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四ノ話・十八
「きさま、無礼にも程があるわ」
蘭丸が怒鳴り声を上げ、立ち上がった。
「お館さまが情けをおかけになったをいいことに、調子に乗りおって」
蘭丸はまたもや太刀に手をかけていた。
「よさぬか、蘭丸」
信長は呆れたような顔で蘭丸を諫めると、今度は修羅ノ介に顔を向けた。
「そなた、面白き話をするではないか。
なかなかどうして、見事なものよ」
「身に余るお言葉に存じます」
修羅ノ介は深々と頭を下げた。
「何故、これまで人前に姿を見せなかったのじゃ。
皆の前で語りをしたなら、大金を稼げたであろう。
名前だけは知られておりながら、そなたを見た者も話を聞いた者もおらんとは、どういうことじゃ」
信長が問うた。
「実は、私の御伽語りを聞かれた方は、少なからず、おられるのでございます。ですが、私の姿を見た者も、聞いた者もおらぬというのは、無理からぬことかと存じます」
「ほう、どういうことじゃ」
信長は首を傾けた。
「なぜなら、私の御伽語りを聞いた者は、さほどの時を待たずして、死ぬ・・・・・・、からでございます」
その場が静まり返った。




