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魔女という名の妻たち  作者: バール・ムレチュニィ
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はじめに知っておいてほしいこと

魔女と結婚することになるなんて、十代の私が知ったら鼻で笑うだろう。いや、むしろ結婚できるだけましだと思うかもしれない。とにかく、私は魔女と結婚したのだ。私のぼんやりした日々は彼女に彩られている。これでいいのだ。

 

 ペニスにメッキ加工を施されるのは日常茶飯事だ。


 朝起きると、元気のない私のポコじろうが――もちろん元気な時もまだあるのだが――金属につるりと覆われて、ギラギラと、まるでキャプテン・ファズマのヘルメットみたいになっている。またか、と思う。だが気にすることはない。数日たって妻が飽きれば元に戻るのだから。



 私の妻は魔女なのだ。



 魔女に与える鉄槌、という本を知っているだろうか?15世紀に異端審問官によって書かれた、魔女についての論文、魔女狩りのガイドブックともいうべき本だ。この本には、魔女は男性の陰茎を盗み(妻は真鍮製のピカピカした金のハサミで切り取る)、鳥の巣に寝かせて麦を食わせ、生かしたまま飼育することができる、と書いてある。私の妻にも同じような能力があり、犠牲になっているのが私のかわいそうなポコじろうだというわけだ。


 この記述を読んで股間に寒気を覚えた男性諸兄もおられることと思う。しかし心配することはない。痛みは全くないから安心してほしい。私のポコじろうはメッキされたり、ハサミで切り取られたり、それ以外にも色々な――……目にあっているが、そこは腐っても魔女、といったところだろうか。妻の不思議な魔法の力か、はたまた暗示なのかはわからないが、痛みは全くない。気が付いたら加工されているのだ。


 あまりにも頻繁に切られるので、最近では私のペニス、もうご存じだろう――ポコじろうと名付けられた私のペニスは外れ癖がついてしまい、私が寝ているときにこっそり外出したり、我が家の猫と(この猫はどうやら妻の使い魔らしいのだが)リビングでゲームをしていることもある。


 一体なんだって魔女なんかと結婚したんだ、あんたはだまされている、悪い魔法にかけられているんだろう、と思われるかもしれない。しかし、私は妻を愛しているし、この生活が気に入っている。妻とはごく平凡に出会い、ごく平凡に付き合って、月並みに結婚した。

 

 世間一般の夫婦と何が違うのだろうか。妻はごく普通に仕事をし、家事をし(ほとんどしない期間もあるが。そもそも分担制なのだ)、くだらないことで泣いたり笑ったりすねたりする。イオンのポイントに貪欲だし、レジ袋のお金を出し渋ったりもする。


 もちろん魔女集会に出かけて留守にしたり、不思議な植物を買い込んで育てたりもするが、君たちのパートナーだってお友達と遊びに出かけてお茶をしたり、エアプランツを育てたりするだろう?それと一体なにが違うというのか。


 結婚とは他者同士がお互いに妥協しあい、互いの違いを認め合って、一緒に生きていこうとする行為だ。相手が魔女であろうと、魔女ではない誰かであろうと、お互いの意思を確認しあって我々は結婚することを選んだ。魔女だあろうとなかろうと同じだ。


 もう一度言っておくが私は妻を愛しているし、今の生活に幸福を感じている。それは疑いもないことだ。


 これは私と妻にまつわる思い出の物語だ。読者諸君、準備はよいだろうか?私に続け。

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