四ノ話・十三
「藤吉郎の身には何も起こらなかったのか?」
「今のところ祟りなどは一切起こっておりませぬ。
秀吉さまにも、官兵衛さまにも、その場に居た他の者たちにも」
「これから起きるやもしれぬな。
ところで、わしの名を語ったは、藤吉郎の思いつきか?
それとも、官兵衛が言わせたか?」
「わかりませぬ。仮に知っていたとしても、私の口から申し上げることは出来ませぬ。後が怖いゆえ」
修羅ノ介はそう言うと、頭を下げた。
「怖いじゃと?散々わしや藤吉郎をこき下ろしておいて、そのようなことを申すか。
この世に怖いものなぞ何一つ無いであろう」
「そんなことはございませぬ。
この世はあの世以上に恐ろしいところでございます」
修羅ノ介が言うと、信長は声を上げて笑った。
「しかし、藤吉郎がそのようなことを言ったとは、何とも可笑しきことを考えるものよ。
藤吉郎なら、あり得ぬ話ではないわ。抜け目のない奴じゃからのう。
この話、奴に聞かせてやりたいわ。どんな顔をするであろう」
信長は愉快そうに笑ったが、しばらくして真顔に戻った。
「しかし、合点の行かぬことがある。
わしが死んだところで、藤吉郎に何の利があるかということじゃ。
どう思う、蘭丸」
信長は蘭丸を見た。




