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呪いの魔女はわりと毎日忙しい  作者: 護郷いな
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新しい照明のために

「バルハン公爵家、ヘッダー侯爵家と我が家は高位貴族というのもあって昔から家同士の付き合いがあるのだけれど、お兄様とマルセ様、ユーシス様は同い年だから彼等が学生の頃よく我が家にいらした際には私も幼い頃一緒に遊んでもらいましたわ。」


「そうなんですね〜。」

春子はそう気の抜けた返事をすると同時にチラリと向かいのソファーに掛けケーキを食べている人物を盗み見る...と、

その視線に気付いた女性が口を開く。


「ハルコ。どうかしましたの?」


(いや。〝どうかしたか〟とそれを聞きたいのは私の方で...。)

何故また今日も?と聞いていいのか。

そして〝今日も〟というのは前回の訪問から中一日しか経ってないからで。


実は今朝()が精霊の地から自宅に戻ると、そこで転移の扉がノックされているのに気付き急いで駆け寄り扉を開ければそこにマリエッタ様とネネさんがいたのだ。

それで慌てて応接間に通しそこでケーキとお茶を出すと

〝「こちらは()()()のケーキでしょ?コルトルマの街へ行ったの?」〟とマリエッタ様に聞かれ(ミルコ?あの店の名か?)と思った()は昨日の事を軽く話し、ケーキはバルハン様にもらった物だと告げればそれを聞いたマリエッタ様が〝『そう。ユーシス様がそんなお怪我を...でも助かったならよかったわ』〟と話はじめた。


「...マリー様。ご友人のお茶会に沢山お呼ばれしてるって言ってませんでしたっけ?」

春子がお嬢様って忙しいんだな。と思って聞いていた先日の話を持ち出して尋ねる。


するとマリエッタが〝「全てお断りしたのよ」〟と答えるとそのまま話を続ける。

「さっきハルコも言っていた魔物?どうやらまだ討伐されてないらしく、今朝お兄様から馬車での外出は避けるようにと話があったの。」


「だったら転移の扉で訪問すればいいのでは?」

〝『知った方のお宅なのでしょう?』〟

転移の扉で訪問しても失礼にはならないのでは?と春子が疑問に思って言うとマリエッタが首を横に振る。

 

「転移の扉を個人で所有している貴族は一部の者だけですの。」


「はぁ...そうなんですか。」

(つまり予定が無くなってここに来た。訪問理由は特にない。ってことでいいのか?)


「ところでハルコは今日何か予定がありましたの?」


(それ今聞く?)と思った春子だったが〝まぁいいか。〟と答える。

「予定というほどのものではないですが今日は空き瓶を探そうかと...。」


「あき、空き..瓶?そんな物をどうするの?」

〝空き瓶〟と言う言葉を人生ではじめて口にしたのかマリエッタが詰まりながら言うと春子は〝「ちょっと待ってて下さい」〟と告げ応接間から一度退室する。




そして再び応接間に戻った春子がスカートのポケットから収納魔法陣を出しそこから梅酒でも作れそうなサイズの瓶を取り出してテーブルの上にのせれば()()を見たマリエッタが目を輝かせる。


「まぁ!なあにコレ?キラキラしてるわ!」


そう実は今朝キッチンで床下収納があるのに気付くとそこで()()大瓶を発見し、精霊の地に行ったついでにイシクラゲ10匹と川の水を採取したのだ。

「コレ。発光しているのはイシクラゲという生物なんです。」

〝私の管理する精霊の地にある川が祝福されその水をこのイシクラゲが体内に取り込むと発光するようになるんです〟

と春子は微生物という言葉は省いて簡潔に説明する。


「で、こっちが瓶に細工をしたもの」

〝『私の寝室に置いていたので今取って来ました』〟

春子は収納魔法陣から元はジャムの瓶だった物を取り出して大瓶の横に並べて置く。


「まあまあまあ!凄く明るい!!」


「私はこれからこのイシクラゲを小分けにして水中でどれほど発光し続けるのか観察しようと思っているんです。

そして今この家の照明は一つを除いて全てオイルランプなので、ゆくゆくはこのイシクラゲの照明に変えようかと思ってて。」


「なら我が屋敷に空き瓶はあるのではないかしら。サイズはこれでいいの?」

マリエッタがジャムの空き瓶で出来た照明を手にして言うと、正直、丁度良さげな瓶がなくどうしようかと思っていた春子が〝「いいんですか!?」〟と聞き返す。


「勿論ですわ。〝ネネ〟」

「ハイ!お嬢様。」





そして〝「転移の扉をお借りできますか?」〟と言うネネに頷いた春子は()に貼る魔法陣にラージルード公爵家の座標を書き込み、我が家の転移の扉をネネが通るのに許可を出すサインをすると、ついでにマリエッタにもネネが公爵家の転移の扉を使用するのに許可サインをもらう。


「もし瓶が無くても私は大丈夫なので無理して用意しないで下さいね。」

と春子が言うとネネが〝「大丈夫ですよ」〟と笑って答える。

「このサイズの瓶でしたら厨房の者に言えば集められるので直ぐに戻ります。」




「転移の扉って公爵様の書斎にありましたよね。大丈夫なんですか?ネネさん一人で行かせて。」

ネネを送り出したあと扉の前で彼女の帰りを待つことにした春子が同じ理由でその場に残ったマリエッタに尋ねる。


「大丈夫ですわ。今日お兄様は外出する用事がおありだったので前もって扉を使用する許可はとってありますの。」






それから暫く一般的なイシクラゲの生息地の話や有名スイーツ店なんかの話をしていると再び扉が〝トントントン〟とノックされる。


「は〜い。お帰りなさ...い?」



そしてネネを迎えるため転移の扉を開けた春子だったが、

そのカートには沢山の瓶が並べられており、そこにネネが立っている事からこれらを押して来た事は推察された。

だが何故か今彼女の後ろには微笑みを浮かべたラージルード公爵までもが立っていた。


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