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呪いの魔女はわりと毎日忙しい  作者: 護郷いな
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バルハン医師

「マルセ!よかった。城にいたんだな。

部下に迎えに行かせたがもしかすると城から出ているかもと心配していたんだ。」


コルトルマの街中にいた春子とザンサ隊長の元に騎士が走って来るとバルハン医師の到着を知らせた。

それで再び医院に戻ると院長のと思われる椅子に長い足を組んで気怠気に頬杖をついたバルハン医師と目が合い、春子の横にいたザンサ隊長がそばまで行きそう話し掛けた。



「...ああ。俺が現地に向かう話も出たがその前に見習い含め、7と8の隊のヤツらが帰還したからな。そこで話も粗方聞いた。」

「そうだったか。ホント今回は____、」

ここでバルハン医師が椅子から立ち上がり、話を続けるザンサ隊長の肩に〝ポン〟と手を置いて告げる。

「それは後ででいい。〝呪いの〟患者を()()。」


それに春子はチラリと部屋の隅にいる神官と医者を見る。

先程瀕死の男を魔法陣に収納したのをこの二人も見ていたな。

(そこであった事をもう目の前の男に報告済みか。)


そう思うと春子はローブのポケットから収納魔法陣を出し手を突っ込む。そしてそこから瀕死の男を胸ぐらを掴んだ格好で引っ張り出し、そこのベッドに寝かせる。


「お、おい。」

「?」

その声掛けに春子はザンサ隊長を見上げると、目の合った隊長は困惑した様子で春子に問う。

「なぜ大の大人を片手で引っ張り出せる。」


「何故って。モノを取り出す際、その掴んだモノから手を離すまでは重さがないから。」

「収納ボックスとはそんなものだったか?」

「さぁ。違うと思うならそんなモノもあるという事なだけでしょう?」

そう返したあと、春子はバルハン医師の方を見て切り替える。

「では、今呪いで眠らせているので解呪しますよ。いいですね。」

すると春子の横に立ったバルハン医師がベッドに横たわる瀕死の男を見て口を開く。

「おい。〝呪いの〟お前は瘴気を祓えないのか。」


「ん?できますよ。(浄化の灰もってるし)」

と春子が軽い口調で返した瞬間、部屋にいるバルハン医師以外の者達が〝「え。だったら神官達でも治療ができたのでは」〟と騒つく。

しかし春子はそれを無視するとバルハン医師を見て告げる。

「呪いの魔女と聞いただけで過剰に反応する人らですよ。

私が浄化すると言ってそこでこの者等はどんな反応したでしょうね。

そして仮にそれを行い、もし何かあれば誰の責任になりますか?私に何のメリットもない。大体バル()ン医師が来れば助かるって言うからそれなら待ったほうがいいでしょう。」


言い終わると部屋には沈黙が流れ、見れば赤髪の男含め全員俯いていた。

するとここでバルハン医師が春子の頭を小突く。

「おい。誰がバル()ンだ。バル()ンだ。」

「あ?ああ。すみません。(バルハンね、バルハン。)」


「呪いの魔女殿すまなかった。」

急な謝罪に春子は振り返りそこにいるザンサ隊長を見る。

「別に謝罪はいりません。その人物をどう捉えるか、それは個人の自由ですから。」


そう言うと春子はベッドに向き直る。

「じゃあ解呪しますよ」

「〝呪いの〟」

(まだ何か!?)

春子は勢いよくバルハン医師の方を向く。


「お前が瘴気を祓え。俺は回復だけする。」

「え。」

「責任は俺がとる。」

「...それなら。」

何故だか知らないがバルハン医師がそう言うので、春子は〝まぁいいか〟とポケットから巾着を取り出す。


そして春子は瀕死の男に手を翳し呪いを解くと次に浄化の灰をパラリとかければ、その男の体全体から瘴気が〝ドワッ〝と溢れ、空中で飛散する。

それが済めばあとは〝どうぞ〟と春子はバルハン医師を見て頷く。

それにバルハン医師が白衣のポケットから何か紫の液が入った小瓶を出し瀕死の男の頭を抱えて飲ませると直ぐに変化がみられた。

瀕死の男の真っ青だった顔に若干赤みがさす。

それが分かるとバルハン医師は肩の傷口に手を当て回復魔法を施してゆく。


するとばっくり開いていた傷口がみるみる塞がっていくのが分かり春子は〝「おぉ!」〟と声を上げた。



「よし。これくらいでいいだろう。」

それからちょっとしてバルハン医師が手を離すと、そこにあった傷口は今は完全に塞がっていた。

「ザンサ。これは増血剤だ。ヤツが起きたら飲ませろ。」

そう言って〝ポイっ〟と投げられた小瓶をザンサ隊長が慌ててキャッチすると、次にバルハン医師が春子に視線を向けた。


「〝呪いの〟行くぞ。」


「え。」


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