一の話・八
「戯けたことを」
信長はすかさず言い放った。
「そちは本当に地獄になぞ行けると思うておるのか。
そして、この世に戻ってこれると」
「無論でございます」
修羅ノ介の言葉に、信長は怒りと呆れが混じったような顔をした。
「ここまでの大ぼらが吹けるなら、もはや格別の才とでもいえよう」
蘭丸は口には出さず、そんなことを思った。
「では、地獄にはいつ行くのじゃ。
わしは気が短い。待たせることは許さぬ。
地獄へ通ずる井戸を通り、わしの寿命がどれほどであるか見てくるのじゃ」
信長は修羅ノ介を追い詰めるように言った。
「七日の後では」
修羅ノ介の言に、
「ならぬ」
信長はすぐさま言った。
「三日の後では」
「それもならぬ」
信長は首を横に振り、修羅ノ介の言葉をはねつけた。
「こやつ、困り果て泣きつくに違いない」
蘭丸は口元を袖で隠し、小声で言った。
「では、明日ならば」
「よかろう。明日、地獄に行きわしの寿命を見てくるのじゃ。
嫌とは言わせぬぞ。そちが言うたのじゃからな。
出来なければ、即刻首を刎ねる」
信長は勝ち誇ったように言った。
「馬鹿な奴じゃ。これで明日殺されることが決したわ」
蘭丸は必死で笑いを堪えていた。
「では、私は明日までは間違いなく生き長らえることが出来るのでございますね」
修羅ノ介は顔を伏せたまま言った。




