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呪いの魔女はわりと毎日忙しい  作者: 護郷いな
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呪いを極める者

テルサ国からの知らせに各国が俄に騒がしくなった頃、

時を同じくして、神域では。



「お!このマフィンの中のジャム、酸味があって美味しい〜」


「それは〝ガガ〟の実でつくったジャムね。ノークシュア国のアルガ地方の名産品らしいわよ」

「ほ〜」

(コレを使ったケーキなら1ホール食べれるな、多分。〝アルガ地方〟ね、覚えとこ。)


今日春子はいつも通りソファーに腰掛け本を読んでいると、そこに創造の神が〝『お茶にしましょ〜』〟と自身の祭壇にあったのだろうと思われる菓子を持ってやって来たので御相伴に預かっていた。

そして再びガガジャムいりマフィンに手を伸ばしおかわりした春子はソファーに座り直すと自身の横に座る死の神に視線を移す。


「そう言えばなんだけど、死神が呪いの核を回収するのはさ、人間の核が世界に存在してはいけないものだから?」


コクリ。


「やっぱりそうなんだ。普通、人間がその世界で死を迎えて火葬されてもその場に核なんて残らないもんね。」


コクリ。


「そうね。まさか死後、輪廻の門で器が剥がされ核になるなんて生きてる人間は知ることのできない事だから、呪いの核を見ても魔獣や魔物が持つ魔石のようなものだと思っているはずよ」

〝『あら、このお茶美味しい。今年ヤーハンでは良い茶葉が収穫できたのね』〟

話の途中でお茶を口に含んだ創造の神がその茶葉の出来に目を輝かせる。


「そうですよね。私は一度、核になったから分かるけど。」


「呪いによって死を迎えた者の核は濁っていて輪廻に使えないから、そんな核どうでもいいと輪廻の神に無視され放置されるのよ。

でも私的には呪われていても核は核だし?世界に落としたままでは困るから死の神が回収してくれて助かるわ。」

 

(へぇ。そういう理由で死神が回収してるのか)

「死神。あんたホントいい神だね。」


〝....。〟


(え、無反応?)

何故か先程同様死の神に向かって話しかけたが固まったように反応がないので創造の神に向き直って質問する。

「あ〜っと..。ま、魔獣や魔物は輪廻転生するんですか?」


「それらは魔石はあるけど核自体持ってないから、呪い関係なく輪廻できない生き物ね」

〝『今回私の祭壇にコレらを捧げた者はセンスあるわね。このミルククリームがサンドされたクッキーも絶品だわ、春子も食べてみて』〟

そこで創造の神からクッキーを受け取った春子はそれを齧りながら思考を巡らす。


死後、輪廻の門を潜れるのが人間と動物と精霊(核をもつ生物)

で、輪廻できないのが、呪われた者と魔獣や魔物(呪われた核を持つ者と核なしの生物)...か。


(それって...。)

春子は先日時渡りの神にもらった収納のことを思い出す。

実は。何でも詰め込めると思っていた収納(ソレ)は詳しく聞けば色々条件があったのだ。


確か____。

『〝核をもつ生き物は、生きた状態では収納できない〟が

〝呪われた者と魔獣や魔物は生きたまま収納できる〟』

と言っていた。


という事は今の話から察するに生きている人間、動物、精霊が収納できないって事だよね。

あと、植物は土や根がついて生きてても核がないから収納できるって言ってたっけ。

まぁ。判断に困っても収納できるものは魔法陣に勝手に収納されるとも言ってたし難しく考えなくてもいっか。


そう春子の中で結論が出たタイミングで創造の神から声が掛かる。


「ところで、最近どんな勉強してるの?」


「私、少し前に呪いの魔女という存在になったんです。そして一度付いた称号は消せないそうなので。もうこうなったらとことん呪いを極めてやろうと思ってて」

春子は横に置いていたキャリーケースを開けその中から包みを取り出し創造の神に見せる。

「これ妖精の花を乾燥してつくった粉末なんですけど、祝福では鎮静と睡眠(安眠)の効果を得られるんです。なのでそれを呪いで使えるように改良してみたり、精霊魔法の風に呪いを合わせてみたり、死にはしないが死んだほうがマシと思うような呪いをつくったり、呪いがかかった魔道具の術を解除したり、破壊したりしてますね。」


「まぁ!なんか凄いわ。でも確かに、攻撃に向いてない精霊魔法でも、呪いは生き物の命を刈り取れるくらい強いものだからそれを極めれば春子の生存率も上がるわねッ!」

そう言って脇をしめ胸の前に両手でこぶしを作り〝ふんす〟と鼻息を荒くする創造の神に、春子も笑顔で応える。


「ですよね!せっかく神様達に新たな人生をもらったので頑張って長生きします!」






「ほっ。」

「ほっ。」

「ほっ。」

ログハウスに戻った春子はキャリーケースを持って、それを上下に、上げては下ろし、上げては下ろし、を繰り返す。

そして今度は部屋を物色し、そこで花が生けられた花瓶を手に取ると、そのままキャリーケースに雑に入れて蓋を閉じ、取手を握りしめ勢いよく回転を始めブンブン振り回した。







「おぉ〜!!」

暫く動き続けたあと春子は額から流れる汗を拭き、そこにキャリーケースを広げて思わず声を上げる。


あれだけ乱暴に扱ったにもかかわらず

キャリーケースに入れた花と花瓶は寝かせられた状態で、重力を無視し水も漏れずキレイなままそこにあった。


実は先程お茶会の席で()のキャリーケースに創造の神様が〝護〟を付与すると軽量化と防御、硬化、衝撃無効化、空間把握自動修正、あと何だったか...魔力を流すとその場に固定される。といったことができるようになった。と説明を受けた。



なので敢えて雑に扱ってみたのだが、見事!花も花瓶も勿論キャリーケースも無事だった。


...が、全てが無事かと言うとそういう訳でもなく自身の体力の無さが発覚した。


「いくら軽量化しても自分がコレじゃダメだよね。」


そう言うとヘロヘロになった春子はそのままベッドにダイブした。


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