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呪いの魔女はわりと毎日忙しい  作者: 護郷いな
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サラッと世界史。

「何だ、もう呪いの勉強はヤメたのか。」


ソファーに腰掛け読書中の春子の元にやって来た時渡りの神はそう言うと次には何の断りも無く隣に腰を下ろす。

それに春子は鬱陶し気な視線を送り少し距離を取るように横にズレた。

「...ヤメてないですよ。ただ他も勉強しないとだし、並行してやらないと」

(だから私は忙しいんだよ。)との思いを直接口にはせずとも時渡りの神が察してくれればと僅かに期待する。


「ふーん。()()は?」

しかしそんな思惑もこの目の前にいる神には通じないのを悟り春子は内心溜息をついた。


「これは...世界史。...というか時渡りの神様ヒマなの?」

(行間の読めないヤツめ。)と春子が口にするとすぐさま時渡りの神が〝「ンなわけあるか!誰よりも働いとるわッ!」〟と声を荒らげる。


「へぇ〜...。」

しかしそんな事を言われても実に疑わしい。と、春子はつい懐疑的な目を向け雑な返事をした。


するとそのシラけた反応に時渡りの神はさらにムキになって言葉を続ける。

「忘れたか、俺は時渡りの神!時間と空間を好きにできるんだッ!」


「あ〜。でしたね。(だから時間を進めたり、止めたり、戻したりして自身の仕事を片付けてるのか?)他の神様見ないのに時渡りの神様いつも来るからてっきり...。」

春子は最後言葉を濁す。


「精霊の神は外出中だ。そして俺はその間お前を見ておくよう頼まれたんだ。」


「それは...ありがとうございます。」

(そうだったんだ。なんか好き勝手してそうなのに案外面倒見の良い(ヤツ)なんだね。)


「創造の神様も外出中ですか?」

そういえばここ暫く姿を見てないな。と、なんの気なしに口にすると何故か時渡りの神は視線を彷徨わせた。

「...理由は知らんが、創造の神は精霊の神に山のように仕事を渡されて...アレでは当分の間、自由に動くのは無理だな。まったく何やったんだか。」


「へ、へぇ〜。」

瞬間、春子の脳裏に先日創造の神がお茶会の途中で逃げた光景がよぎり、聞くべきではなかったと話を変える。

「そ、そうだ。ちょっと質問いいですか?」

「何だ。」

時渡りの神は片眉を僅かに上げ春子に視線を向ける。


「私の行く世界には、過去、異世界から行った人がいたみたいなんですけど、この人達も神様が送った人達ですか?」

春子は読みかけの本のページをパラパラ捲り時渡りの神に尋ねる。


「.....そんなことあったか?」


「いや。あったんじゃ?書いてあるし」


「んん〜??......あ〜そういえばそんな事あったな。しかし俺らが送ったわけではない。」


「え?」


「ある世界で聖女召喚の儀が行われ、対象者はそのまま呼ばれた世界に行ったんだが実はその時それに巻き込まれた者がいて、その者は召喚の儀を行った世界とは別の世界、つまりお前が行く世界に飛ばされたんだ。」


「えぇ!!そんな!ち、因みに私と同じ地球からですか?」


「知らん。」


「えぇ〜(知らんて、なんと適当な...。)」

春子は若干抗議と呆れを含んだ声を漏らす。

しかしそれを無視し時渡りの神は告げる。

「それこそこれから行く世界なのだから気になるなら自分で調べればいい」

「...たしかに。」

でもそんな訳もわからず巻き込まれたという理由で異世界に飛ばされるなんて、簡単には言えないが想像を絶するものがあっただろう。



()の行く世界は東西南北と中央に大国がある。


そしてその大国五カ国が国連に加盟しており、国土の面積順に

一番は大きい国は

北の(ノークシュア国)

国民の半数以上が魔力を持ち一般魔法を使用する魔法国家。


そして次が

東の(ヤーハン国)

国民のおおよそ半数が魔力を持たない。

農業と医療が発展した国家。


そして

西の(ポロタム国)

ヤーハン国同様国民のおおよそ半数が魔力を持たない。

魔石産出国1位で魔導具の生産が盛んな国家。


そして

南の(パナイ国)

国民の8割がドワーフで製鉄所(造船所)を持つ技術国家。


そして

中央の(テルサ国)精霊の神の加護を持つ。

国民の9割が精霊魔法を使用する、精霊魔法国家。



あとは小国と部族が点在していて、それらは衝突や分断、統合と、新たに誕生しては滅亡を繰り返しているようだ。



「この東のヤーハン国と南のパナイ国が、過去異世界から来た人がいるっぽいんだよねぇ。ヤーハン国は詳しくは記載されてはいないけど、パナイ国は資料も残ってるみたいだし、いつかは行ってみたいな〜。」

春子は呟きながら開いているページの()()一行を指でなぞる。



(ここに載ってるこの名前って、日本人だと思うんだよね〜)



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