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四ノ話・十九
修羅ノ介は顔を上げた。
「面白いことを言いおるわ。
それも御伽語りのうちか、あるいは、戯言か。
そうであるなら、許すまじことである」
信長は鋭い眼光を修羅ノ介に向けた。
「私が申しましたことを戯言で済ますためには、信長公に生き延びてもらわねばなりませぬ。
しかしながら、それは甚だ難きことかと存じます」
「何じゃと、きさま、ふざけておるなら、ただでは済まさぬぞ」
信長は激高して言ったが、修羅ノ介は冷ややかな表情のまま、首を横に振った。
「私は越後の上杉謙信公に会っております。
あれは、四年前のことでございました。
さらに、今年の春には、武田勝頼公にもお会いいたしております。
甲斐の国、天目山の麓、とある百姓が家でございましたか。
お二方の前で、私は御伽語りを披露したのでございます。今宵と同じように」
信長も蘭丸も、その他の者も、ただ、修羅ノ介を見、その話を聞いていた。
「お二人が亡くなられましたのは、私が御伽語りを終えた後、まもなくのことでございました」
「真か、それは」
問うた信長の声が震えていた。




