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一ノ話・十一

「お見苦しい姿を晒し、申し訳ございませぬ」


蘭丸は言うと元の場所に戻り、静かに座した。


「気にするでない。若い者は血がたぎるものじゃ。

ところで蘭丸」


「何でございましょう」


「この者に付き従い、ともに井戸があるという寺まで行け。

逃げられぬよう、しっかと見張るのじゃぞ」


蘭丸は「はっ」と答え、信長に頭を下げた。


「これで、逃げることは出来なくなったな。

その前に、明日の昼まで生き延びることが出来ようかのう」


蘭丸は頭を下げたまま、声を押し殺し笑った。

その後顔を上げ、修羅ノ介の様子を伺った。

蘭丸の含み笑いはすぐに止まった。

修羅ノ介は変わらず平然としたままだった。


「長くても明日までの命じゃというに、肝が据わっておるのう。

大したものじゃ」


信長の言葉に、修羅ノ介は首を横に振った。


「夜の間は御伽語りをし、明日は信長さまの寿命を確かめることが出来ればよいのでございましょう」


「御伽語りが退屈なら、そなたは死ぬことになるが」


「ありえませぬ」


「ほう。しかし、明日は地獄に行かねばならんぞ」


信長の言に、修羅ノ介はうなずいた。


「井戸を通って行くのじゃぞ」


修羅ノ介は、これにもうなずいた。


「蘭丸がそちに着いて行き、井戸に入るところを見届けるのじゃぞ」


修羅ノ介はまたもうなずいた。

信長はそれ以上、言うべき言葉を見つけられなかった。

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