<完全ネタバレ>本編全文の要約・あらすじ
29歳の大学事務、池端翠は同じ敷地内で大学助手を務める双子の妹、泉にお弁当を届けた帰り、かつての同級生で妹の同僚の男、黒田に告白される。
妹と一緒のアパートに帰宅して返事を決めあぐねていると、母親から「いつまでも妹と一緒じゃいられない」と結婚を急かす電話が来る。
通話が終わりふと写真が貼られたコルクボードを見ると、ほとんど双子二人で映った写真だらけだった。しかし翠の映っていない写真が一枚ある。それは妹が博士課程の頃、表彰されたときに彼女の同期と撮ったものだ。
翠は思い出す。妹が小学校の頃、習った円周率より長い桁数で円の面積を算出してしまったせいでテストで丸をもらえなくて、自分が代わりに自宅で丸をつけてあげたことを。そして、翠は認識してしまう。そのころと比較して、現在妹は真っ当に社会的評価を受けていて、自分の役割はもう終わっているどころか寧ろ足手まといであることを。
こうして妹から離れるため翠は黒田の告白を受けることを決心した。
しかしいざ彼とデートをしてみても全く気が乗らない。それどころか妹に強く依存している自分を自覚する。
後日再びデートに翠は出向く。そこはかつて卒業研究の為に通い詰めていた校舎だった。そこで黒田に抱き締められて思わず妹に助けを求めてしまう。すると即座にスタンガンを持った妹が黒田を倒した。安心もつかの間、翠のことも手にかける。
翠は薄れゆく意識の中で、小学生の頃妹に口付けられそうになったこと、それを恐ろしい顔つきで母に見咎められたことを思い出した。
一方で妹は、狂おしいほど大好きな姉との思い出と自分の愛情を否定する社会への憎悪を述懐しながら、機材を弄り、自分を被検体にしてまで研究した技術で、自分が口づけた時のことを思い出すように姉に処置を施した。翠は信頼してた妹の暴挙のため混乱に陥ったが、妹は笑顔でなだめすかすだけだった。
実は妹の暴挙と今までのキャリア選択は、トラウマの下に沈められた翠から自分への恋愛感情を掘り起こすために行った行動だった。
「ペーパーテスト上の都合で、無限の桁数を誇る円周率が3桁に押し込められてしまう様に、自分の恋愛感情を社会の都合で消されたくない」
その信念の正しさを信じて疑わない妹は一連の作業を終わると満足感の中眠りに落ちた。
翠は目を覚ますと今までとは違う感情を妹に抱いていることを自覚して困惑しながらも、自分の中に生まれつつある高揚感を受け止める。妹は覚醒した翠の言動にドギマギしながら、姉への深い愛情を改めて認識し、幸福感に包まれた。




