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第1話「あれ、誕生日ってこんなさえないもんなの?」

―――俺はその扉の向こうに、とんでもない事を願っちまった。











母さんが俺を嫌いだって事に気づいたのは幼稚園で年長の頃。

自分の家族関係が普通じゃない事を知ったのは小学2年の夏休み。

友情のなんと不確かなものかと笑ったのが中学1年の秋。

恋愛なんてもうしないと心に決めたのは中学3年の卒業式。

勉強する意味を考えたけどやっぱ意味なんてないという結論に至ったのが高1最初のテスト、その前日。

担任にお前このままじゃ留年すっぞ宣告されたのが高2の冬休みが終わった始業式。



俺の成長の過程に数々の記念日が並ぶ中、別にそれらの日はお赤飯が出たわけでも、カレンダーの日にちを示す数字が赤に変わるわけでもなかった。


まあ、普段俺に見向きもしない母さんが急に夕飯で赤飯出しても気味悪いだけだし、カレンダーに『勇人ゆうと失恋記念日』とか載ってもただはじかくだけだけどね。



でもこの日だけは載せてほしい。

毎年この記念日を真ん中にした一週間ぐらいは世界中で酒あびたりあびせたりのどんちゃん騒ぎしてもいいくらいのスペシャルな日だ。




今日、高3の夏、7月17日は俺の17の誕生日。




たんじょう‐び【誕生日】

生まれた当日。また、誕生の記念日。


普通なら、ハッピーバースデーの歌うたってもらったり、「おめでとう」の一言や二言聞かされるであろうこの日。

別に、自分で自分にハッピバースデートゥーミー♪と下手な歌うたった以外、特に祝われるでもなかったこの日。



わかってたんだ。

どうせ誰にも祝われないんだろうと思ってたんだ。

だってずっとこんな感じに生きてきたし?

誰かに祝ってもらった記憶なんてほとんどないし?

家族に祝ってもらう事が一番ありえなかったし?

でも、でもね。

俺ずっと楽しみにしてたんだ。

だって、




今日は17歳の誕生日じゃないか。




7月の17日の17歳の誕生日・・・、わかるだろう?

777って3つ7がそろってるんだ!!


・・・・・なーんてね。

もっと小さい頃はそりゃあ夢も見てたさ。

17歳の誕生日、僕は地球の救世主になるんだ!!・・ってね。

それに7月17日生まれなだけならまだしも、俺のケツには綺麗な北斗七星になったほくろが並んでる。

これじゃそう思いたくもなるよ。

ま、どうせ何も起きないだろうけど。

そんな夢を見る年はもうとっくの昔に過ぎたね。


とりあえず今年の誕生日も「おめでとう」とは言われなかったか。

嗚呼、ちょっと残念。ほろり。



誰とも目を合わさず、誰とも言葉を交わさず、「まあこんな日ぐらいは勉強なんかしないでおくか」とか思いながら一日中ゲーム三昧。

いつのまにか夜になり、人と向き合う事はなく、ずっとゲーム機の画面と向き合っていた俺は頭痛にやられて「ああくそ、誕生日なのに」と呟きながら自室へ。

「今日はもう寝るか」なんて思い、ベッドのある自室のドアノブを掴む俺。






しかし、






今日はこのまま誰に祝われるでもなく朝になるのだろうと諦めかけながらもこの扉を開けたらその向こうにとんでもないサプライズなプレゼントでも置いてあるんじゃないかなーとか握り締めた自室のドアノブの扉の向こうがちょうど見えてきてまだ何にも気づいてないけど1秒後には完全にこの状況の意味不明さを理解するであろう一瞬、扉のその向こうにほのかに期待した、いや、あってくれと願った7月17日のPM23時23分ジャスト・・・、俺は、最高のプレゼントをもらってしまった。





















「・・・・・・・」



































―――とりあえず閉めとくか。


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