夢のはじまり
私は夜の仕事なので明るい時間に寝ていることもしばしば。自然と浅い睡眠になっていた。
時折見る夢に、姿が見える訳ではなくて暗い中、誰かの意識がずっと私を見つめている感覚がある。夢を見る度に段々と私の視界の外側から少しづつ、その誰かの意識が近づいてきていた。
何度目かの夢に、私の目の前にやっと現れた彼の姿は、大きな目をした年下の男性でずっと黙って私を見つめるだけで、寂しそうな悲しそうな表情にも見えた。そして少し片方の頬を上げニコッと笑ったあと、何かを言おうとして消えていった。
なんとなく直感的にこの人は悪い人ではなく私に対して興味や好意、関心を持ってくれている人だと思った。
日常の忙しさに追われ、夢を見たことすら忘れるのが普通の日々で、特にその頃の私は現実的に本当に疲れていた。
ただ彼の少し幼いような顔の印象はなんとなく脳裏に焼き付いていた。
ある日の夢。
私は夢の中でモノクロの砂利道をひたすら走っていて、道が悪く足がもつれてうまく走れずに、息を切らしながらそれでもなぜかがむしゃらに走っていると、ふと隣に人の気配を感じた。彼がいた。
「なんだろう?また来たの?w」
ぐらいな軽い感じであまり気にもせずにいたら、彼は私の手を掴み身振り手振りで夢の中の移動手段を教えてくれた。
片足をバネのように見立てて、地に足をつけた瞬間にジャンプをすると気持ちいい程に遠くに跳べる。
それに彼の腕を持って彼がジャンプするのと同時に引っ張り上げるとめちゃくちゃ遠くへ彼を跳ばせることが分かった。
「こんなことができるんだ!」
私は上手く移動できるようになったのが楽しくて面白くてついはしゃいでいたら、突然場面が明るい陽射しが差す草原のような場所になった。彼の可愛らしい笑顔をその時初めて見た。
が、「ありがとう」と声に出した瞬間、ハッと目が覚めてしまった…
言葉を口に出したことで夢が終わることを実感してすごく後悔した…
しかし、夢に浸ってばかりはいられない。あっさりと現実世界に戻らなければならなかった。
それから彼との様々な冒険やラブストーリーを一緒に経験することになった始まりの日になった。