何がなにやら
〝入る〟って物理的にだったのね。
つい今しがた
発光し浮遊する私を掴んだ死神が、そこのサイズ感おかしい藁人形にグイグイ、グイグイ押し込むようにしていれた。
ナニ。親の仇かなんかと勘違いしてんの?
そして現在。
4人の神様と藁人形になった私が円卓を囲んでいるという絵面。
ナンダコレ。
片やキラキラしたおべべ着てる神様。
片や動く度、乾燥した音がなる枯れた植物の私。
頭パイナップルの葉みたいに広がってるし。
器という物に入れられた私は、顔のパーツがないのは球体のときと同じだが粗方の感覚を得た。
そして声帯のミステリーは置いといて多少籠ってはいるものの喋れるようにもなった...が、ビジュアルの格差が酷かった。
「し、死の神。他に器はなかったのかしら?」
春子の隣に座る創造の神が時渡りの神を挟んで横にいる死の神に向かって戸惑った様子で尋ねる。
するとその死の神は時渡りの神との距離を詰め、男の耳元で何か囁く素振りを見せた。
(ふーん。死神はそうやって時渡りの神様を介して話をするのか?)
春子が何気なくその様子を見ているとそこで耳打ちをされた時渡りの神が口を開く。
「この藁人形は死の神のオリジナルで〝断罪の業火〟でしか焼けないそうだ。」
『へぇ〜そりゃすげ〜ですね。...って、なるとでも?
ねえ。なるとでもッッ!!』
次の瞬間春子が表情こそないものの頭の藁を倍に膨らませ言い返す。
そしてそれと同時で創造の神が〝「死の神ッ!」〟と声を張り上げた。
「ごめんなさいね。でも大丈夫よ〝仮〟の器だからね!お茶でも飲んで落ち着きましょう!ね!ね!」
『.....。』
何が大丈夫なのか甚だ疑問だが創造の神の焦り様にこれ以上気をつかわせてしまうのも悪いと思うと、春子は一旦そこにあるティーカップに手を伸ばした。
「それでは話を戻すわね。さっきあなたが言った天国というのは、此処での《天の門》のことだと思うの。」
一服し、場の空気が少し落ち着くと、そう話を切り出した創造の神が説明を続ける。
「人が生を終えると本来は器つまり生前の体を持った状態で《輪廻の門》に行きつき、そこで器が剥がされ人であった核だけが残るの。
そして核は《天の門》に行き《循環の泉》に落とされ次の生へと繋がってゆくのだけれど
あなたは輪廻の門に行きつく前に本来辿り着くことのできないこの神域にたどり着いた。」
するとここでまた死の神が時渡りの神に耳打ちをし、次にテーブル上に何かが載せられた。
『こ、これは私のでは?』
つい疑問形で尋ねたが春子はテーブルの上に置かれたそれが自身のキャリーケースに入れていた面だと確信していた。
そして時渡りの神が〝「そうだ」〟と肯定する。
「面はお前の持ち物の中にあったひとつで、微かに精霊の魔力が感じられる。と言っても、まぁもうほぼ空だが。
しかしこの神域に辿り着く要因になったのは面で間違いない。」
『んなバカな、コレはメイド イン アースですよ?』
地球で精霊?いや。確かにそんな部族はいるにはいるが..。
精霊のま、魔力って、それが原因で神域に来た?
魔力ってナニ。
だって、だって、コレは...南米の奥に住む部族の長からプレゼントされたもので...。
あれ?そういえば当時面を貰った時って...。
〝昔。死者を神のもとに送る儀式で使用していた面〟って言ってた...か?
(いやいやいやいや...。)
春子は頭で否定しながらも、そこに居る4人の神に視線を向ける。
死者(私)を神(創造•精霊•時渡り•死)のもとに送る(此処は神域)。
(嘘でしょ...。)
放心状態になっている春子を無視し今度は精霊の神が穏やかな口調で話す。
「貴方がいた地球では認識できない存在はいないとされていてもわりと肌で感じている方は多いのですよ。
神聖な場所・空気が澄んだ場所に行ったり見たりした時、何故か祈りたくなったりした事があるのでは?」
『.....。』
「他の世界と地球とでは精霊の働きや役割りに、共通する面と、大きく異なった面があります。気付く者はいても〝それ〟が精霊と認識されるか、付喪神と認識されるか、妖怪と認識されるか実に様々で、大変興味深い世界に成長したものですね。」
言い終わるとそこで自然な笑みを浮かべる精霊の神とは反対に春子は乾いた笑い声を漏らす。
てか、情報量多すぎない?
今サラッと他の世界も匂わせたよね。