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呪いの魔女はわりと毎日忙しい  作者: 護郷いな
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3人でお茶会

死の神の着けている()は昔春子が海外に行った際購入した物で白地に豪華な装飾が施された()()()()()仮面(モノ)なのだが、今その口元にケーキが運ばれ次々と消えてゆくとそれを春子は不思議な気持ちで眺める。


「(神の七不思議)...か?」


「ん?どうかしたの?」


ボソッと漏れた呟きに創造の神が聞き返すと青空の下午後のお茶の時間を楽しんでいた春子は〝「いいえ何でも」〟と首を横に振りクッキーを齧る。


(ん!めっちゃバターが効いてて美味しい〜。)


精霊になってこの見た目は勿論の事、他にも変化があった。

その一つが味覚だ。


過去の()は甘味がそこまで好きではなかったのだが、今は毎食スイーツでも良いくらい好物になった。


とはいえこの体、本来食事をしなくても何ら問題ないらしい。


「というか創造の神様。このお菓子どうしたんです?」

今、目の前のテーブルに並んだケーキ、マカロン、クッキー、エクレア、あと名前のわからない幾つかの菓子は創造の神からの差し入れだった。

先日どこぞの神から話を聞いて神も外出することを知った春子は〝(創造の神様も何処か買い物にでも行って来たのだろうか?)〟と思って尋ねる。


「あ〜この菓子はね___。」

それに創造の神はそこの名前のわからない菓子を手に取るとその赤い包み紙を剥がしながら答える。

「世界各所にある私の祭壇から貰ってきたのよ。今日の仕事は全部片付いたし、やっぱり疲れた体には甘い物よね!」


(...仕事?神様の仕事って?いや。凡人の私が聞いたところで分かるはずないか。)

「貰ってきた?祭壇から?それは御供物ですよね?祭壇から消えたらその世界の人達ビックリしているのでは?」


春子が頭に(?)を浮かべて質問すると創造の神は何という事でもない風に両肩を軽く上げる。

「ま。空間を渡って直接持って来たらそういう時もあるけど、それをすると、たまに空間に影響が出る時もあるから今回はしてないの。

最近、召喚魔法を乱用して空間を歪めた世界があったから、今修復作業にあたってる時渡りの神がぷりぷりしてるでしょ。

だから今回は次元を映しただけ。持って来れる量は減ってしまうのだけれどね。」


「はぁ〜。(全っ然わからん)」

聞いたのは自分だが理解が追いつかない内容に春子が鈍い返事をすると、創造の神がそこの何も無い空間に向かって掴む素振りをし何かを差し出す。

「つまりコレ。」


「...鏡?」

創造の神が差し出した手には両面が鏡という少し不思議な手鏡が握られていた。


「そ。彼方の世界の供物をこの鏡に映すと彼方と此方に物がある様に映るでしょ。鏡の世界は此方に繋がっているから鏡に映った物を頂くの。だから彼方の世界の物は消えたりしないわ。」


「おぉ〜。(そういう事できちゃうんだ)」

春子はその不思議な手鏡をまじまじと見る。


「それはそうと、お勉強の方は順調?今までの世界とは異なるから覚える事も多くて大変でしょう?」


(!)

そこで春子は口の端についたクリームをナプキンで拭き取り少し姿勢を正して創造の神に向き直った。

「まぁ確かに。でも精霊の持つスペックか一度頭に入ると忘れないので、良い調子で習得できている気がします。最近古代語と現代語を習得して今は精霊魔法と一般魔法について勉強し始めたところです。」


「まぁ。凄いわ!あ。でも春子。あなた成長期の間は身体強化はヤメておいた方がいいわよ。」

「え。」

思わぬ指摘に驚いた声を上げた春子に対し創造の神は軽い口調で話を続ける。

「多少は大丈夫と思うけれど、成長期の体に身体強化をすると未発達な筋肉や骨が無理をしてしまうから体が悲鳴を上げると思うわ。

まぁ、命にはかかわらないと思うけど、筋肉痛とか?倒れたり?するくらいだと思うけど」


(え。くらい...って、筋肉痛も倒れるのも、どちらも等しくイヤなんだけど。)

「...気をつけます。因みに成長期って何歳くらいまででしょう。」


「ん〜。今のハルコは見た感じ13.14歳といったところよね。あと2.3年とか?いやでも精霊だとちょっとまた違うのかしら??

まぁその辺りは精霊の神に詳しく聞く方が...あら?そういえば精霊の神。見てないわね。」


「外出中らしいですよ。」


「そう。あの神もなかなか忙しいのね。」


すると、その直後今この場にいなかったはずの人物から声が掛けられた。


「ええ。そうなんですよ。ご存知ではありませんでしたか?」



瞬間。春子は何故かこの神域全体の温度が下がったような気がしたが〝(気のせいか?)〟と思うと椅子から立ち上がって()()にいる神を出迎える。


「精霊の神様おかえりなさい。」


「はい。今戻りました。

因みに創造の神には私が出かける事をお伝えしたはずですが?」


その発言で一気に場が凍りついたのを感じた春子はゆっくりと視線だけを動かし横で静かにティーカップを傾けている()を窺い見る。




「...勿論。知っていましたよ。」


(エッ!!?)

春子は無表情のまま堂々とそう言い放った創造の神に驚愕の目を向けると共に声を上げそうになった衝動をグッと飲みこむ。


「ほぅ。それは「あ!いけない、いけない。うっかりしていたわ。私今日の仕事がまだ残っていたのだった。ゆっくりしたかったのだけれど本当に残念。そんな訳で私はこの場を離れるけれど、皆さんはお茶会の続きを楽しんで。」


〝「ではッ!!」〟そして創造の神はそこで精霊の神が口を開きかけたがそれを抑え込む様に勢いよく話を続けると最後本気の神技を発揮しこの場から姿を消した。


「「.....。」」


(に、逃げよった...。)


どうやら精霊の神を前に一旦は冷静に乗り切るつもりだったようだが無理だったようだ。


春子はそんな創造の神に思うところは色々あったが、とりあえず精霊の神に席を勧め、若干気まずい空気が流れるなか3人のお茶会を再開したのだった。


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