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呪いの魔女はわりと毎日忙しい  作者: 護郷いな
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森野春子、異世界行きを宣言する。

意図しなくてもそこで起こった現象は全て自身に起因するものだった...と。



『神様方。ご迷惑お掛けしてすみませんでした。』

それが分かった春子は居住まいを正すと改めて深く頭を下げた。


沖くんが無事なことを知ることもできた。

そしてこんな姿ではあるが、眠ったまま消滅もあり得たのに最期の最期で〝神〟という存在にも会えた。

うん。思い残す事はナイ! 

そう春子が気持ちにけりをつけ満足していると____。


「森野春子さん。」


突然のフルネーム呼びに春子は俯いていた顔を上げる。

するとそこで真剣な表情をした創造の神と目が合った。


「あなたに謝罪をさせるために話をしたわけではないの。

実は此処からが本題で、提案とお願いがあるのだけれど聞いてくれるかしら?」

言い方は丁寧だがその創造の神が見せる笑顔に有無を言わさぬ()を感じた春子は〝ゴクリ〟と唾をのむ。



そして創造の神は一度ティーカップに口をつけ、ゆっくりとした所作でソーサーに戻すと落ち着いた口調で話を始める。

「結局器の無い今のままでは遅かれ早かれ消滅は避けられない。そこで提案というのがあなたには新たに構築する器を得て私達の管理する世界のひとつに降りてほしいの。

そうすればその生涯を終えた時、改めて輪廻の門に行き魂の循環にも乗れるわ。」


『え。』

(新たな器で世界に降り...る?)

すると春子の思考を読んだ創造の神が〝コクン〟と頷く。


『それって...だから...つまり...このまま消滅を待たずに済む?』

〝コクン。〟


『魂が繋がって行く?』

〝コクン。〟


『長生きして孫に囲まれたおばあさんにもなれる?』

〝コ、コクン??〟

「孫云々は知らん。創造の神も適当に頷くな。大体なんでそんな長生きにこだわる。」

時渡りの神が呆れ顔でそう言うと春子は自身の境遇を簡潔に話す。

『私の家系どうやら短命な一族みたいで。両親も祖父母も私が大学入る頃にはみんな亡くなって兄妹もいなかったし何とか私だけでも頑張って長生きしようと思ってたんです。まぁ実際そうは言っても死んでしまったんですけど...。』

すると突然創造の神に手を取られ〝ギュッ〟と両手を包み込まれた春子は目を丸くする。

「大丈夫よ!新しい器ではおそらく何事もなければ十分長生きできるわ!」

若干前のめり気味になって話す創造の神に春子は仰け反ったもののすぐに姿勢を正し再度頭を下げる。


『創造の神様。ありがとうございます。

でも、どうしてそこまでして頂けるのですか?神様には消滅を見ているだけの選択もあったのでは?』

春子が不思議に思ってそう尋ねると何やら精霊の神と創造の神は互いに顔を見合わせ一つ頷いてから口を開く。

「貴方は極めて特異な核を持った存在なのです。通常貴方のいた地球(せかい)で精霊が人間に直接干渉することはありません。しかし今回あなたの言霊に精霊が反応した。しかもその力は神の管理する領域にも影響するほどに。」

「だから私達はあなたをこのまま消滅させるより力を貸してほしいと思って目覚めるのを待ち侘びてたの。」


『力を貸す?』

....いや、それはどうかな。

多少特異体質な部分があったとて、

普通に考えてその辺の石ころが、たまたまダイヤくらい硬度がありましたってなっても神様の役に立てるとは到底思えないのだけど。


俯き思案していると膝の上に置いた春子の手に創造の神の手が重ねられる。

「さっきも言ったけれど、あなたには私達が管理する世界のひとつに降りて欲しいの。」


『あ〜...。因みに私はその世界に降りて何をすれば?』

(大した事出来ないと思うんだけどな〜。)

でも一応話だけでも聞くか。と思って尋ねるとそれに精霊の神が答える。

「精霊と妖精の管理ですね。」


『精霊と妖精のかん、り...。それは未経験者には無理なのでは?』

地球には存在しなかった職種に春子が〝(それは専門家を必要とする仕事じゃないの?)〟と思って意見すると、精霊の神は軽い口調で返す。

「大丈夫です。送り出す前にある程度のことはお教えします。」


果たして。

神様の思う〝大丈夫〟と、人間の思う〝大丈夫〟は共通認識でいいのか...?

いや。神様を信じれなかったら他に信じれるモノなんて()の冴えない第六感だけか。

それにこのままでは消滅は確定しているわけで、結局道は一つかぁ...。

いずれにせよ腹を括るしかなさそうだ。



『私。その世界に行きます!』



瞬間、創造の神が満面の笑みを浮かべ〝パンッ!〟と一つ手を叩く。


「よかったわ!では、〝精霊の神〟新しい器の構築をお願いね!」


『え。精霊の神様が器をつくるんですか?』

何故か新しい器とは創造の神がつくると勝手に勘違いしていた春子が反射的に声を上げる。



「はい。貴方は精霊との親和性が高いので私が構築する器のほうが〝核〟との馴染みもいいでしょう。さらに精霊たちの管理をするのであればそのほうが都合も良いでしょうし。」

それにそう精霊の神が事も無げに告げると春子は確認の意味合いも兼ねて尋ねる。

『因みにそれは〝人間〟ですか?』


「ん〜。〝核〟は今の状態で器だけ構築しますから人間と言えなくもないですが〜...精霊ですね。」



『な、なるほど...?お任せします。』


そう言うと春子は二度目の腹を括った。


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