レジデンス東飛鳥エレベーター内の惨劇
【会社員男性35歳独身のケース】
新規プロジェクトの準備を、連日の残業で対応していた。今日も終電にギリギリ間に合う時間までの勤務となった。残業中に軽い食事を摂ったが、帰宅中に小腹が空いてしまったので、駅に併設されている小さなコンビニエンスストアに寄って、おにぎりとミネラルウォーターを買い、住まいであるマンションに辿り着いた。
最寄りの駅から15分の立地で、築10年25階建てのマンション「レジデンス東飛鳥」。最寄りの駅である東飛鳥駅西側には、住宅街が広がっており、そのほぼ中央にそそり立つマンションである。駅から近い立地だが、東飛鳥駅は急行の止まらない駅の為、マンションの家賃はそれほど高くなかった。周りに公園や商業施設も充実しているので、小さな子供を持つ比較的若い家族が多い印象だ。私は23階に住んでおり、そこからの眺めも気に入っていた。
マンションに入ると深夜のため、自分の足音が静かなエントランスホールに響き渡った。突き当りのエレベーターホールまで進みボタン押す。その時、不意にバニラのような甘い仄かな香りを鼻腔に感じた。振り返ると、いつの間にそこに居たのか、濃いグレーのスーツに身を包んだ若い女性が立っていた。年の頃は、25歳前後だろうか。色白の整った顔立ち、栗色で少しウェーブのかかった肩までの髪。ボタンを外したスーツの上着から覗く白いシャツは、内に秘めた大きな膨らみで、はち切れそうだ。タイトスカートも短めで、そこから長く伸びた足も美しい曲線美を湛えていた。このマンションに5年ほど住んでいるが、初めて会う人だった。こんな時間まで仕事だろうか。他人のことは言えないが。
エレベーターの扉が静かに開き、その女性と共に乗り込む。私は操作盤の前に立ち、23のボタンをを押した。
「何階ですか?」私が聞くと、その女性は、「15階をお願いします」小さな声で答えた。二人を乗せたエレベーターが滑らかに上昇していく。ところが、間もなく15階へ到達というタイミングで、エレベーターが突然止まった。
ガクガクガクガクッッッ!!!!「きゃぁっ!!」思わず女性が悲鳴を上げた。私も急停止の衝撃で、手に持っていたコンビニ袋を床に落とし、中に入っていたおにぎりと、ミネラルウォーターの入ったペットボトルが、袋から飛び出し散乱してしまった。おにぎりを拾って袋に入れていると、彼女が、壁際まで転がってしまったペットボトルを拾ってくれているところだった。彼女がこちらに背を向けて膝を曲げてしゃがむと、タイトスカートが、パツパツの状態になり、形の良いヒップラインが強調されていた。微かに下着のラインも透けている。
ヒップラインに見とれていると、彼女がこちらに向き直り、私にペットボトルを渡してくれた。
「なにか?」「いや、拾って頂いてありがとうございます。突然止まってびっくりしましたね」私は彼女のお尻に見とれていたことを胡麻化した。
「緊急用のボタンがあった筈ですが」彼女の言う通り、操作盤の上方に緊急用のボタンが備え付けてあった。しかし、何度押しても反応がない。諦めて、スマートフォンで連絡を取ろうと試みるが、電波状態が圏外になっていた。エレベーター内は、壁が金属製である事と密閉性が高い事で電波が届きにくいと、以前聞いたことがあった。彼女のスマートフォンも同じく圏外の表示になっていた。
「まいったな・・・」私は思わず独り言を呟いていた。連日の残業で、精神的にも肉体的にも疲弊している。しかも明日も朝から仕事だ。軽く食事を済ませて早めに睡眠をとらなければいけない状況だけに少し焦った。だが、綺麗な女性と一緒という状況だけが、唯一の救いだった。気持ちを切り替えよう。こういう時は焦っても無駄だ。少し待っていれば、エレベーターが普通に動き出すかもしれない。私は壁にもたれて、目を瞑った。
「あの、すみません・・・」不意に彼女に声を掛けられた。
