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呪いの魔女はわりと毎日忙しい  作者: 護郷いな
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輪廻の神。

「相変わらずヘンテコな魔法を使ってるわね〜。」


「..........。」

それに頭から水を滴らせびしょ濡れの春子はそこにいる人物を一瞥したあと無言のまま体に張り付いたシャツの端を掴んで絞る。


実は先程、球体の結界内に収まったまま山を転がり始めた春子はどんどんスピードを加速させ麓に流れている川に勢いよく着水するとその衝撃によって握ぎり締めていた手から祝福の核がこぼれ落ち、次の瞬間纏っていた結界が消えて川に落ちた。


そして精霊魔法で水を操り川から上がった春子は足元にできた水溜りを見て一つ溜め息を吐く。



「ちょっと!人の話聞いてるのッ!?」



しかしここで春子は敢えて無視していたその人物に向かって声を荒らげる。

「輪廻の神様ッ!!」



するとその勢いに少し怯んで〝「な、なによ。」〟と返す輪廻の神に春子は構わず詰め寄る。

「見て分かりませんか?私のこの格好。ずぶ濡れなの。これで話を聞けと?」


それに輪廻の神は春子の全身を見たあと一歩下がって距離を取る。

「...アンタ。何だか濡れているのを抜きにしても所々汚れていて汚いわね。」



「輪廻の神様...場所を変えましょう。」

目を据わらせた春子が普段の何倍も低い声で告げる。











自宅に戻った春子は輪廻の神を応接間に案内し菓子とお茶をそこのテーブルに置いたあと〝「適当に寛いでて下さい」〟と告げ風呂場に向かった。


そして軽く体を流したあと湯船に浸かった春子は思った以上に体が冷えていたようで〝「あ゛ぁ〜」〟と声を漏らす。



「あったまるわ〜」

〝『これで入浴剤なんてあったら最高なのに』〟

春子は浴槽の縁に両手足を掛けて目を瞑り独りごちる。




「...にしても。(とんだ客が来たもんだ。)」


輪廻の神はその見た目大変派手で、

()のベリーショートの髪は左右で色が違いピンクとグレーといった仕様になっている。

そして普段ビジュアル系バンドのライブに行くこともあるらしい輪廻の神は格好もそっち寄りで細身のパンツにシルバーのアクセサリーをジャラジャラ着けている。


そんな神と神域で初めて対面したときその色に見惚れ心が躍った...が、すぐに考えを改めた。


というのも輪廻の神は美しいモノに対するこだわりが強い神で、その日突如神域に現れたかと思うと

〝『小娘!アンタのせいでアタシの大事にしている死の神の美しい顔が見えなくなったじゃないのッ!!』〟

と凄い剣幕で怒られ小突かれた____________。



ここで春子は何やらドアの外が騒がしいのに気付いて瞑っていた目を開ける。


「_ _ _ _!_ _ _ _ _ _ _ _ _ッ!」


(はぁぁぁ〜。何で静かに待ってられないかな。)

春子は内心そう呟くとドアに向かって叫ぶ。


「今出ますよッッ!!」





頭にタオルを巻いて応接間に戻った春子は目を大きく見開き固まる。


「...輪廻の神様。コレはどういう事ですか?」


「あ〜。あんまり待たせるから寛げる空間にしたのよ。文句ある?」


「文句しかないですよ!何でッ!」

〝何でッ!家具が全て変わってるのぉぉぉぉぉ!!!!〟

春子は声にならず頭を抱える。

少しキズのあったローテーブルも色褪せたソファーもデザインが時代遅れのカーテンもペラペラの絨毯も無くなり。

今そこにある家具は何やら彫刻がなされた重厚感あるローテーブルに、何の素材か聞くのが怖いくらい手触りが良さそうな革張りのソファー、羽衣の如く薄く外の光を取り込みまくりのカーテンに、足元の絨毯はこんな毛をもつ動物がいるのか?と疑問が湧く程ふかふかしている。


「アタシを待たせるのが悪いのよ。古臭い物に囲まれてアタシが寛げるわけないじゃない?」

実に軽い口調でそこのフルーツを摘みながら輪廻の神が言うと春子はすかさず言い返す。


「だからって!勝手に模様替えしないでくださいよ!大体ここは他にも人が来るンです。こんな見た事も触った事もないような家具がここにあるのは困るンですよ。応接間はここだけなのに。(勝手にフルーツの盛り合わせまで用意して)」

〝『あ゛!何ですか!壁に穴を開けたんですか!?もぉどうしてこんなバカでかい肖像画をここに掛けるンですか〜!これじゃまるで私の推し神みたいじゃないですかッ!!!』〟

部屋の一角に走り寄った春子はその額縁に手をかけると髪を乾かすのもそっちのけで撤去を試みる。


しかしどういう訳か外れる様子のないソレに春子は輪廻の神を見て声を張り上げた。

「知りませんからね!外さないならこの肖像画に鼻毛を描きますからッ!」


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