り大量の風を発生させ大岩を砕いた。だがその攻撃は『闇に染まりし風の大精霊』にも負担が大きく、疲労し遠距離攻撃をはじくスキルは機能しなくなった。そこへ薬品や装備、スキルで物理攻撃力、魔法攻撃力を増し、〖マジックアーチャー〗のスキル⦅エンチャント:ロックアロー⦆で矢に土属性を付与、さらに疲労状態の敵にスキルの威力を上げる強化スキル⦅弱体特攻⦆、そして最後に急所に当てると確定クリティカルを与える⦅シャープネスショット⦆を弱点である胸に当て『闇に染まりし風の大精霊』は消滅した。

それと同時に右手につけていた腕輪の宝石に緑の光が一瞬宿る。これは最近手に入れたキーアイテムだ。名前は・・・・。


俺は『闇に染まりし風の大精霊』を倒した後、無限転移スクロールで『OFO』の世界にいくつかある国の一つジョルネ国首都ジョルネに向かった。

ジョルネは西洋風の城・ジョルネ城を中心とした城下町でたくさんのNPC、プレイヤーが街を盛り上げている。この町に転移してきた俺はとあるギルドのホームに向かった。生産系ギルド『どこでもバザール』はいくつかの生産系ギルドが合併してできたギルド人数8000人を超える(ちなみにOFOのプレイ人数は30万人強)超大型ギルドで様々な街に支部を持つ。扱う商品は武器、防具、薬品から様々なアイテムを扱っている。

俺はギルドホームに入ると早速お目当ての職人のいるフロアまで向かう。先ほど連絡は済ませているから大丈夫だろう。その道中


「あ、『永遠の2次職』だ」

「今日もあるかわからない〖精霊弓使い」を探してるんだろう」

「意地を張らずにさっさと〖マジックスナイパー」になればいいのに」


〖マジックスナイパー〗は〖マジックアーチャー〗から進化できる3次職で〖マジックアーチャー〗の時には全属性の魔法の矢が使えたが〖マジックスナイパー〗では2種類(選択可)に減るがその分強力なスキルに生まれ変わる。

ただ俺の場合すぐに〖マジックスナイパー〗に転職できるが〖精霊弓使い〗になるために2次職から変わっていないため周りからは『永遠の2次職』と呼ばれている。


俺はギルドホームを進みとある部屋の前に着くと扉をたたく。

コンコン

「一矢だけど|黒鉄≪くろがね≫いる?」

「一矢か、入ってくれ」


部屋に入ると先ほどまで鍛冶を行っていたのか熱気がムワッと降りかかる。部屋の中脳には作業着である作務衣を着込んだおじさんがいる。彼の名は黒鉄、鍛冶、防具をメインにする生産職プレイヤーの一人で、俺もよく世話になっている。


「防具出来てる?」

「ああ、できてるぞ。革製の装備で地属性耐性を詰め込んである」


俺は黒鉄が作ってくれた装備(大地の加護の帽子、大地の加護のマント、大地の加護のズボン、大地の加護の靴)の状態を確認したあと、先ほどまで使っていた『世界樹の老魔法弓』を渡す。


「あとこの弓の強化の変更をお願い。今度は土属性強化(大)を風属性強化(大)に変えて」

「今度は風属性か。まえからちょくちょく属性特化の効果を変えているが何してるんだ?」

「ちょっとしたクエストで厄介な敵がいてね。それの対策で属性スキルの威力を上げる必要があるんだ」

「まあ、詳しくは聞かないけど。弓の方は1日くれたら強化はできるぞ」

「わかった。じゃあ、また明日来るわ」

「そういえば一矢は3日後のレイドイベントには参加するのか?」

「ああ、エリア解放のイベント?こっちのイベントが終われば参加するかな」


黒鉄の工房から出て、ギルド内でいくつかの消耗品を購入しているとフレンドコールが届く。相手は弥生からで相談したいことがあるそうだ。


弥生は戦闘系ギルド『スカーレット』所属している第2陣プレイヤーで、俺と同じ〖精霊弓使い〗を目指しており、時折情報交換や一緒にパーティーを組んでいる。OFOには現在4段階の参加時期がある。最初から参加している第一陣、半年後の第2陣、1年後の第3陣、そして最近参加した第4陣だ。