「お願いがあるんですけど」「なんでしょう?」よく見ると彼女の様子がおかしい。呼吸が荒く、小刻みに体を震わせている。
「どうしました?体調が悪いんですか?」
「実は私、閉所恐怖症なんです。エレベーターも数分なら平気なんですが、・・・少し呼吸が苦しくなってきました」心細そうな上目使いで助けを求めてくる彼女。
「お願いとは?」
「あの、ハグさせてもらっていいですか?」思わぬお願いに私は驚いた。「ハグ?」
「人の温もりを感じると少し落ち着くんです。駄目ですか?」私は思った。駄目な訳がない。今日はラッキーデーだ。
「それで落ち着くならどうぞ」
「ありがとうございます。それじゃあ、お言葉に甘えて・・・」そう言って彼女は、私の体に抱きついてきた。見下ろすと、安心した彼女の顔と、シャツの胸元から柔らかそうな谷間が見えた。彼女の柔らかい肢体とバニラのような甘い香りに包まれ、脳みそがとろけそうになる。
「これで落ち着くんですか?」
「ありがとうございます。だんだん落ち着いてきました」
「それなら良かった」良かったのは私の方も、だが。
彼女にハグされてから数分経った頃、また彼女の様子が変わってきた。さっきまで落ち着いた様子だったのだが、息が荒くなっているのが分かる。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
「大丈夫ですか?」すると、彼女が上目遣いで、「・・・キ、キスしてもいいですか?」と懇願してきた。目は虚ろで、顔は紅潮していた。私が答えに迷っていると、いきなり彼女がキスをしてきた。しかも舌を入れて、私の舌と絡め合うようにグリグリと動かしてくる。しばらくお互いの舌を絡ませた後、彼女がいったん離れた。ねっとりとした濃厚な唾液が糸を引いた。
「こういうこと、シタかったんでしょ?」
「いや・・・」
「さっきしゃがんだ時、私のお尻見てたでしょ?」バレてたのか…。恥ずかしさと開き直りで、私は彼女を強く抱き寄せようとした。すると彼女が素早く後ろに下がって、それをかわした。
「待って。私が貴方を気持ちよくシテあげる。目をしっかりと瞑って。私が良いっていうまで目を開けないでね」私は言われるままに、目を瞑ってエレベーターの壁にもたれた。
すぐに彼女が、私の左側から両腕で抱きついてきた。耳元に彼女の甘くねっとりとした吐息がかかり、そのまま私の耳をベロベロと舐めてきた。耳たぶを甘噛みしながら耳の中に舌が侵入してくる。彼女の甘い吐息と舌のくちゅくちゅする音がミックスされると、まるで脳みそを優しくかき混ぜられているようだ。さっきからバニラの甘い香りもだんだん強くなっている気がする。目を瞑っているため、私の視覚以外の感覚が鋭くなっているようだ。更に彼女の手が、私の固くなったデリケートゾーンを刺激しだした。「うっ、あぁあ・・・」思わず声が出てしまう。
その時、不意に私は気が付いた。彼女は両腕で、私に抱きついている。じゃあ、デリケートゾーンを触っているのは何だ?私はゆっくりと目を開けてみた。彼女のタイトスカートの裾からヌラヌラと怪しく光る粘液をまとったタコの足のような触手が無数に出ている。その一本が私のデリケートゾーンをイジっていた。その他の触手も私の足首や足の付け根に纏わりついている。「うっ・・・」
グゥアヴォッッ!!!声を出そうとした瞬間、1本の触手が私の口内に勢い良く侵入してきた。同時に脚に絡みついた触手に引っ張られ、そのまま私は触手が垂れ流したであろう白濁した粘液まみれの床に勢い良く仰向きで倒された。そこへゆっくりと彼女が歩み寄り、私の顔を上から覗き込んだ。その顔は、さっきまでの彼女のものでは無く、瞳は獲物を捕らえるハンターのような鋭い眼光を宿したものに豹変していた。「うぅぅぅっ・・・」私は助けを呼ぶために大声を出そうとしたが、口内に侵入した触手のせいで思ったようにしゃべれない。すると、彼女が自分の唇の前に人差し指を一本立てて、こう言った。
「食事中は、お静かに・・・」