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五ノ話・一
場は再度静まり返った。
わずかの間の後、修羅ノ介が相好を崩した。
みな、呆気にとられていた。
「今の話は、私が即興にて捻りだしたもの。
これも、御伽語りの一つにございまする。
お気に触りましたならば、どうかお許し下さりませ」
修羅ノ介は、柔らかな表情のまま、頭を下げた。
みなが、この者に何かを言いたげであった。
だが、誰も口を開かなかった。
「その蝋燭は何かの寿命じゃと、始めに言うたな」
ようやく言葉を発したのは、信長だった。
珍しく低い声だった。
「さようにございます」
修羅ノ介は、わずかに体をずらし、信長に正対して頭を下げた。
「何の寿命じゃ?言うてみい」
蝋燭は、さらに短くなっていた。
溶けた蝋が固まり、その上で炎が大きく揺らめいていた。
燃え尽きるまで長くはないであろうと思われた。
「どうしても言わねばなりませぬか」
修羅ノ介が顔を上げた。
この時となっても、恐れを抱いてはおらぬように見えた。
「そろそろ、よい頃合いであろう」
「気が進みませぬが」
修羅ノ介が、信長の顔を見据えたまま言った。
「その蝋燭が示しておるは、わしの寿命か」
信長が唐突に言った。




