一の話・五
「しかし、この者は、今宵この寺の中から死ぬ者が出るなどと抜かしたのです。それも、幾人も、と」
蘭丸が振り返り言った。
体を捻りながらも、その右手は腰に差した小太刀の柄にかけられていた。
「この御伽師は、自らが殺されぬかもしれぬという時に、わしを少しも恐れておらぬようじゃ。大したものではないか。
ところで、聞きたいのじゃが」
信長は修羅ノ介に顔を向けた。
「ここに居る者のうち何人かが死ぬ、と言ったな」
信長は確かめるように言うと、この場をぐるり見回した。
今しがた御伽師がした不吉な話と、信長の鋭い眼光が相乗し、家臣たちは震え上がった。
「私は御伽語りをしたまででございます」
「そのような答えでは納得するわけにはいかぬ」
信長は修羅ノ介の言葉を遮るように言った。
「境内に人の死肉を喰らう物の怪が多数蠢いている、私は見たままを申し上げたまでにございます」
修羅ノ介は上目遣いに信長を見た。
こう言ったなら満足できましょうか、とでもいわんばかりだった。
「ほう、では聞くが、この場の者はどうやって死ぬのじゃ」
「それを安易に話したなら、御伽語りの興が削がれましょう」
修羅ノ介は変わらぬ声で答えた。
「死ぬ者の中に、わしは含まれておるのか?」
信長は修羅ノ介の顔をのぞき込みながら言った。




