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四ノ話・十六
「そちの話はおもしろかったが、そもそも藤吉郎がわしを殺そうとする理由が見当たらぬ」
「人が人を殺す理由というものは、様々でございます。
むろん、先程の話は作り話にございます。
秀吉さまのお考えなど、私のような下々の者にわかるはずがござりませぬが」
不意に、信長は愉快そうに笑った。
「実を言うとな」
信長は何かを思いついたように話し始めた。
「藤吉郎の抜け目なさは、少しばかり気になっておった。よって、あの男を西国に向かわせ、毛利と戦わせておるのじゃ。あそこから京や安土までは距離がある。
これまでは、わしの威光がなければどうにもならなかったであろう。じゃが、今は力もあれば、慕う者も大勢おる。今後は、近くには置けぬかもしれぬな。かといって、あまり遠くに追いやって、そこで力を蓄えられても困るのじゃが」
信長がそこまで言うと、
「まだ話は終わりではございませぬ」
修羅ノ介が独り言のように言った。
「まだ続きがあるというか」
信長が問うた。
修羅ノ介はうなずいた。




