二ノ話・三
「わしも聞いたことがあるぞ。何でも、家の守り神のようなものじゃとか」
信長の言葉に、修羅ノ介は「はい」とうなずいた。
駿河の今川義元といえば、「海道一の弓取り」とまで讃えられし武将でございます。
今は徳川家康と改めましたる、かつての松平信康公を長きに渡り人質にし、信長公のお父上である織田信秀公とも、幾度となく戦場で相まみえました。が、しかし、その多くは今川方の勝利に終わったのでございます。それほどの大名でございました。
ところで、皆さまも、座敷坊主の話をお聞きになったことがあるやもしれませぬ。
これは家屋に住み着くもので、土地土地により呼び名も異なりますが、概ね住み着いた家屋敷を栄えさせると云われております。
これが住み着いた屋敷は大いに栄えます。一方、もし立ち去ってしまうと、その家はすぐに没落するとも云われております。
お市さまも知っておられたのでございましょう。
座敷坊主に出会うてしもうた自分は、どうすればよいのか。
お市さまは思案なされました。しかし、どうすればよいか、いい考えは思いつきません。
一方、童子はお市さまを気にする様子も無く、立ち上がると、とぼとぼと歩いてその場を離れて行こうとしておりました。
この時、
「お待ちなさい」
お市さまは、とっさに童子の後ろ姿に声をかけたのでございます。




