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違う場所で同じ月を見ている  作者: 佐藤琉奈
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香那の妊娠

ものすごい暑さを感じていると早く夏が終わればいいのにと思うが、よく考えてみると1年のうちに夏の期間なんて少ないものだ。あっとゆう間に過ぎていく。

栗や秋刀魚が美味しくなっていく頃、久しぶりに香那から連絡が来た。「赤ちゃんができた!」

驚きと喜び、安堵と幸せを感じた。香那は不妊治療に行こうか悩んでいたからだ。自分のことのように嬉しい、よかった。

義理の両親が大喜びだそう。来年の夏前には新しい命が産まれる。

香那に無理はしないように、美味しいものをたくさん食べるんだよ!とキツく(笑)言った。


この店LEVANTER(リベンター)も来月には1周年だ。1年は早い。オープン前のドタバタしてたあの時を、昨日の事のように思い出す。

特に盛大なイベントは考えていないけど、お客様に感謝の意味でワインの記念ボトルとか店名入の手土産とかを用意すようかと考えていた。


「沙也香さーん、久しぶり~」相変わらず健吾は変わらない。そのままカウンターに座った。

「いらっしゃい。あれ?今日はひとり?珍しい(笑)」

健吾がひとりで来るのは本当に久しぶりだ。たまに女の子を連れて来店してくれるんだけど、デートではなさそうな、毎回違う女の子と一緒に来る。

「そう言うことを…しょうがないでしょ、仕事なんだからさぁ」健吾は頬っぺたをプウっと膨らませた。

「ふふふ。何飲むの?」

「んーと、とりあえずビール、ハイネケンで。沙也香さんも乾杯しよう?」

「サンキュ。それじゃぁカンパーイ!」

健吾を見ているとなぜか夢の中の彼をチラッと思い出す。似ているわけではないけど、どことなく雰囲気か、年下のなんだか憎めない男みたいな感じが重なるからだろうか。


世間話や"B"の話、香那の妊娠など、昔からの友人のようにたくさん健吾と飲みながら話していた。そろそろ1周年かと思ってひとりで来たと言っていた。健吾は本当に良い奴だと思った。

「この人たちめっちゃいいよね。Departurez(ディパーチャーズ)だっけ?」

ちょうど画面にMVが流れていた。この曲はアジアンミュージックにEDMをミックスしたような、なんとなく脳内に残るようなフレーズがある。確かに男性にも人気が出るだろう。

MVもダンスを中心としていて個性的でなかなかいい。

私は特にDeparturez(ディパーチャーズ)の中で"(そう)"という子のダンスが好きだった。


「沙也香さんてさ、めちゃくちゃモテるのに、なんで未だに彼氏作らないの? もしかして忘れられない男がいるとか??」

健吾が真面目な顔をして聞いてきた。まさか衝撃的な出会いを待ってるなんて言えない。

「忘れられない男なんてマジでいないよ。んー、店のこととかで頭がいっぱいで恋愛どころじゃないのよ。」

「わかった!行き遅れたら俺が最終的に責任を持って沙也香さんをもらってやるから!」

「もらってやるからってどうゆうことよ〜!はいはいありがと(笑)」

「沙也香さんは知らないけど俺だってかなりモテるんだからなーそれをさ、笑い飛ばすなんてぇ」

内心「でしょうね。」と思った。健吾はモテる、母性本能がくすぐられるもの。これは内緒だけど(笑)

私のことを気にかけてくれているのも分かっていた。分からないフリをしているくらいがちょうどいい。

健吾とは弟みたいにじゃれ合ったりふざけたりする、1歩下がったり1歩踏み出したりしたら、この関係性が崩れそう。今くらいがいい。


「じゃそろそろ行くね。"B"に寄ってくんだけど一緒に行く?」と健吾はお会計を済ませながら言ってきた。

「んーまだやらなきゃならないこともあるし、また今度にするよ。今日は来てくれてありがとう。また仕事でも使ってね!!(笑)」

エアーパンチを私に向けて、健吾は笑ってLEVANTERを出た。

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