二ノ話・二
「道中が長いから、休んどる」
童子はお市さまを見上げ、無邪気な声で答えました。
お市さまは見れば見るほど可愛らしい童子だとお思いになると同時に、童子の言葉も気にかかりました。
そこで、
「そなたのような幼い童子が、いずこから参り、いずこへ行こうとしておるのです?」
そう尋ねられました。
すると童子は、
「ずっと駿河に居たが、これから近江にいくつもりじゃ」
そう答えました。
童子の話しぶりは幼い見た目にもかかわらず、ずいぶんと仰々しいものでした。
ところで、駿河から近江といえば、間に遠江、三河、尾張、さらには美濃と、いくつもの国を跨ぐ、かなりの道のりでございます。
こんな小さな童子が一人で旅をしているとは、とても思えません。かといって、周りに同行しているような者もおりません。
うそぶいているのでございましょうか。
ともかくも、お市さまは奇妙なことを言うものだと思い、
「どうしてそんな長い旅をしているの?」
と優しい声で尋ねました。
すると童子はお市さまを見上げたまま、こう言ったのでございます。
「だって、駿河の今川はもう駄目だもの」
それを聞いたお市さまの顔が凍りつきました。
童子の言葉を聞いた時、あるものが思い浮かんだのでございます。
「座敷坊主じゃ・・・・・・」
顔が強張っただけではございません。
身体が震え、冷たい汗がその白い肌を流れ落ちていったのでございます。