俺が普段活動の拠点としている町アーガルのプレイヤーホームで待っていると


「こんにちは、先輩」


弥生が入ってきた。ちなみにプレイヤーホームには様々な制限を付けることができ、その中には入室制限もついている。オレの場合はフレンドのみ敷地内屋内侵入可にしている。

 

「いらっしゃい、弥生。今日はどうしたんだ?」

「それが・・・」





時は進み、新しいフィールドを解放するためのレイドバトルが始める。このレイドバトルにはいくつかの関連クエスト(特定のモンスターを討伐・アイテムを納品など)をクリアすることで発生した。それも数も尋常ではなくすべてクリアするには1カ月必要とした。

今回のレイドボスは『ヤマタノオロチ』、RPGによくいる八つの頭を持つ蛇の化け物だ。設定としてはヤマタノオロチの力により新フィールドは隠されてしまった。しかしプレイヤー達の力によりヤマタノオロチがいるフィールドに行くことができるようになった。


 さて戦闘が始まった。最初、攻撃の威力は高いが動きが遅く、ただHPが高いだけのボスだった。しかしある程度ダメージを与えるとHP形態変化が起こった。その変化により8つの首にはそれぞれバリアがついた。これらのバリアを破らない限り本体にダメージを与えられない。

 このバリアだがいくつか段階があり、一段階目は物理or魔法攻撃、2段階目は各属性、そして3段階目は各職業でしかダメージを与えられない。


「やばい、全然ダメージを与えらえない」

「このままだと全滅だぞ。またあのクエスト受けないといけないのか?」


 プレイヤー達は絶望していた。なぜなら最後の首のバリアが破られないからだ。必要な職業は〖精霊弓使い〗。現状誰も転職に成功していない職業。つまりこのレイドボスはクリア不能ということ。ヤマタノオロチは一定時間ごとに最大HP・MPを1割低下させるスキルを9回使用。最大HP・MPを削るスキルなので回復手段もなく、あと一回で全滅。どうしようもなく最後の時を待っていると


「⦅風精霊のシルフ・アロー⦆」

「⦅風精霊の流星(シルフ・ミ―ティア⦆」


 大きさの違う緑色の矢がヤマタノオロチの首に当たりバリアにひびが入る。攻撃の方向を見ると後方に大きな何かに乗った2人のプレイヤーがいた。そのプレイヤーは前戦まで近づくと乗ってきた鹿からおり


「ありがとう」

 

プレイヤーがお礼を言うとシカは走り去っていく。


「弥生、さっさとバリア破壊するよ」

「はい」


 参戦したのは一矢と弥生。このレイドイベントでは途中参加可能。ただしボス自体に一定以上のダメージを与えないと素材や報酬はもらえない。二人が弓を構え弦を引くと二人の側に赤い小さな人型が現れる。


「⦅火精霊の矢(イグニス・アロー⦆」

「⦅火精霊の火花(イグニス・ブレイズ⦆」


赤い矢が現れ再びヤマタノオロチのバリアに当たりヒビを拡大させていく。それから二人はヤマタノオロチの反撃をかわしながらバリアを粉砕。ヤマタノオロチは最後の力でパワーアップしましたが、バリアが解除され全員の攻撃が通るようになったため、ステータスが万全な二人をカバーしながら無事クリア。

 全員喜んでいるがチラチラと一矢たちの方を見ている。


「一矢・弥生、それって〖精霊弓使い〗だよな。どうやって転職したか教えてもらっていいか?」


 弥生が配属しているギルド:スカーレットのギルマス:ガガが話を聞いてくる。


「イイですよ。〖精霊弓使い〗の転職条件は瘴気・邪気を吸い取った火・水・風・土・雷・闇・光の7精霊を弓の攻撃・弓のスキル・アイテムだけで倒すことでアイテムをもらえて、そのアイテムをエルフの国のある場所で使うことで転職できます」

「一矢も〖精霊弓使い〗なのか?弥生と違う気がするんだが?」

「俺のは〖精霊弓使い〗系のユニーク職の一つ〖全能の精霊弓使い〗。ちなみに転職方法は教えませんよ」


 こうしてこの世界にプレイヤーの〖精霊弓使い〗が出現した


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