四ノ話・一
そのまま時が過ぎていった。
みなが黙り込んでいたが、ようやく信長が口を開いた。
「まだ話はあるか」
「もちろんでございます」
「どんな話が出来る?」
「されば、羽柴秀吉さまの話をいたしましたので、その話、いや・・・・・・、猿の話をいたそうと存じます」
「猿じゃと?」
みなが顔を見合わせた。
「はい、猿の話でございます」
修羅ノ介の前に置かれた蝋燭は、だいぶ溶けて短くなっていた。
その炎に照らされた修羅ノ介の顔の陰影は、さらにくっきりと浮かび上がっていた。
修羅ノ介は床に手を置くと、深々と頭を下げた。
その後、顔を上げ、ゆっくり話し始めた。
信長公の天下布武の計はますます進み、すべての国の大名がその元にひれ伏すこと、疑いなきことでございます。
ところで、未だ抗っております大名の一人に、安芸の毛利がおります。
この毛利と羽柴秀吉公の戦は、足かけ六年にも及んでおりました。
信長公の命により、西国平定を目指す秀吉公は、毛利が治める領国の手前、備中にある高松城を水攻めにより、落とそうとしていたのでございます。
「待て」
信長の声がはさまれた。
修羅ノ介を険しい目で見ていた。
「高松城を水攻めにしておること、何故に知っておる。
わしでさえ、藤吉郎が寄こした手紙で初めて知ったというに」
修羅ノ介は小さな笑みを浮かべた。
「私ども御伽師は、独自に情報の網を持っております。秀吉さまが何をなさっているかは、その者たちより伺い知っておるのでございます」
「まるで忍びじゃ。使えるやもしれぬな」
信長は興味を引かれた顔をしていた。




